小説『カゲロウ日記(R-18)』
作者:()

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やってきました水の国、霧隠れの里。

「暗いな」

里の雰囲気、歩く人の顔、そのすべてに陰湿な暗さがへばりついている。
血霧の里っていうのは冗談じゃなさそうだな。
聞いた話では迫害、粛清なんでもありの里だって噂だが。
なんでも忍びになるための最終試験が生徒同士の殺し合いだっていうんだからどれだけ狂気に満ち溢れてるか分かるな。


まったくうちの里が壊滅したときに巻物全部パクッといてよかったぜ。
情報は最大の武器になるからな。こんな時代場所ならなおさらだ。


「にしても・・・」

色白美人はともかく笑ってる奴すらいねぇ・・・みな一様に固い顔をしてやがる。
薄汚れた路地には浮浪児らしきガキまでいやがるしな。

「とりあえずは情報収集か」

俺の血の滲むような努力で開発した「影薄めの術」はかなりの効力を発揮している。
とはいえ人の行き交い自体が少ないな。
この術が発動している状態ならいくら声をあげてもも気付かれることはない。
ただしこの術の効力は俺自信にしかきかないから何かに触れたりするとだめなんだが。


「口寄せの術!!」

戦闘はてんでだめな俺でも補助主体の術ならそれなりに使うことができる。
そして俺が口寄せ契約を結んでいるのは・・・

「ササ−ーー」

煙と共に現れた数匹の蜻蛉。無論戦闘には使えないが情報収集には適任だ。
蜻蛉なら気付かれてもどうってことないしな。

「散!」

蜻蛉が里の各地へ飛び散る。

最初は蝦蟇とか蛇とか鷹とかかっこいい奴と契約したかったんだけどね〜そう上手くはいかなくてね〜
うちの里に伝わる唯一の口寄せ・・・昆虫。
こんなん使ってるのは俺だけだろうな。
木の葉には虫を使う一族がいるそうだが、俺の蜻蛉は戦闘能力皆無だし。

はたくと死ぬぜ。


いっててへこむな。


「さて、俺も色白美人を探して情報収集だな」

見つかる気がしないけど。
表情も暗くちゃ美人も陰るからな。


「いねぇ・・・」

里を見てきたが結局最初の場所へもどってきていた。
素材こそ良好なものもいたがこんな場所で声かけるわけにはいかんしな。
術を解けば霧隠れの精鋭たちによって瞬殺されるかもしれん。警戒しすぎても損はないだろう。ここはそういう場所だ。



「ねぇ・・・」


ん?今誰かに声をかけられた気がしたが、気のせいだな。俺の「影薄めの術」が破られることなど・・・


「ねぇ・・・おじちゃん」

声は下から聞こえた。ろくに食べてもいないのだろうボサボサの髪にやせ細った腕と足。路地にいた浮浪児だ。

「・・・・」

俺は術を解いたわけではない。なぜこのガキは俺を認知できる?

「おじちゃんもボクと一緒の感じがするね。独りぼっちで寂しそう。」

そういう術だからな。この「影薄めの術」は元は単独潜入用だし

「っ!」

カゲロウは目を見開いた。垢にまみれた風貌だが雪のように透き通る白い肌。整った顔立ち。
間違いないこの子供は将来絶世の美女になる。ボクっ娘っても貴重だしな。

そして何よりこの国に来て初めて見た笑顔がこんなに輝くものだとは思わなかった。


「こいつは・・・欲しいな」


まだ幼いが今のうちから光源氏計画ってのも悪くないだろう。ちょっと青くてもつまみ食いぐらいなら・・・ゲフンゲフン。


「欲しい」という言葉が以外だったのか目をこちらからそらさない少女。

「お前・・・俺と一緒に来る気は無いか?」

一瞬、目を輝かせたがすぐ目を伏せてしまった。
俺は少女の足元にある水溜りが凍り付いているのを見た。
さきほど蜻蛉を飛ばして得た情報だが、この国では血継限界は迫害の対象になっているらしい。
氷・・・おそらく血継限界の一族の能力だろう。

確か水の国には氷を操れる雪一族というのが存在したはず。今となっては絶滅したと聞いていたが・・・その生き残りか
おそらく能力を隠しながら生きてきたか、それとも知らなかったがある日突然知ってしまったか

人間っていうのは自分達とは違うものを嫌うしな。それも特別な力を持ってれば。
だが国にとっては重要な武器の一つ。どちらにしろ血継限界は安穏とは程遠い能力だ。争いの種にも矛にもなってしまう。



だが・・・俺には関係ない。


俺にはそんな力などいらないしな。まぁ大きくなったらボディガードくらいしてもらいたいけど。


「お前が欲しい」

必要なのは血ではない。透き通る肌を持ったこの少女なのだ。美少女は何にも変えがたい宝石なのだからな!

少女は笑顔をみせたかと思うと急にうつむいて必死に2度、3度と首を振る。
ボサボサながらも美しさを失っていないその髪の間から赤くなった白い頬が見える。

「まぁ・・・悪くは無いな」


あ、忘れてた。


「一つ言っておくぞ」


少女は顔を上げた。その目は真っ赤にはれている。


「俺はおじちゃんでない。せめてお兄ちゃんと呼びなさい。」


少女は呆気にとられたようだがすぐに満面の笑みを浮かべ




「はいっ!!」








-白side-

もう必要とされないと思っていた

僕の中に流れるのは汚れた血。忌諱される血。

存在価値などないものと思っていた。

でも必要とされた

だから僕はこの人についていく

あれってプ、プロポーズってやつだよね

昔、母さんから聞いたことがある

一生愛する相手にいう言葉だって

この人が僕を一生愛してくれるなら、僕も一生この人に付き添おう

ずっと

ずっと






ずっと

-3-
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