小説『気がついたその時から俺は魔王』
作者:VAN(作者のブログ)

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「ふぁあ……」
「もうー、授業中ずっと寝てたのにまだ寝たりないの?」

呆れたように言う泉希に、俺は寝ぼけ眼で言いたいことを言う。いくら眠っても眠いのは眠いのだ、と。それを察した泉希はため息を吐きながら、鞄を持つ手とは逆の空いた手を使って俺の背中を軽く叩く。

「ホラ、もう放課後だよぉ」
「放課後……もうそんな時間か」
「怜君寝すぎだよ」
「眠り過ぎて悪いことはない」
「せめて時と場所を選んでね」

そう言った泉希の説教は幼いころから耳にタコができるほど聞かされている。俺が反論し続けるとすねるのは手に取るようにわかるから、仕方なく俺は机から立ち上がった。

「相澤さん」
「? ――あ、愛奈ちゃん」

と、そんなのらりくらりの俺達に声をかけてきたある一人の女子。愛奈、と呼ばれた少女は、俺たちのクラスメイトの一人――遠山 愛奈(トオヤマ アイナ)。綺麗な水色のツインテールにメガネと、クラスの中にも何人か隠れファンがいるらしい。俺は特に興味ないが。

「数学担当の先生が呼んでいました。提出物がなんとか、と……」
「あ! そうだ、ノート出さなきゃいけなかったんだ。教えてくれてありがとうね、愛奈ちゃん」

泉希の言葉に、構わない、と言わんばかりに無表情な顔を横に振る愛奈。

「怜君、そういうわけだから。先帰ってて!」

そう言って、バイバイ、と手を振って教室を出ていく泉希を見送りながら、俺はあくびをしながら帰り支度をしようとした。しようとして、突き刺さるような視線に気づいた。
視線をずらすと、愛奈が教室の出入り口から俺を見ている。

「――なんだ? 俺にもなんか用なのか?」
「…………なんでもありません」
「じゃぁ、なんで……」

俺が再度尋ねる前に、もう用はありません、と言わんばかりに愛奈は教室から出ていき俺の視界から消えていった。なんて自分勝手なやつ……、と愚痴を吐きながら俺は帰り支度を完了させ、鞄を手に学園を後にした。

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