小説『ソードアート・オンライン〜幻の両剣使い〜』
作者:定泰麒()

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【The Savior】 双子の作り手 【太陽】 【月】

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 現在SAOにおいて、【太陽】と【月】という二つのブランドがある。
【太陽】のほうは、武器のブランド、【月】は、軽鎧やレザー装備を扱うブランドだ。

 この二つのブランドを知らないSAOのプレイヤーはいない。というのもこの二つのブランドは、β版時代から存在しており、その当時から、β版において知らない人がいなかった。なんといっても、性能が他の物のブランドを圧倒しており、さらに、同じ武器や装備を作るとしても同じ姿になることはない。それは、買い手の要求に応じてその人だけのロゴを彫ったり、細工を施してくれたりするのだ。それも無料で。

 だが、この二つのブランドの商品を持っている人は少なく、現時点では、200人にも満たないつまりこの二つのブランドの物を持っていることは、トッププレイヤーの証と言っても過言ではないのだ。

 そしてその一番最初にこの二つのブランドのアイテムを使い始めた男。
 
 それがアイズだった。

 最初にβ版において知らない人がいなかったというのは、アイズがこの二つのブランドの物を使っていたからだった。では、なぜアイズは彼らの作った装備を使うことになったのか。

 その理由とは・・・



過去――――――β版SAOにおいて

 「なぁルーノ、僕たちの装備品を有名にするためには、どうしたらいいと思う?」

 「うーん……案としては、私達が自分たちで使ってボス戦とかで活躍して知名度を上げる、もしくは、有名な人に使ってもらって知名度を上げてもらうとかかな……」

 さすがは僕の優秀な妹だ。的確な意見を出してくる。

 「なるほどね。さすが我が妹は考えることが違うね。でもどうする、僕たちは決して弱い訳じゃないけど活躍できるくらいでは、ないよ」

 「まぁそうだよね……じゃあ有名な人に使ってもらう?」

 「有名な人…例えば誰?」

 「そうね……今話題の【風神】はどうかな?」

 「【風神】ね……あの噂は、少々眉唾だよね。しかも会ったこともないし、どこにいるかもわからない」

 「そりゃそうだけど、会ってみる価値はあると思うんだよね実際見てみて、決めればいいじゃない」

 「わかった。じゃあそれで行こう。でもどこにいるんだろう?」

 「今は、4層目攻略終わったばかりだから、5層目にでも行けば会えるんじゃないかな」

 「そうか。じゃあ早速会いに行こう」

 そういって、僕と妹の2人で【風神】に会いに行くことになった。僕らは、中学生で二卵性の双子だ。一応僕のほうが、ちょっと早く生まれたために兄ということになっている。兄弟そろってSAOのβ版の権利が取れて本当に運が良かった。もともと2人ともダメで当然で送ったものだったし、2人とも権利を得ることができたので、それがわかったとき2人で飛んで喜んだ。

 そして僕たちは、SAOで何をするか考えた。当然二人で最強のプレイヤーになるというのもあったけどそれは、無理なんじゃないという冷静な妹が言い、そのあともいろいろ考えた。そして、その結果、別々に武器と防具を作っていってSAOで1番の店を作ろう。ということになった。

 そしてβ版を開始から2週間と5日経ち、自分たちのLVも上げながら、お互いに武器と防具を作り、お互いにちょっとした自信作ができたので、上の会話になったということだ。

 ちなみに僕のプレイヤー名は、スーノ
 妹のプレイヤー名は、ルーノ

 スーノの意味は、【太陽】
 ルーノの意味は、【月】だ。






 僕たちが、5層目に転移した時。どこかで騒ぎが起きていた。僕たちは、好奇心でそこに向かい、何が起こっているのか覗いてみると、その中心に彼がいた。

「あの【風神】とその仲間のシュタインがデュエルだとよ」

 野次馬達のどこからか声が聞こえてきた。

 僕たちは、ちょうどいい機会だとそれを見ることにした。

 なんともすごいとしか言えないデュエルだった。シュタインというプレイヤーもかなり強いということは、すぐわかった。曲刀を振るう速度がそれを物語っていたためだ。

 しかし、彼がこのデュエルに勝つことはなかった

 勝利したのは、【風神】だった。

 シュタインというプレイヤーからの攻撃をほとんどギリギリで避け、そこからのカウンターという攻撃

 なんともすごいというふうにしか言いようがない。

 そしてそれは、噂が真実であると同時に、僕たちに決意を決めさせるには、十分すぎるモノだった。4






Sideアイズ

 シュタインとのデュエルが終わり、シュタインとともに休憩をしていた時だった。とある二人組から声をかけられた。

 「【風神】さんですよね。さっきの試合すごかったです」

 俺に話しかけてきたのは、2人組のうちの1人である女の子の方だった。

 「ありがとうございます。でもあんまり【風神】って呼ばないでほしいな。その二つ名、あんまり気に入ってないんだ。俺の名前は、アイズです。よろしく」

 「それは、すいませんでした。私の名前は、ルーノです」

 すると彼女は、彼女の横にいるプレイヤーに向かって目で合図している。

 そしてその隣にいるプレイヤーは、それに気づき自己紹介をした。

 「僕の名前は、スーノといいます。よろしくお願いします」

 「こちらこそよろしく。あのもしかしてなんだけど、2人って現実で知り合いだったりしてるの?しかも兄弟とかじゃないかな?……あっ、すいません……つい……」

 彼らは、それを聞き驚いた顔をしている。そして二人で顔を見合わせている。

 するとスーノのほうが話し出した。

 「はい。僕たちは、現実で知り合いです。それどころか双子の兄弟です。でもなぜわかったんですか?」

 「それは、名前かな」

 「名前ですか?」

 「うん。スーノは【太陽】、ルーノは【月】両方とも珍しい呼び方を名前にしてるからね。しかもそのスーノとルーノっていうのは、エスペラントだよね。それになんとなく雰囲気的なものでそう感じたんだ」

 2人は、またもや顔を見合わせた

 すると今度は、ルーノのほうが話し出した。

 「なるほど…すごいですね。腕前もさることながら、頭もいいなんて御見それいたしました」

 「いやいや、そんなことはないよ。それで、俺になんか用があるのかな?」

 彼らは、待ってましたと言わんばかりに笑顔になった

 「あっはい。そうです。あの実は……」

 どうやら彼らは、職人らしい。それで自分たちのブランドを有名にしてみたいと思い、俺に装備してもらえば、有名になるのではと尋ねてきたらしい。

 俺としては、非常にプラスになることの方が大きく魅力的な提案だった。通常料金の半額ぐらいで、装備の修理や武器の売り買いをおこなってくれるというのだ。がしかし、まだ実物を見ていないし何とも言えなかった。

 「なるほどね…じゃあ実物を見せてもらっていいかな?それを見てから決めることにするよ」

 「わかりました。今出します」

 そういうと二人は、メニュー画面を開けそれぞれの装備品を取り出す。

 一つは、中世の騎士が使っていた剣。騎士剣カッツバルゲル。

 

 もう一つは、白ベースの下地に、俺の髪と同じ色の緑(エメラルドグリーン)がラインや所々にあしらわれているレザーの防具一式。

 俺は、一目でこの装備を気に入った。

 「素晴らしい、装備だね。わかった君たちの装備を付けて今後は、やっていくよ」

 それを聞いた、2人は、とてもうれしそうだ。

 「「良かった。今後ともよろしくお願いします!」」

 「こちらこそよろしく」






現在――――――正式版SAOにおいて

 「ルア、今回の層攻略での僕たちの活躍中々だったんじゃない?」

 「まぁちょっとは、良かったと思うわよ…にしてもアイズと出会ってほんとによかったわよね」

 「今さら何言ってるんだ?まぁその通りだけどさ…でもなんでまた急にそんなことを?」

 「いや、なんか…きっと彼に出会わなければ、私たちは死んでいたかもと思ってね」

 「そんなことはないよ……といいたいところだけど、それが本音だろうね……でも僕たちは、生きてるからそれでいいじゃないか」

 「まぁね。じゃあずっと話とくのも何だし、仕事に取り掛かろうか」

 「そうだね。今回も凄い修理の数だよ。早速始めよう」






 ここは、【太陽】と【月】が営業している店

 『エストレーラ』

 今日もここに依頼をしに来る人が大勢いる。それを受けてくれるか、受けてもらえないかは彼ら次第。いや……プレイヤー次第だ。

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