小説『気がついたその時から俺は魔王』
作者:VAN(作者のブログ)

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「とにかく、その麗華って女子について、俺は今日一日調べまわってたわけだぁ。そのせいで遅れた。すまねぇな」
「……いえ。そういう事情なら、文句はありません」

無感情だが、どこか申し訳なさそうに視線を外しながら言った愛奈に、尚人は、相変わらずだなぁ、と苦笑を漏らす。

「それで、なんかわかったのか?」
「ん〜。なかなかの収穫があったよぉ」

そう言って、尚人は制服のポケットから何かを取り出し、テーブルにそれを置いた。
俺も、尚人の向かいのソファに腰を下ろして、それに目をやる。愛奈も、少し離れた位置からそれを確認。

「こいつが、昨日戦った勇者様だな」

テーブルに置かれたのは、ある一枚の写真。学園の生徒であることを証明する写真で、その写真に写る人物は、制服姿だった。

「こいつが……? いったいどういうやつなんだ?」

写真だけ見せられてもいまいちピンとこないので、尚人に説明を求める。
すると、俺のそんな疑問に、尚人が声のトーンをいつもより少し低くしながら、こう答えた。

「平陽学園、生徒会……って、言やぁわかる?」
「! 生徒、会……!?」
「あぁ。まさに、選ばれし者、って言葉がしっくりくる奴だよなぁ」

いつものおちゃらけた表情に、若干の焦りと冷や汗を浮かべながら、尚人は苦笑した。
俺は、もう一度写真の人物を見つめた。
そして、その人物が、見たことがあった人物がいることに気がつく。

「こいつ……」
「ん? お知り合い?」

ある一枚の写真を手に取った俺を見て、尚人がそう言いながら眉を動かす。

「確か……俺が初めてここに来た時に、道案内してもらったやつだ」
「え? 魔王様迷子になったの?」
「――――こいつだ。間違いない」

無視だ、無視。
なんだよぉ、と口を尖らせる尚人を極力無視するように決め込んだ俺。

「まぁ、いいけど。それにしても――」

そう言って、俺の手から写真を奪った尚人は、その写真の人物を見て、再び苦笑を漏らす。

「運命の悪戯っていうかなんていうか……会ったその日に戦ってたなんてな」
「……おい、もしかして――」

尚人の意味深げな発言に、俺は眉を顰めた。
そんな俺に向かって、尚人は、写真の人物を俺に見せつけながら口を開く。
長髪、気が強そうな瞳、品のある雰囲気。

「こいつが、生徒会副会長、成沢 麗華(なるさわ れいか)だ」

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