小説『猫語-ネコガタリ-』
作者:†綾†()

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■第十八話【ある風景】


前回、泉の急な発言により、俺は
伊坂家に泊まることになったのであった。
この家は、そう

…俺以外は全員「猫」なのである。
まぁ、彼らは「人間」なのだが「猫」でもある。…らしい。
世界もまだまだ知らないことがあったと言うことだな。

伊坂が案内してくれた今日一日泊まる部屋で、
俺はただ何となくそんなことを思っていた。

ベットにごろりと転がっては、また転がり、
それを何度も繰り返した。…要するに暇なわけだ。

すると、ドアがコンコン、となった。

「朽田君、そういえばご飯、食べてないわよね今から何か
 作りましょうか」
「え、いや悪いし、コンビニで何か買ってくるぞ」
「あー…でも今日の夕飯まだ余ってるの。食べちゃってくるかしら」
「え、いいのか?」
「ええ、…雅希もまだ食べてないだろうし、今用意するから待ってて」

伊坂はぱたぱたと階段を降りていった。
雅希もまだ食べてないのか。
ならば一緒にいただこう。


「…宿題でもするか」

ストンと、ベットから降り、なんと勉強机まであったので、
そこを借りることにした。
ノートをペラペラとめくり、教科書を広げる。
カチカチとシャーペンをならした。


「がちゃ」

ドアが開かれた。開いたのは、

「…ん?雅希か、どうしたんだよ」
「ん、いや…あれ、宿題してんの?なら後で俺にも教えてくれよ」
「…俺、教えてやれるほど賢くはないぞ」
「大丈夫だろ、去年の問題なんざすぐ解けるさ」

けらけらと雅希は笑った。そして思い出したように手をぽん、たたいた。

「あ、そうそうもうすぐ飯出来るってよ」
「そうか、コレが終わったら降りるよ」
「分かった」

そう言って雅希はドアを閉めた。
さてさて、宿題をやらねぇと…っと。





■10分後■
「…あれ、意外と早く終わったな…。」

ノートと教科書をパタンと閉じ、
部屋を出て、階段を降りた。降りると悠一さんがちょうど、部屋から出てきた。

「おや、羽乃くん今からご飯かい?」
「はい、ご飯まで有り難うございます」
「いやいや。あ…そうだ。私は少し外に出るから、寧君にも言っておいてくれるかな」
「分かりました」

悠一さんは外へ出かけた。
一体何処へ行くのだろうか。
そしてリビングに向かうと、テレビの音が聞こえてきた。

「お、羽乃ー早く食わねぇと冷めちまうぞー」

雅希はもうすでに食べていた。俺も早くイスに座る。

「ああ、ゴメン。…おお、おかずがいっぱいあるなーいただきます」

パン、と手をあわせておいしそうなご飯に手をつける。
もぐもぐと勢いよく食べる。

「…ああ、そうだ伊坂、悠一さんが少し外に出てくるって言ってたぞ」
「あら、そうだったの…わざわざ有り難う」
「いや別に、と言うかコレうまいな」
「そんなことないわ、少し味が薄いんじゃないかしら」

そんなことない、と食べているうちにあっという間に無くなってしまった。
雅希はそうとうお腹がすいていたのか、食べるのをやめることなく
ご飯を食べ続けている。

「…悠一さんと泉と伊坂は先に食べてたんだな、雅希は何か用事でもあったのか?」
「……んー、病院行ってたんだよ。んで帰んのがいつの間にか遅くなっちまったんだ」
「…病院?雅希、どっか悪いのか?」

すると、雅希は手を止めた。






「…俺じゃなくて、実散が入院してんだ」




…実散?



【続く】

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