小説『気がついたその時から俺は魔王』
作者:VAN(作者のブログ)

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――ピンポーン……
沈黙を破るように、そんなインターホンの音が部屋に響く。
その場にいた俺を含める3人がその音に反応し、顔を見合わせる。

「誰だ?」
「天月さん、出てきてください」

まぁそうなるよな。
俺は玄関に向かい、扉のつけられた覗き穴から外の様子を伺う。そして、げんなりとする。

「どうしました?」
「めんどうなやつがきた……ちょっとその人質と一緒に奥の部屋で待っててくれ」

そう愛奈に指示を出しながら、手だけは扉にチェーンを繋げる作業をする。
そうして、部屋の奥に引っ込んだ愛奈と高峰を確認しながら、俺はため息を吐いてから扉を開けた。

「何の用だ?」
「いや、少し騒がしかったようだったからな。何をしている?」

俺が開けた扉の隙間から見える人物――中肉中背にサラサラな短髪頭の眼鏡男――はそう扉の隙間から俺の顔を覗きこむようにして訪ねてきた。
こいつは、クラスメイトの伊坂 浩太(いさか こうた)。学力は毎度毎度トップクラスで、ちょっとした優等生に見えなくもない。ちなみにそこそこ顔も整っている。
そんな伊坂はこの学生寮では俺の隣の部屋に住む隣人でもある。先ほどまで愛奈や高峰と騒いでいたのを、聞かれていたのだろうか?
だとすると、まずい……

「い、いや。俺が一人で騒いでただけだ。気にするな」
「クラスメイトとして、隣人として、それを見過ごすのもどうかと思うが……天月」
「なんだよ?」

改めるように、眼鏡の両淵を手で押さえ、指の隙間から俺を睨む伊坂。こいつの考察する時の癖でもあるこのポーズ。嫌な予感しかしない。

「隠さずともよい」
「なにを?」

俺が尋ね返すと、ふっ、と口の端を上げて一言。

「女の臭いがする」
「っ――!」

こいつ……キモイ!?
いや、わかっていた。こいつがこういうやつだということは。
成績優秀、容姿もそこそこ。一見優等生に見えなくもないこいつは……変態だ。

「強いて言うなら、クラスで嗅いだ事のある臭いだな。さらに正確に言えば、一番最後列の席の女性だ。ちなみにこの臭いは最近お前から微かに臭って――」

――バタン……

-50-
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