そう吠えた俺は、再び床を蹴って麗華との距離を縮めた。
それを相手も読んでいたのか、レイピアを構えなおして、再び受けの姿勢になる。
だが、俺はなんとなくそれも読んでいた。
「こい!」
「――なっ!?」
直後、麗華の足元が再び変異する。今度は2つ、3つ、連続して床が飛び出してくる。
それをバックステップで回避して、俺から距離を取っていく麗華。
と、飛び出した床が遮る視界の中で、麗華がレイピアを引いているのがわかった。
「はぁっ!」
「同じことを!」
飛び出した床をも貫いて直進してくる衝撃波。俺はそれを再び右手で跳ね返す。
それは、直進してきた軌道を辿って再び反対側に吹き飛び――壁に激突した。
「ワンパターンですね。さすが魔王様」
「な――にっ!?」
その声は、俺の真横から。
いつの間にか、俺の真横まで移動してきた麗華が、レイピアを俺に向けて突き出してきた。
「くっ――!?」
思い切り体を反らして、その攻撃をやり過ごしたが、思い切り体勢を崩した。
それを見越した麗華が、突進に急ブレーキをかけて、その場で回転。
「っ――!」
「ぐおっ!?」
俺を薙ぎ払うように、回し蹴りを決めてきた。
見事にそれを受けた俺は、教室を転がりながら、なんとか体勢を立て直す。
「ちっ、くしょう……っ!」
「さぁ、これで終わりますか?」
この野郎……余裕取り戻しやがったな。
「はっ! てめぇが倒れるまで倒れねぇよ!!」
「……人のセリフを取らないでください」
「言われる奴の気持ちがわかったか!?」
馬鹿な会話を終わらせようと、俺と麗華は同時に駆けだした。
俺は、そこら辺に転がっている机を分解して、鉄パイプを作り上げる。
それを数本、空中に一定時間とどまるようにセットする。
まずは、一本――麗華に向けて鉄パイプが矢のように空中から放たれる。
「っ――!」
それを弾き返されるのはわかっていた。
俺は、構わず麗華との距離を縮めて、再び素手で勝負に出た。
振りぬいた右手が、しゃがんで攻撃をかわした麗華の髪をかすめる。
「不覚ですね」
「お互いな!」
俺は、振り抜いた右手に振り回されるように前に転がって麗華から一時的に距離を取った。と、俺と再び対峙した麗華が背後に控えている鉄パイプに、遅れながらも気づく。
「乱射いくぞ!」
俺がセットした時間差で、鉄パイプが数本、麗華に向かって放たれた。先ほどの行動前後から、麗華の位置はほとんど変わっていない。一回目のパイプ発射の時と同じように、パイプが麗華に向かって突撃する。
「っ――!」
だが、卓越した……いやもう常人を逸した反射神経で、麗華は振り向き様にすべてのパイプを弾き飛ばした。あの細身のレイピアで、全部。
「くそっ……!」
「ふふっ、策はつきましたか?」
「いや……まだだよっ!」
「っ――きゃっ!?」
俺がそう言った直後、麗華がバランスを崩して、その場で尻餅をつく。
麗華の足元が、クレーターのようにへこんだのだ。床を突き出すことができるなら、へこませることだってできるはずだ。案の定、俺の思惑通り、床はへこみ、麗華がバランスを崩すという絶好のチャンスが生まれる。
「さぁ、ラストだ!」
「え――?」