小説『ソードアート・オンライン〜幻の両剣使い〜』
作者:定泰麒()

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【The Savior】 ?2 【雷神】

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過去――――――β版SAOにおいて


「アイズ!俺が後ろを守る。お前は、ボスを倒すことだけを考えろ!」
 
 俺は、アイズがボスを目の前にしているのに、パーティのことを気にして満足に戦えていないことに気づいた。

 「すみません……シュタイン。すぐ終わらせます。あとをお願いします」

 アイズは、それだけ言うと吹っ切れたのかこのクエストのボスである。≪ブラッディングウルフ≫に向けて走り出して剣術を繰り出す。

 流れるような剣先。目にも止まらない剣速。そして敵の攻撃をギリギリでかわす体さばき。

 前に一度、デュエルをしたことがあるが、1分もかからず負けた。その時のアイズは、恐ろしかった。仲間だと心底頼もしいが、敵になるとあり得ないくらい怖い。

 俺の使用武器であった。曲刀を振るい、アイズを斬ろうとした。だがそれが当たることはなかった。何度も攻撃を仕掛けるがすべての攻撃がアイズに避けられる。まるで、幽霊と戦っているようだった。

 そしてアイズの精確無比の攻撃を俺は、避ける間もなく食らってしまう。何度かの攻撃は、武器防御することができたが、それでも片方の手で数えられるくらいだ。

 だが今は、刀を使っている。その時よりも確実に実力が上がっている。もしかしたら……ちょっとは……



 おっと感傷に浸ってる暇ではない、今は、とりあえず俺たちの回りにいる。敵を倒さなければなと……

 そうして俺は、他のパーティメンバー達とともに≪リトルブラッディングウルフ≫というモンスターとの戦闘を再開した。

 この敵は、小さくHP自体もあまり多くはなく攻撃力もあまり高くはない。強攻撃さえあてられれば、確実に倒せるだろう。厄介なのは、そのスピードと数だ。

 スピードが早すぎて、中々ダメージを与えられない。それに数が20体もいる。

 俺たちも決して弱くはない、いやどちらかといえばβ版でもトップレベルだろう。だが、かなり手こずっている。

 奴らにも知識があるらしく、集団で襲ってくるため、なかなか手をだしにくい。

 攻撃できるのは、やつらが攻撃してきたときのほんの一瞬の間のみ。

 俺は、刀の柄を握り直し、襲撃に備える。

 パーティメンバーは、アイズを合わせ5人。だがアイズは、少し離れたところで1人で≪ブラッディングウルフ≫と戦っている。

 そして残りの4人を、取り囲む形で≪リトルブラッディングウルフ≫がいる。この場所が洞窟のため回りも暗い、その中で≪リトルブラッディングウルフ≫の目が妖しく光る。

 どこかで、水滴が落ちるような音がする……

 ポーン……ポーン………ポーン…………来た!

 俺は、刀の強攻撃のスキルである(一刀両断)を繰り出すために、刀を頭上へ振り上げる。

 敵が5体同時襲いかかってくる。

 俺は、真正面からきた敵の頭に(一刀両断)を放つ、どうやらあたったようだ、そいつの細い呻き声が聞こえた。だがそれどころではない。

 あと4体もいる

 敵の位置は、左右に一体ずつ、後ろに一体、右斜め前に一体という布陣だ。左右の敵が畳み掛けるように飛び込んでくる。

 俺は、前方に回転しながら避け、飛び込んできたところを刀を横に一閃、二体同時に倒した。

 残り2体。

 俺の位置がさっきと正反対になっており、敵の位置は、左斜め後ろと正面だ。

 今度は、別々に来た。俺の後ろにいた奴が飛び込んでくる。

 それを左に避け、右に飛び込んできたところを刀を振るう。前方にいた奴も口を開け牙をむき出して襲いかかってくる。

 刀の剣先をそいつに向け、飛び込んできたところを一突き。

 これで俺の方に来た敵を全滅させた。
 
 他のメンバーを見ると、まだあと2、3匹ずつ残っている。

 俺は、それを援護しに味方の元へ向かった。

 そして俺たちが≪リトルブラッディングウルフ≫を倒し終わった時に声が聞こえてきた。

 「お疲れ、みんな大丈夫ですか?にしても強くなりましたねシュタイン。また俺とデュエルしませんか」

 俺はその声の方を振り向いた。そこには、思った通り、俺たちよりも強敵でさらに普通に考えて俺たちよりも倒すまで時間がかかるはずなのに、何事もなかったかのように、こっちを見ているアイズがいた。

 「アイズ、お前いつから見てたんだよ」

 「シュタインが二体同時に飛び込んできた敵を横に一閃した時からです」

 俺は、改めてアイズに驚愕する。

 俺が、最初にアイズに声をかけてから、その間まで、5分もかかっていない。

 「アイズ、終わっていたなら手伝えよ」

 するとアイズは、笑いながら

 「すみません。みんながあまりにも強くなっていたので、つい」

 「おいおい、死んでしまう可能性だってあったんだぞ。俺は〈黒鉄宮〉何かに行きたくないからな」

 HPが0になると、〈黒鉄宮〉の〈蘇生者の間〉から再スタートすることになる。今まで何度死んで、そこにお世話になったかわからないが、目の前にいる男は、死んだことがないのだ。だからあの後味の悪さが分かっていたようだ。


 アイズは、さっきの笑いから苦笑いになる。

 「そうだね。すまなかった。次からは、ちゃんと援護する」

 と急に真面目になった気がした。

 「そうか、よろしくな」

 「ええ、もちろんです。で、それでどうします。俺とデュエルしませんか?」

 アイズは、言い終わった後まるで少年のように笑う

 俺はといえば、苦笑い

 「え…いや……えっと…また今度で…」

 アイズは笑いながら

 「そうですか。わかりました…ではまた今度やりましょう」






現在――――――正式版SAOにおいて


 「アイズさっさと行け、すぐそっちに行く」

 「すまない、シュタイン。すぐ終わらせる」

 あの時と全く一緒だ。変わったのは、アイズの言葉づかいだけだろう。あれから俺たちは、さらに仲良くなることができた。

 それで俺が、その言葉づかいをやめるように言ったのだ。最初は、渋ったが最後は了解した。

 そして今アイズは、≪ブラッディングウルフ≫の元へ

 俺は、≪リトルブラッディングウルフ≫の元へと向かった。


Sideアイズ

 久しぶりにこいつと戦う。β版でもこいつと戦った。≪ブラッディングウルフ≫それが今俺の目の前にいるモンスターの名前。

 スピードも速く、攻撃力も高い。それこそ一撃食らったらHPを3分の1を持って行かれる

 俺は、集中する。

 敵は、俺に向かって爪を振り下ろす。俺は、ギリギリで避ける。このおかげで敵にかなりの隙ができる。そこを徹底的に狙う。

 早く終わらせてシュタイン達を援護しにいかなければならない。

 β版と違って、ここで死んだら、現実でも死を迎える。それだけは避けなければならない。

 シュタインは、【The Savior】の?2だ。そして俺の友でもある。 そんな彼には、【雷神】という二つ名がついた。その由来は、いつも俺とともにいることが大きな理由にもなっているが、もちろんそれだけではない、彼の一振りの素早さが、まるで雷のようだったからだ。

 彼の刀から繰り出される一太刀目の素早さは、俺でさえ敵わない。彼の一太刀目は、俺でさえ避けることはできないだろう。それほどの人物だ

 ≪ブラッディングウルフ≫は、ひたすらに攻撃を仕掛けてくる。俺は、避けてカウンター、それの繰り返しであった。

 そして敵のHPが残り少なった時のことだった。

 「来たぞ。待たせたか!」

 俺は、戦闘中にも関わらず思わず笑ってしまった。
 
 「うん、そうだね。ちょっと待ったかな」

 シュタインも俺につられて笑っている。

 「それは、すまなかったな。あっそうだ。これが終わったらデュエルでもしないか?」

 俺は、不覚にもまた頬がほころぶ

 「そうだね。やろうか、どれほど強くなったか確かめてあげるよ」

 「ふっ、確かめるか…お前に勝ってやるよ」

 「俺に勝つか…なるほど。じゃあ本気を出さないとな」

 とシュタインは苦笑い
 
 「ほっ本気かよ。それは、駄目だろう」

 「おいおい、さっきの自信はどこに行ったんだ」

 まだまだ苦笑いを続けている。
 
 「そっそんなことよりも、まずはこいつをどうにかしよう」

 「見事に話題をすり替えたな。でも確かにそうだね。さっさと終わらせよう【雷神】」

 「おっおい。そのあだ名を呼ぶな。あまり好きじゃないんだだが、さっさと終わらせるに越したことはないな【風神】」

 そうして俺達は、軽く笑うと、≪ブラッディングウルフ≫にお互いの武器を向け、お互いの1番得意であろう攻撃をしかけた。




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