第五話【少女】
…いやいやまさか、ありえない。
そんなことあっていいはずが…でも、あんな事聞くんだから
何か理由があるはず…。
あ…もしかしたら、あの鈴にも関係があるかもしれない…。
でも今の俺にはまったく何から
行動すればいいのか分かったものではなかった。
だから、とりあえず今日はあきらめることにする。
その時、ちょうど先に行ってしまったと
思っていた兎織が走って戻ってきた。
息を切らせていたので
収まるのをしばらく待った。
「な、なあさっきの子何だったんだ?
う、上から…落ちてきた、よな?」
「…ああ、多分どっかから足でも滑らせて落ちたんだろう」
「は〜、ビックリした…俺てっきり自殺かと思った」
兎織は力が抜けたように、大きな息をはいた。
「そんなワケないだろ、ほらもう行くぞ」
「おわ、ちょ、羽乃待てよっ」
「チリン」
『ふっ…態度を変えない、か。面白い奴だな』
ー食堂ー
ざわざわといつものように食堂がざわめいていた。
やはり、もうこの時間帯は混んでいて、あまり
席は余っていなかった。
その中のほんのわずかな隙間に、
ちょうど、少しあいていたのでそこに座る。
「………で、ほはえは、ふいほのほをたふへたってほほは」
「…何言ってるか全然わかんねーよ、って食いながら喋るんじゃありません」
ドスッと兎織の頭をチョップする
喋るか、食べるかどちらかにしてくれ。
「う゛、だから…お前はその子を無事助けたって事だろ?」
「まあ、そうなる…のか」
「もぐもぐ…へぇーすげえじゃんお前。かぁっこいー」
「別に、かっこよくはないだろ」
「なんだよ照れてんのか〜」
「五月蠅い」
【続く】