小説『気がついたその時から俺は魔王』
作者:VAN(作者のブログ)

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古ぼけた木の音たてながら、開いた会議室の扉。その扉の向こうには、会議室の割には、校長室のような椅子やソファが置いてあるややこしい部屋。

「……?」

その扉を開けた愛奈が、一瞬足を止めて、そうして何事もなかったかのように部屋に足を踏み入れた。まぁ、なんで愛奈が首かしげたのかわからんでもないが。

「尚人のやつはいないみたいだな」
「そのようですね」

俺はいつもここに通っているわけじゃないから、どれくらいの頻度であの生意気な奴がいるかわからない。けれど、愛奈の反応から察するに、いないときの方が珍しいようだ。
そういや、あいつはいつもどこでなにをしているかわからないやつだな。
昨日だって、俺達が必死に戦っている間、ずっとどこかで身を隠してたみたいだしな。
と、俺が神出鬼没なあの男について考えていると、
――ガチャ……

「おろ? なんだもう来てたのか」

噂をすれば影……本当にあるもんなんだな。
会議室の扉から姿を現したのは、噂の尚人。目を丸くして、さも意外そうな顔をしながら俺と愛奈を一瞥する。

「どこにいっていたのですか。今夜のことについて、話し合いをする予定ではなかったのですか?」
「あぁ。今、それについて調べてたところだぜ」

そう言って、部屋の中央にあるソファに腰を下ろした尚人。
愛奈は首を傾げながら、尚人の次の言葉を待った。

「魔王様が聞いた名前の生徒――麗華、って言ったっけ?」
「あ、あぁ。そうだけど……なんでお前、そのこと知ってるんだ?」

尚人の問いかけに、昨日の記憶を探りながら疑問を覚える俺。確かにあの時、尚人はいなかった。尚人が来たのは、愛奈が目覚めるよりも後のことだった。だから、勇者たちの会話を直接聞いていないはずなのだが……

「あぁ、見てたから。監視カメラで」
「監視、カメラ……?」
「ははは。魔王様の目は節穴ときたもんだな」

こいつ……本当に軽口だけは治らねぇんだな。
俺がもうそのことについては諦めようと、聞きたいことだけを聞くことにした。

「いいか? この学園にはご丁寧に監視カメラが学園中に設置されている。そんで、その監視カメラをハッキングして、魔王様達を監視していたわけ」
「なにしてたかと思えば……お前は高みの見物してたってわけか」
「いやーなかなか見応えあったよ?」

見せもんじゃねぇよ、と言ってやりたかったが、こいつがいてもなんか足手まといになりそうだもんな。見た目ひょろいし、相変わらず目は半開きだし。

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