言葉を失った愛奈が、うつ伏せに倒れこんだ俺の身体を揺する。
あぁ、くそ……!
こうやって語り手ができるってことは……俺まだ死んでねぇな、ちくしょう!
でも……痛ぇ……!!
「ぐぅ……」
「! ぅあ……」
なんだ、その泣きそうな顔は……
俺は首だけを動かして、愛奈の初めて見せた表情に苦笑を漏らす。そして、
「お前……俺の臣下だろ……」
俺の言葉に、なんとか頷いて見せた愛奈。
「なら……勝手な事言うな……俺は、魔王だぞ」
そんな気もないくせに、俺はそう言い切った。
こりゃぁもう、後から辞めたいです、なんて自分からは言えないな。
「いいかこれは命令だ……俺の臣下は、誰一人として死ぬんじゃない……いいな?」
「っ――了解、しました」
俺の言葉に、しっかりと頷いた愛奈は、きっ、と目を強く見開いた。
「……しぶといですね。もう一撃食らわせれば、黙ってくれるでしょうか?」
「おそらく。次の一撃で終わるでしょう」
俺達の会話を聞いた勇者たちが、そう勝手な結論をつけて再びレイピアを構える。
それを見た愛奈が、俺に向かっていつものこいつでは考えられないような、感情的な声を張った。
「あなたが先祖代々受け継いでいるモノ……」
「……なに?」
「心当たりはありませんか?」
いきなりなにを――
「早く!」
愛奈の叫びに、俺は動かないはずの身体を震わした。
「あ、あぁ……――あそこに、転がってる宝石、っていうかネックレスが、そうだ……」
「……あれが」
俺の視線の先には、勇者の近くの床に転がる、チェーンが中途半端に切れたネックレスが転がっており、愛奈もその視線を辿ってそれを見つけた。
――直後、愛奈が床を蹴ってそれに向かって飛び出した。