小説『遊園地』
作者:aya(午後4時の月)

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 アパートに戻り仕事にとりかかろうとしてからも、僕はなんとなくあのクマのことを考え続けていた。
 特に何を見たというわけでもないのに、不思議と今日の出来事が僕の頭の中で、特別なものになりつつあるような気がした。
 直接話をしたわけでもないし、縫いぐるみの中の顔さえ見てもいないのに、僕はクマに対して言い表し難い親近感のようなものを抱いていたのだ。
 何故そんな気持ちが沸き起こってくるのか、その時は想像もつかなかった。
 ただ目の前に白紙の原稿用紙がそっと置かれているだけだった。


 次の日の午前中、僕はいつもの倍のスピードで仕事をし、早めの昼食をとった。そして午前十一半頃にはいつもの「散歩」に出掛けた。
 およそ「散歩」と呼ぶにはふさわしくないものになっていたと思う。
 なぜなら僕は「散歩」の様にゆっくりと景色を眺めながら歩く様なことはせず、ただ遊園地に行く事だけを目的として歩を運んでいたからである。
 そしてそれは全て昨日のクマに会うためだった。

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