「……ビビってます?」
俺の膝は……大爆笑していた。
「び、ビビッてねぇよ!? 魔王だぞ! 魔王!?」
自覚ないけど。
だ、だがビビってないのは本当だ! 戦うこともなにも怖くない! どうせこいつらの嘘なんだろうからな!
でも……あれじゃん。
夜の学校怖いじゃん!
昨日の事もあってか、俺の脳に焼き付いたあの光景が若干トラウマになりつつある。
「……肩の力を抜いてください」
「で、でも……なんだかんだ言って、その……」
呆れるようにため息を吐く愛奈に向かって、俺は胸の内を明かした。
「俺は……誰かを倒さなきゃいけないんだろ?」
「えぇ。そうですが……」
「……それって、なんか……人間として、どうなんだろうな、って……」
俺の言葉に、今までどんな質問にも即答していた愛奈が、一瞬だけど言葉を失った。
だけど、すぐに、俺に向かって冷淡な言葉をかけてくる。
「これは世界を救う戦いです。あなたは無心になって戦ってくれて構わないのです……」
「無心ねぇ……」
「……私のこと、そんな感じに見てるんじゃないですか?」
と、今度は愛奈からの質問。そりゃぁ勿論、と言いかけた俺だったが、愛奈は顔を伏せて、なにかを言おうと口を開閉させていた。ん……ちょっと気まずくなってきた。
「……別に。お前は普通だと思うよ」
ただ思いついただけの言葉を口にした俺。
「――そう思いますか」
「あぁ、思う思う。お前も俺も、昼間の学園に通う一般生徒でしかないよ」
そう適当に口にした。
これで少しはまともなこと言ってくれると助かるんだがな、と俺は冗談交じりにそう思う。
「……あ、あり――」
「ん? あり?」
言いかけた愛奈の言葉に、俺は言葉を繰り返しながら聞き返す。と、
「――気分転換に、ちょっと話でもしますか?」
「お、おぉ? それはまぁ……助かる」
気分転換という名の話題転換をされた。まぁ特に気にしていたわけじゃないから、いいけど。それに、気分転換をしてもらって助かるのは事実だ。
べ、別に膝の笑いが止まらないわけじゃないんだからな!