小説『気がついたその時から俺は魔王』
作者:VAN(作者のブログ)

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尚人より、衝撃の事実を突き付けられた俺。

「――それで?」
「ほっ?」

そんな俺は今、尚人、愛奈と共にどこかに向かって、ただひたすら歩き続けていた。

「いったいこれからどこに行こうってんだよ?」
「まぁまぁ。それはついてからのお楽しみじゃね?」
「お楽しみって……」

俺は辺りを見渡しながら自分が今どこを歩いているのか確認するが、いかんせん無駄に広いこの学園。ちょっと見知らぬところを歩いているだけで、簡単に迷子になってしまう。

「まったく、気の短い魔王様だねぇ。そぉんな事だから能力切れるのも早いんだよ」
「関係ねぇだろ、それとは」
「まったくの無関係とは思わないけどねぇ」
「?」

頭の上に疑問符を浮かべながら、俺は歩き続ける尚人の後を追う。
元より、こいつが俺に対してまともな答えを言ってくれるとは思っていなかったけどな。
こういう時は、生真面目な愛奈に聞かないとな。

「なぁ、あいつどこに向かってるんだ?」
「……研究室、ではないでしょうか?」
「研究、室……?」
「うぉい、愛奈ネタバレしちゃダメだろぉ〜」

そう言って前を進む尚人が口を尖らせ文句を言う。知りませんそんなの、と愛奈が構わず俺に向かって説明を始めた。

「研究室というのは、表向きには機械科学研究部として活動を行っている部の部室なのですが、その実態は実は――」
「――魔族選抜メンバー……って言ったところだ」

完璧なまでのドヤ顔で愛奈のセリフを先取った尚人。それが気に食わなかったのか、愛奈がムキになって詳細を口走る。

「おもに魔族の能力、武器、知能を研究しているメンバーで、実は――」
「実はこの学園に紛れ込ませた魔族達が生徒に化けて、俺達のような実戦部隊のサポートをしてくれているってわけだぁ」
「…………」

今度は振り向かずに台詞キャンセル。
愛奈のジト目の色が濃くなった。

「そして、私たちはもちろんのこと私たちの天敵である――」
「天敵である勇者たちの――ふごっ!?」

再び言葉を遮ろうとした尚人の後頭部目がけて、いきなり愛奈が手に持った鞄をぶん投げた。それでも足を止めなかった尚人は後頭部をおさえ、代わりに口を動かすことを止めた。
お前ら、俺の前で喧嘩するなよ……しかも俺抜きで。

「――私たちの天敵である、勇者の戦闘能力も分析してくれるのです。まさしく、戦闘の監視者としての能力に長けた人たちが集まる場所です」
「へ、へー」

長々と説明されたけど、結局ピンとこなかった。
なにより、目の前で喧嘩しながら説明されてちゃ集中できんがな。

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