小説『家族を愛する男』
作者:()

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第七話 −強さとは自慢のためにある−



「ふんっ!」

「がっ!?」

「おらよっ!」

「ぐくっ!」

「テメェ等しつけぇんだよ!!!」

「ぐは!!!」



 しつこいしつこいしつこいしつこいしつこい!!!!!

 黒服どもの相手をしながらも、俺にはそんな事しか考えていなかった

 人の気持ちを考えようか!!? 今何時だと思うの!? 帰宅ラッシュの時刻だけどさ、サラリーマンさんたちに迷惑かけるの!?



「雑魚に用はないんだよ! 奴が直々に出てくるまで、俺は行かねぇからな」

「くっ……。お前の意見などどうでもいい。早く俺らと来るんだ」

「うるせぇ!!!! さっさと去れ!!! シッシッ」

「仕方ない。一旦下がるぞ」



 皆が同じように腕を抑えながら、そのまま闇に消えた

 たく…………変な能力を持つ奴がいたから、ビックリしたよ

 周りを見回し、さっきのを見られていないか確認する

 どうやらここは人通りが少ないらしいから、そうそう居ないらしいな



「たく……こんなことでいままでのがパーになる所だったぜ」

「そうだな。まさかいまだにこんな所で、獲物が見つかるなんて思ってなかったぜ」

「あははははは!!! ま、俺の実力でカバーしたような感じだからな」

「ははははは!!!! 今夜は酒が美味いだろうな」



 あの〜、さっきから異様な声が聞こえるんだけど

 すぐさま後ろを振り向き、ビルの屋上を見る

 そこには獲物を捕らえるような体制になりながらも、俺をただ逸らさず見ている獣

 いや………人だ



「あんた……いや、お決まりだから言った方がいいのか?」

「聞けよ若者。まぁ、オジサンはただのオジサンだ。よろしくなと」



 宙返りしながらも、綺麗に地面に着地した

 本当にオジサンだな………外見だけどな

 可笑しいとは思ったぜ、こいつ俺の死角にばっかり入っていたのかよ



「んで、俺に何の御用だ? 道案内なら、何処かのポリスメンに頼むんだな」

「そうだな〜。できれば案内してほしいんだよ〜」



 何だ、この人危なさそうな人じゃ……



「強い奴までな」ニヤ

「!?!?!?!?!!?!?」



 危ない人だったーーー!?!?!?!

 全身の毛が逆立ったような感じだよ!? なんだよこいつ!? ヤバい通り越してキモイは!



「すまんが、ここで本気を出したら少々上から怒られるから無理なんですよね〜」

「大丈夫だ若いの。俺が結界を張っといたから、当分は暴れても誰にも気づかれないぜ」

「僕あんま強くないですよ?」

「ならテメェのその引き締まった筋肉に聞くから」

「………………強い。あなたは俺よりも強いですね」

「あん?」



 ちくしょう、勝てるとは思ったが隙すらない

 『悟って』みたが、どこもないなんて………



「その強さ、他に役に立たせようとは思えないのか」

「はん!! 何ほざいてんだか。俺の強さは俺自身なんだよ。俺が求めて、こいつが叶えてくれる。それだけのことだ」

「…………獣か」

「そうさ!!!! 俺は血を求めてさまよう獣なんだよ!! さぁ、はやく殺し合おうぜ」

「目がマジの人って初めてみたな〜。あ………初めてではないな、よく考えたら」

「話は無用だぜ!!!」

『ビュン』



 鋭い拳が目の前に飛んできた

 俺は何ともない顔で横に避けて、拳を構える



「俺の最初を避けるなんて……。やはり、クソ面白いじゃねぇか!!!!! 総代の言った通りだぜ!!!!」

「はぁ〜……ホント、この街に来てからロクな事がねぇ。ま、そんなのは初めから知ってたけど」

「おらおらおらおら!!!!!!」

『ビュン! ビュン! ビュン! ビュン!』



 今度は拳の雨だな

 目をこらえて一発一発避けているが、どうも何か所か当たってしまうこの不憫さ



「ほぉ〜? こりゃあ、上等な得物じゃねぇか。若造、名前はなんだ」

「葛城 五道。ただの……………………人だ」

『ドドドドドドドドド!!!!!!!』

「なっ!?!?!?! がはっ!!!!!」



 名乗った瞬間に、先ほど放たれた拳の雨がまた出てきた

 だが、標的は俺ではなく相手のオジサンにだ

 たく、これするのにかなり体力使うわ動き遅くなるまで使えるのかわかんねぇんだよ

 オジサンはそのままふらつきながらも、ニヤリと笑う。見事だ……まるでM男みてぇ



「おいおいおいおいおいおい!!!!!! 面白い技もってんじゃねぇか!! 俺の拳がそのまんま『跳ね返った』ようだったぜ」

「『秘技・オウム返し』。自分の周りに薄い氣のオーラを出して、相手の攻撃をバネのような反動で返す。そのまんまの意味ですよ」

「なるほどなぁ。これだから今の世代は面白いんだよ!!!」

「オジサンのその構え……まさか、あの川神流なのか?」

「ほお、今どきの餓鬼がまさか川神流の構えがわかるなんて恐ろしいな。俺の名は釈迦堂 形部。昔川神院を破門されら身だ」

「どんだけ悪い事したんだよ!?」

「なに、俺の本能を従わせたままだ。さてと……そのオウムなんたらは、薄い氣を周りに張らしているんだろ。なら簡単だ……」



 右手を引き、氣の増幅を感じる。あの人から体中出ている氣は、そのまま右手に集まる

 禍々しい氣だな。氣は人の本性を語るというが、あれが本性とはいやはや………



「大人って怖いな」

「思い切り強いのを打てばいいんだよ!! 『川神流・無双正拳突き』!!!!」

『ドォォォォォォォォン!!!!!!』



 氣と氣がぶつかり合い、爆発が起こりだした

 周りにはほとんどの爆風と煙が残っている。その中に俺とオジサンの影が一つ

 一旦逃げた方がいいか? いや、それじゃあまた何れ見つかってしまう

 なら…………



「こんなんじゃくたばらねぇのは知っている! さぁ、早くヤリアオウゼ!!!」

「そうだな。だが…………これでお終いだよ」

「は?」

「『暴熱の拳』」



 右手の血流の速さを何倍にして、氣を溜める。右手は真っ赤になり、そこから煙が出る



「体を変えられるほどの氣があるなんてな。これには驚いたぜ」

「久しぶりだな……オリジナルの技を出すなんて」

「??」



 そのまま下段に構え、周りに風が荒ぶる

 目は相手を捕らえ、拳を力を溜め、脚は瞬時に近づく

 これぞ、俺が長年考えた最高傑作のひとつ



「一言いいますけどいいですか」

「なんだ? なに、体の心配はするな。すぐ川神院の天井を見るんだからな」

「死んだらごめんなさい」

『シュン……』

「な……………」 
































  『ドドォォォォォォォォォォオオオオオン!!!!!!!!!』

「がぁぁ!?!!?!?!?!?!?」



 下からの強烈なボディブロー

 そして付属としてついた、この『暴熱の拳』。こんなのを直で喰らったら、骨折だけではすまないだろうな



「ウオォォォォォォオオオ!!!!!」



 打ち飛ばした後に、何故かいっつも雄叫びが出てしまう。何でだろうと思うけど、別にいいやとも思う

 こんしんの一撃から、まるで獣のような雄叫び。俺はこうつけた

 『渾身餓王』



「さてと、すまんが川神院の人を呼んできてくれないか? 俺の正体は鉄心さんしか知らないから、めんどくさいけどこうするしかないんだよ」

「わぁったよ、俺。さてと……結構軽いな。行ってきます」

「おう」



 黒き影はオジサンを運びだし、そのまま夜に溶け込んだ

 さてと……俺もそろそろ寝るか

-7-
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