俺がそう胸の内の靄を払った瞬間である。
――カラン……
ん?
俺達の耳に、乾いた金属音が届く。それはベランダから聞こえてきた音で、そちらに視線を向けると、俺の手の平に収まるぐらいの外装をアルミに覆われたボールが転がっているのが目に入る。
「なんだ?」
嫌がらせかなにかか、と俺がべランドの窓を開けてそれを拾い上げる。なんの変哲もないボールだな。
「なんですか、それ?」
「いや、わからん」
高峰の質問に生返事しながら、窓を閉めて、部屋にそれを持ち込む。と――
――カチッ
「っ――?」
何か、スイッチが入ったような音がした、と思った次の瞬間であった。
そのボールがいきなり目の前で破裂し、視界を覆い隠すように大量の煙が勢いよく噴出する。
「ぶはっ!?」
「きゃっ!?」
虚を突かれた俺は、驚きの声を上げてその場で身じろぐ。直後、体が唐突に重みを帯びる。
あっという間に、部屋も煙で充満していく。眩む視界は……どうやらそれだけが原因じゃないらしい。
「げほっ……! なんだ……これ――ごほっ!」
「こほっ! こほっ! こほっ……」
息が苦しい。最初に破裂した時に、思い切り吸い過ぎた……! まぶたが、重い。
側にいたはずの高峰の声も、徐々に小さくなっていく。
「く、そ……」
眠い……そう思った時にはもう俺の意識は遠のき始めていた。
なにせ、学園でも眠いと感じれば授業中であろうがなかろうがすぐに眠ってしまう俺だ……そう思い始めてから眠りにつくまでは、一番早いと自負しよう。