小説『ソードアート・オンライン〜幻の両剣使い〜』
作者:定泰麒()

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【The Savior】 最高の偵察隊 【four piese】

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【The Savior】には、【four piese】と呼ばれるパーティがある。

 そのパーティの役割は、ダンジョンの偵察のみ。だが、そのダンジョンの偵察というのは、SAOにて一番重要な任務であると同時に、もっとも困難な任務かつ危険を伴う任務だ。

 当然、そのパーティに所属するのは、【The Savior】内においてもかなりの実力を誇るプレイヤー達……という訳ではない


 【The Savior】には、主に4つのパーティがあ。る

 アイズ率いる風神パーティ
 
 青の副団長率いる蒼氷パーティ
 
 赤の副団長率いる明敏パーティ

 そして、【four piese】という訳だ。

 上3つのパーティは、その都度パーティの入れ替えがある。しかし、【four piese】は、ずっと固定のパーティだ。それは、彼らが望み、そのことをアイズも望んだからなのであった。

 【four piese】は、名前の通り4人組のパーティだ

 リーダーの名前は、シン。
 彼は、決して最強でもなく最高でもない。攻略組の中だと真ん中のほうであろう。そんな彼だが、みんなに慕われている。それは、人柄の力なのかもしれない。彼には、人を見せつける魅力があった。きっと劉邦という人物が現代にいるとしたら、それは、彼のことを指すのではないかと思う。

 そして【four piese】には、そんな彼に魅せられた人たちで構成されている。

 まずクゥというプレイヤー。
 彼女は、両手用曲刀使いでステータスの割り振りをSTR中心に上げているのでかなりの火力を誇るプレイヤーだ。

 次にレツだ。
 彼は、【The Savior】では二人の内の一人である刀使いだ。ステータスの割り振りをAGI中心に上げている。
よって素早い攻撃を得意とし、その動きで敵を翻弄する。

 最後にフィーユ。
 彼女は、槍使いで、まんべんなくステータスを振り、なんでもできるがそれ故にいわゆる器用貧乏という感じだ。

 彼らは、β版SAOにおいて出会った

 お互いの個性で、それぞれをカバーそしてフォローしあい、パーティの完成度がβ版のどこのパーティよりも素晴らしかった

 だからこそ、彼らはこのパーティを望み、アイズもこのパーティのままであることを望んだのだ。

 なぜ、そんな彼らがアイズの仲間になったのか?
 彼らは、なぜ偵察隊になったのか?
 
 それは…





過去――――――β版SAOにおいて

 「アイズ。お前、【four piese】って知ってるか?」

 「知っていますよ。今噂のパーティの名前ですよね」

 ここは、とある宿屋。
 今日は仲間たちがほとんど今の時間にログインできないらしく、ここにいるのは、アイズとシュタインだけだった。

 その噂というのは、【four piese】というパーティが、攻略不能と言われた10層目の通称〈崖〉と言われるダンジョンを制覇したというものだった。

 
 「おお、知っていたか。でも凄いよな。4人であのダンジョン攻略したんだろ」

 「そうです。そして実を言うと俺もその場に居たんですけどね…」

 アイズの言葉に、シュタインは目を見開き驚く。

 「ほんとかよ…。お前……。まぁいいや、それがお前だもんな。でどうだったそいつら? 強かったのか?」

 「ええ、とても強かったですよ」

 「そうか・・・。デュエルしてぇな」

 そうシュタインが言うとアイズは、苦笑いしながらため息をついた

 「シュタイン。あなたは、本当にデュエルが好きですね」

 「まぁな。なんか強い奴と戦うとわくわくするんだよな」

 「そうですか…。でもまぁきっと、あなたは彼らとは戦わないと思いますよ」

 シュタインは、疑問に思ったのか顔をしかめる。

 「なんでだ?強いんだろそいつら」

 「はい。俺が見てきた中でも最高のパーティだと思いますよ」

 「じゃあどうして?」

 「それは、彼らはパーティが最強であり、一人一人だと決して強くはないからです」

 シュタインは、さらに顔をしかめる

 「いまいち、意味が分からないんだがどういうことだ?」

 「うーん。彼らのことは、口で説明するよりも見たほうが早いですよ。どうせ今は、暇ですし会いに行きましょうか」

 「お前、場所わかんのかよ」

 シュタインがそういうと、アイズはさも当然のように

 「知っていますよ。9層目の廃墟ダンジョンにいるらしいです」

 「なんで知ってるんだよ……まぁいつものことか……じゃあ行くか。そこに」

 「はい。行きましょう」

 と笑顔で、アイズは言った






 ここは、廃墟ダンジョンの一番奥。
 アイズとシュタインがそこまでたどり着くとそこでは、壮絶なボス戦が行われていた。

 「スゲー」

 それが、シュタインがこの戦闘を見たときに言った一言。
 
 実際彼らの目の前で行われていた戦闘は、それほどまでに素晴らしく、圧倒的過ぎて声を出すのさえおっくうになる。

 どことなく王を思い起こさせる敵のモンスター相手にそれぞれが、お互いの個性をだし、フォローしあう姿は見るものに畏怖さえ覚えさせる。

 まるで、映画のような計算され、洗練された動きで敵を翻弄する。

 ほんとに、「凄い」という言葉があっている。というかそれ意外に褒める言葉が浮かばない。

 それから、すぐに戦闘も終わり、アイズは、彼らのリーダーであるシンに近づくと話しかけた。

 「やはり、凄いとしか言えない戦闘ですね」

 「いや、そんなことはないよ【風神】君」

 シンは、軽く笑いながら答える。

 「謙遜なされないでください。あなた達は、ほんとにすばらしいチームです」

 「君にそんなことを言ってもらえるなんて光栄だな。SAO最強のプレイヤーに」

 「最強では、ないですよ。決してね…」

 「なんだい、その意味深げなセリフは…誰か他にいるとでも?」

 「いますよ。きっと…おっとそんなことより、先日の件考えてくれましたか?」

 一瞬、シンは顔をしかめたが、すぐいつものおだかな表情になった。

 ちなみにアイズは、先日【four piese】が〈崖〉にて、彼らに仲間にならないかとオファーをしていた。

 「そうだね。受けようと思うよ」

 アイズは、その言葉を聞いた途端に嬉しそうな顔になる。

 「ほんとですか? ありがとうございます」

 「嘘をついても何の得もないだろ。ただし条件がある」

 「条件…なんですか?」

 「それは、俺たちは俺たちで活動したいんだ。だからこのパーティのままでやらせてくれ」

 アイズは、何を言われるか心配だったようで安心したように、ほっと胸をなでおろした。

 「当然です。あなたたちのパーティのままでやっていただきます。そして、先日も言わせていただいた通り、偵察の仕事以外は自由行動でやっていただいて結構です」

「そうか。了解した。よろしくな【風神】君」





 こうして、【The Savior】にまた新たな仲間が加わった。

 ちなみに正式版SAOにおいて【four piese】は、ある伝説を作るのだがそれは、また別の話。




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