やばい、あいつ早くなんとかしないと。いや、あいつはなんともならん。
いるよな。能力は高くても性格が残念なやつ。
あいつは典型的なそれなんだよ。
なんで?
なんで俺も感じることのできない臭いでそこまでわかるの? てかクラスメイト全員の臭い把握してるのか、あいつは。
と、俺が閉めだしたはずの伊坂の悪口を胸の内で呟いていると。
――カチカチ……ガチャ。
「おい、まだ話の途中だぞ、天月!」
「うおっ!?」
いきなり俺の目の前で鍵が開錠され、扉が開いた。
チェーンを付けっぱなしだったので侵入こそ許さなかったものの、なんで開いた!?
「なにしやがったお前!?」
俺は全力で再び扉を閉めようとするが、伊坂が全力で扉の隙間に腕やら足やらを忍ばせて完全に閉じるのを防ぐ。
「ふっふっふっ。こんなこともあろうかと、ピッキングの道具と技術は一通り完璧に得とくしている! それにしても友人を締め出すとはひどいな、天月!」
「そんな危ない友人を持った覚えは俺にはないな! さっさと自分の部屋に戻れ!」
「何を言う! 隣の部屋でイチャコラされては何も手がつかないだろう!」
イチャコラなんてしてないっての!
俺は扉を閉める力を強め、みしみしと音を立てる伊坂の体を容赦なくいたぶる。
「誰もいないって言ってんだろうが……!」
「ふっ、俺の耳と鼻を誤魔化せると思うな……天月、貴様の行動など全てわかるぞ!」
「変態はお帰りください!!」
俺は全力で扉を閉めるが、伊坂が呻くだけで扉はしまってくれない。
数分そんな格闘をして、お互い息が切れ始めたころ。
「おい、うるせぇぞ!!」
そこに第三者の声が届く。
俺と伊坂はいったん、その戦闘をやめて声を発した人物へと目を向ける。
伊坂よりもずっと短い短髪で、俺達と同じぐらいの身長。スポーツ少年って言葉がしっくりくるそいつは確かに運動部に所属している。俺達の騒ぎにご立腹しているそいつの名は、荒川 竜也(あらかわ りゅうや)。伊坂同様、俺と同じクラスメイト兼隣人の仲。
そんな荒川は、俺達の姿を見て眉間に皺を寄せると、大きく腕を振り、ビシリ、と俺達に指を向けてきた。
「BLは余所でやれ!!」
「誰かBLだ! 誰が!」
「この場合は俺×天月か……」
なんの話してやがるこの変態。