小説『ソードアート・オンライン〜幻の両剣使い〜』
作者:定泰麒()

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【The Savior】 青の副団長 【蒼氷】

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 私…レミナがアイズに出会ったのは、彼があまり有名でなかった時のことだった。彼は、まだ仲間もおらずソロでプレイしていた。

 私は、パーティを組んだりしながらも、この人となら、このパーティならといった人達と出会うことがなかった。なので、β版ではソロでやるしかないのかなと半ばあきらめていた。

 そして私が、特にこれといった理由もなく、2層目にある村をさまよっていた時のことだった。

 「すいません。もしよかったら一緒にクエスト行きませんか? 2人用のクエストで一人だと始まらないんですよね」

 そうこの声の主こそアイズだった。

 私としては、断る理由もなかったので受けることにした。普段なら、絶対に断るのだが、なぜか彼の話を受けてしまった。なぜだろうと今でも思う。でもまぁ後悔はしていない。どちらかというと、良かったとさえ思っている。

 きっとこの時に彼の仲間になっていなかったら、今私は、生き残っていないだろう。

 今では、【The Savior】のもう1人の副団長と対をなしているのか、青の副団長と呼ばれるまでに至っているが、私は、ソロで生き残れるだけの力は、無いと自分でも思っている。

 細剣使いで、アイズがいない場合のパーティでリーダーなんかになっているが、実力でも、リーダーとしてもまだ全然だと思う。

 そして、二つ名の【蒼氷】と呼ばれるのも訳がわからない。まだ二つ名で呼ばれる資格はないと思っている。

 その私が、なんでアイズの仲間になったのか、それは、彼に惹かれてしまったのだ。

 いや、決して好きという訳ではない。アイズの圧倒的な強さ。リーダーシップそして的確な指示。あと彼には、確実に秘密がある。そのことはみんな感じ取っているだろう。だがそれをわかっていてもみんなに信頼されてしまう人柄。

 彼に匹敵するのは、このSAOにおいて1人を除いていないだろう。KoB(血盟騎士団)ギルドリーダー。聖騎士ヒースクリフ。

 私は何度も、彼が層攻略時に盾と剣を振るう姿を見たが、あれも凄まじいとしか言えない。

 戦い方は、まるでアイズの正反対といっていいだろう。アイズは、全ての攻撃をギリギリで避け、カウンターという方法を好んで使っている。一方、ヒースクリフは、全ての攻撃を盾を使って確実にガードし、隙が出たところを斬るといった感じだ。

 この2人が、デュエルをしたらどっちが勝つのだろうか、これを考えた人は、私だけじゃないはずだ。

 あっもう1人いた。その名は、【黒の剣士】キリト。彼は、どちらかというとアイズの戦い方に似ている。

 彼がアイズと違うのは、ソロでやっているため選択しているスキルが違ったりしている。だがそれだけではないだろうか、プレイスタイルがそっくりだ。

 いつだったか、彼が層攻略に参加した時の話なのだが、私が、キリトについての評価をアイズに聞いたことがある。

 「きっと彼こそが、このSAOにおいて英雄なんだろうね。今ならまだ、俺の方が強いだろう。だけど、もし彼に守るべき人ができたならきっと俺よりも強くなる。それこそ、ヒースクリフよりもね」

 私は、彼がそう言うのならそうなのかもしれないと思うと同時に、彼のその言葉に違和感を感じた。なんというかそのことを知っていると言わんばかりの言い方だった。

 これこそが、彼の謎。喋っていて時々、違和感を感じることがあるのだ。

 それが、あっても気にはするが、それを含めてアイズなのだ。みんななぜか割り切っている。私もその中の1人なのだが…

 にしても、ほんとにアイズは一体何者なんだろう。彼と行った最初のクエストで私は、彼の強さに驚きつい聞いたことがある。

 「あなた、一体何者なの?その強さは尋常じゃないわよ」

 彼は、苦笑いしながらも答えてくれた。

 「それは…ただの科学者とでもいえば、いいんでしょうか」

  私は、自分の言ったことが、マナー違反だと気づきすぐさま謝った

「科学者……ごめんなさい。今のは、マナー違反だったわね」

 「いえ、いいんですよ。それで話が変わるんですけど、あのレミナさん、もしよかったら俺の仲間になってくれませんか?」

 私は、驚いた。私もこの人だったらと初めて思えた相手だったのだ。 

 「いいの?こんな私で?」
 
 「ええ、もちろんです。もう一度言います。仲間になってもらえませんか」

 「もちろんよ。これからもよろしくね、アイズ」

 彼は、緊張した面持ちだったのが、私の返事を聞いて、見ていて気持ちいいほどの笑顔になると

「良かった。断られたらどうしようと思ってたんです。では、こちらこそよろしくお願いしますね、レミナ」

 それからの彼の活躍は凄かった。次々に仲間が増えていき層も次々に攻略していった。そしてそれに比例して、彼の評判がどんどん上がる。いつしか【風神】と呼ばれまでに至っていた。

 それを、最初から見ることができた私は、きっとかなりの幸運の持ち主だろう。

 だが結局彼の正体は、わからない。

 そういえば科学者といえば、このSAOを作った茅場晶彦には、茅場康彦という日本、いや世界的に有名な弟がいた。彼は、アメリカで過ごし飛び級したりとかなりの頭のよさだった。だが、彼の凄さはそんなところではない。

 世界的に有名になった理由。

 それは、AIDSの薬を作ったからだ。その発表があった時、世界がひっくり返ったといってもいいだろうその薬によって、たくさんの人が救われた。そして彼は、一部の人達にとって英雄扱いされている。

 今回、彼のお兄さんである茅場晶彦がこんなことをして、今彼は、どういう風になっているのだろう。

 もしかして彼がアイズなのでは、と考えたことがある。そうすれば、筋が通ってくる気がしたのだ。だが、そのことを考えるのはやめた

 アイズが誰であってもいいじゃないか。それが、私が出した結論。

 これから、層攻略の作戦会議だ。今日は、一体どういう作戦で行くのだろうか。

 にしても、青の副団長というのは、私の髪が青いことからつけられているのだろうから、まだわかるのだが
【蒼氷】っていう二つ名は一体なんなのだろうか。これを付けた人に聞いてみたい。






Sideアイズ

 俺が、最初に仲間にしたプレイヤー。それがレミナだった。

 彼女は、SAOのβ版の中でも屈指の実力者だった。だが彼女は、そのことを決して鼻にかけない。

 どちらかというと、自分のことをかなりの過少評価している。彼女の能力は、どれをとっても一流といってもいいだろう。

 細剣使いとしての実力は、このSAOにおいて敵う者はいない。あの【閃光】のアスナでさえもだ。

 というかアスナが彼女の細剣捌きを見て、細剣使いになろうと思ったというのをアスナから直接聞いたことがある。

 ちなみに彼女の二つ名は、俺が付けた。偶然だったが……髪が青いから蒼で、氷は彼女が、細剣を扱い敵を倒すときの目が、まるで尖った氷のように、冷たく鋭い。

 俺が、彼女は【蒼氷】とぼそりとつぶやいたら、すぐさまそれが、二つ名として広まっていった。

 【蒼氷】のレミナ。青の副団長とも呼ばれる最高のプレイヤーの1人。

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