小説『気がついたその時から俺は魔王』
作者:VAN(作者のブログ)

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伊坂も大概変態だが、この荒川も変態の一員である。可哀そうに、俺は変態二人に挟まれて生活してるのだ。
はぁ、ともはや日常と化してきたため息を吐いていると、一通り落ち着いた伊坂が割り込んできた荒川にこう告げる。

「時に荒川。お前の隣人は、たった今まで女子とイチャコラしていたぞ」
「――なぁにぃ!?」

すっごい形相で荒川が俺の事を睨んできた。キモイ、まじ。

「どぉゆうことだ天月ぃ!! 俺は隣でお前がイチャコラするのを許可した覚えはないぞ!」
「なんでお前の許可が必要なんだ……」
「未来永劫出す気はないがな!!」

なんやねん。そんな言葉が喉元まで出かかったよ。

「大体、何度も言うが俺はイチャコラなんてしていない」
「――と被疑者は言っているが? どうなんだ、伊坂?」

腕を組みながら目つきの悪い荒川はそう伊坂に尋ねる。
いや誰が被疑者だこの野郎。
しかし、俺の不満たらたらの表情を気にするでもなく、眼鏡を抑えながら伊坂は答える。

「女がいるのは間違いない。隣から話し声が聞こえた」
「――だそうだぞ、天月!!」
「っ……」

くそ……聞こえてたのか。まぁ、あそこまで騒いでしまったら聞こえてしまうのも仕方ない……けど、お前キモイよ、伊坂!?

「断片的にしか聞こえなかったが……お仕置き、という言葉は確かに聞こえた」
「っ――破廉恥……破廉恥だぞ、天月ぃ!!」
「うるさい」

ご近所迷惑だ。
ていうか、一番こいつらに聞かれてはいけないワードだったなそれは。
俺がどうしたものかと悩んでいるうちに、奮起しきった荒川が俺に詰め寄る。

「天月ぃ! 貴様のSっ気は気づいていたが、お仕置きまでしていたとは知らなんだ!!」
「いや、Sっ気も微妙なところだ……」

俺は本物のSを見たしな。俺の脳裏に仮面を手に不敵に笑う麗華の顔が浮かび上がる。
あんまり今は思い出したくない相手を思い出して複雑な気分になる俺をよそに、荒川がにんまりと悪戯っぽい笑みを浮かべてさらに詰め寄ってくる。

「というわけだ、天月!!」
「あ?」
「俺も混ぜろ!!」
「ぬおっ!?」

そう宣言したと思った瞬間、俺を押しのけて部屋の扉を開けようとしてきた荒川。その勢いはまさに怒涛のごとく。俺はなんとか荒川を体全体で制しながら、扉を守る。
不意打ちだったことを除いても、こいつ結構押しが強い! これが変態パワー!?

「いい考えだ荒川! 当然、俺も入っているんだろうな!」
「もちろんだぁ、同士!!」
「変なチーム作るんじゃない!!」

部屋の扉を開ける変態がさらに一人加わったところで、俺は限界を感じる。
さすがに二人まとめて抑えることはできない。魔王の能力を使えば一発なんだが……こんな一般人に使うわけにはいかない。

「「さぁ、開け! マイロード!!」」

わけのわからんことを叫び、扉に迫る二人。
まずい……と、思った瞬間であった。

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