さて、翌日。
昨日の出来事が嘘のように綺麗になった教室で、いつも通りに午前中の授業を受け――受けてない。寝ている――ていた。
「ふぁ……」
「怜君、今日はまた一段と眠そうだねぇー」
なんだかんだで午前中の授業も終わり、さて昼飯でも食べるかと背伸びをした俺に、そんな声をかけられた。
「昨日、なにかあったの?」
えぇと、こいつは確か……あ、そうそう。
「泉希、いたのか」
「いたのか!? 朝もお話したよね!?」
「なんか20ページくらい会わなかった気分だ」
「何の単位なの、それ!?」
いや本当に久しぶりな感じだぜ。(作者談)
「でも……怜君、本当に疲れてるみたいだよ?」
「いや、そりゃぁ――」
勇者と2日連続戦ってたら、そりゃぁ疲れるよー。
なんて言ったら、本当に病んでると思われかねんぞ。
「ま、まぁ、俺は大丈夫だ。だから……」
「ねぇねぇ、愛奈ちゃん? 怜君、危ないことしてるわけじゃないよね?」
そうそう危ないことして――って、おい。
気がつくと、廊下側の最後列に座る愛奈の前まで移動していた泉希が、そう彼女に素っ頓狂なことを聞いていた。
お前は、この何気ない学園生活の中で、昨日のことなど知りませんよ状態の愛奈に何を聞いているんだよ!
一応、あいつも俺も普通の学生って設定なんだから!
「ねぇねぇ、愛奈ちゃん?」
「…………」
愛奈の顔を覗き込むようにして質問する泉希と、泉希の視線から逃げるようにして俺に視線だけで助けを求める愛奈。
なんだよ、これ……
「怜君―! 愛奈ちゃんなにも答えてくれないー!」
「……もう勝手にやってろ」
クラスの連中が、変な目でこちらに注目している。
俺は、そんな視線から逃げるように教室を後にした。