なんだかんだで俺たちは、目的地である研究室とやらに到着した。研究室は学園の東の端に位置する理科棟……の裏に設置された小さな小屋だった。
「はぁい、ここが研究室」
「え……地味」
俺の語彙もなにもない一言に、そんなこといってやんな、と尚人が肩を竦めながら小屋の扉を叩く。
「尚人だ。入るぜ」
そう言って、返事を待たずに尚人は扉を開ける。外見からして、中はそんなに広くないだろ……やっぱり。扉を開けたその先には、古ぼけたテーブルといくつかのパイプ椅子。それに本棚に雑に置かれた本だけがある地味ぃな部屋だった。
もっとこう……SFとかに出てくる地下研究室みたいなの想像してたんだけどなー。
「って、誰もいないじゃないか」
そう。地味ぃな部屋の中はもぬけの殻。人っ子一人存在していなかった。
そんな部屋の中に、尚人と愛奈はなんの疑問も持たずに入っていく。
「なぁ、魔族選抜メンバーってのはどこにいるんだ?」
「ん? いやここにはいないよ」
「はぁ? じゃぁ、どこに――」
俺が煮えたぎらない疑問を投げかけようとした時だった。
『そろそろ来るころだと思ったよ』
「っ!?」
どこからともなく――いや、明らかに天井端から聞こえてきたそんな声に、俺は身構えながら声のした方向へと目を向ける。
そこには、粘土のような表面をした、紫色をした丸っこい、そしてコウモリのような羽をもった人形の姿が。
「おい、まさか……こいつが喋ったんじゃ――」
『君が魔王様かね?』
「――喋ったぁぁ!?」
どこぞのCMの子供みたいに発狂はしなかったものの、俺は心底驚いた。
だって、目の前の人形みたいなやつがいきなり……
そんな驚く俺に対して、尚人は呑気な声でその人形に語りかける。
「よぉ、ドクター。元気にやってる?」
『うむ……最近コーラ成分が足りてない……』
「ちゃぁんと今度奢るから。とりあえず、入れてくれない?」
『わかったわかった。ホレ、早く魔王様を案内してくれ』
へいへい、と返事をした尚人。俺の目の前で繰り広げられる人間と人形の会話というシュールな光景を見ていた俺――はさらに驚いた。
「うおっ!?」
部屋の端にあった本棚が横にスライドし、その本棚によって隠れていたものが姿を現した。
そこにあったのは、地下へと続く階段。
呆然とする俺を置き去りに、尚人と愛奈が何食わぬ顔でその階段を下りていく。俺もそれに続きながら、階段を下り、そしてある一枚の鉄扉の前にたどり着いた。
尚人がその扉を開けると――
「さ、ここが魔族選抜メンバーの研究室だぜぇ」
俺は再び度肝を抜かされた。
地下にあったもの。それは、SF映画やゲームなのでみる、マジで最先端をいくような研究室だった。
「ほ、本当に地下研究室だったか……」
世の中、期待を裏切らないこともあるんだなぁ、などと一人で感心していた俺。
そんな俺に向かって――
「キャァァァァ!! 本物の魔王様だぁぁぁっぁ!」
「へ――――うごっ!?」