――ピンポーン……
沈黙を破るように、そんなインターホンの音が部屋に響く。
その場にいた俺を含める3人がその音に反応し、顔を見合わせる。
「誰だ?」
「天月さん、出てきてください」
まぁそうなるよな。
俺は玄関に向かい、扉のつけられた覗き穴から外の様子を伺う。そして、げんなりとする。
「どうしました?」
「めんどうなやつがきた……ちょっとその人質と一緒に奥の部屋で待っててくれ」
そう愛奈に指示を出しながら、手だけは扉にチェーンを繋げる作業をする。
そうして、部屋の奥に引っ込んだ愛奈と高峰を確認しながら、俺はため息を吐いてから扉を開けた。
「何の用だ?」
「いや、少し騒がしかったようだったからな。何をしている?」
俺が開けた扉の隙間から見える人物――中肉中背にサラサラな短髪頭の眼鏡男――はそう扉の隙間から俺の顔を覗きこむようにして訪ねてきた。
こいつは、クラスメイトの伊坂 浩太(いさか こうた)。学力は毎度毎度トップクラスで、ちょっとした優等生に見えなくもない。ちなみにそこそこ顔も整っている。
そんな伊坂はこの学生寮では俺の隣の部屋に住む隣人でもある。先ほどまで愛奈や高峰と騒いでいたのを、聞かれていたのだろうか?
だとすると、まずい……
「い、いや。俺が一人で騒いでただけだ。気にするな」
「クラスメイトとして、隣人として、それを見過ごすのもどうかと思うが……天月」
「なんだよ?」
改めるように、眼鏡の両淵を手で押さえ、指の隙間から俺を睨む伊坂。こいつの考察する時の癖でもあるこのポーズ。嫌な予感しかしない。
「隠さずともよい」
「なにを?」
俺が尋ね返すと、ふっ、と口の端を上げて一言。
「女の臭いがする」
「っ――!」
こいつ……キモイ!?
いや、わかっていた。こいつがこういうやつだということは。
成績優秀、容姿もそこそこ。一見優等生に見えなくもないこいつは……変態だ。
「強いて言うなら、クラスで嗅いだ事のある臭いだな。さらに正確に言えば、一番最後列の席の女性だ。ちなみにこの臭いは最近お前から微かに臭って――」
――バタン……