【The Savior】 最高の偵察隊 【four piese】
***************************************************************
【The Savior】には、【four piese】と呼ばれるパーティがある。
そのパーティの役割は、ダンジョンの偵察のみ。だが、そのダンジョンの偵察というのは、SAOにて一番重要な任務であると同時に、もっとも困難な任務かつ危険を伴う任務だ。
当然、そのパーティに所属するのは、【The Savior】内においてもかなりの実力を誇るプレイヤー達……という訳ではない
【The Savior】には、主に4つのパーティがあ。る
アイズ率いる風神パーティ
青の副団長率いる蒼氷パーティ
赤の副団長率いる明敏パーティ
そして、【four piese】という訳だ。
上3つのパーティは、その都度パーティの入れ替えがある。しかし、【four piese】は、ずっと固定のパーティだ。それは、彼らが望み、そのことをアイズも望んだからなのであった。
【four piese】は、名前の通り4人組のパーティだ
リーダーの名前は、シン。
彼は、決して最強でもなく最高でもない。攻略組の中だと真ん中のほうであろう。そんな彼だが、みんなに慕われている。それは、人柄の力なのかもしれない。彼には、人を見せつける魅力があった。きっと劉邦という人物が現代にいるとしたら、それは、彼のことを指すのではないかと思う。
そして【four piese】には、そんな彼に魅せられた人たちで構成されている。
まずクゥというプレイヤー。
彼女は、両手用曲刀使いでステータスの割り振りをSTR中心に上げているのでかなりの火力を誇るプレイヤーだ。
次にレツだ。
彼は、【The Savior】では二人の内の一人である刀使いだ。ステータスの割り振りをAGI中心に上げている。
よって素早い攻撃を得意とし、その動きで敵を翻弄する。
最後にフィーユ。
彼女は、槍使いで、まんべんなくステータスを振り、なんでもできるがそれ故にいわゆる器用貧乏という感じだ。
彼らは、β版SAOにおいて出会った
お互いの個性で、それぞれをカバーそしてフォローしあい、パーティの完成度がβ版のどこのパーティよりも素晴らしかった
だからこそ、彼らはこのパーティを望み、アイズもこのパーティのままであることを望んだのだ。
なぜ、そんな彼らがアイズの仲間になったのか?
彼らは、なぜ偵察隊になったのか?
それは…
過去――――――β版SAOにおいて
「アイズ。お前、【four piese】って知ってるか?」
「知っていますよ。今噂のパーティの名前ですよね」
ここは、とある宿屋。
今日は仲間たちがほとんど今の時間にログインできないらしく、ここにいるのは、アイズとシュタインだけだった。
その噂というのは、【four piese】というパーティが、攻略不能と言われた10層目の通称〈崖〉と言われるダンジョンを制覇したというものだった。
「おお、知っていたか。でも凄いよな。4人であのダンジョン攻略したんだろ」
「そうです。そして実を言うと俺もその場に居たんですけどね…」
アイズの言葉に、シュタインは目を見開き驚く。
「ほんとかよ…。お前……。まぁいいや、それがお前だもんな。でどうだったそいつら? 強かったのか?」
「ええ、とても強かったですよ」
「そうか・・・。デュエルしてぇな」
そうシュタインが言うとアイズは、苦笑いしながらため息をついた
「シュタイン。あなたは、本当にデュエルが好きですね」
「まぁな。なんか強い奴と戦うとわくわくするんだよな」
「そうですか…。でもまぁきっと、あなたは彼らとは戦わないと思いますよ」
シュタインは、疑問に思ったのか顔をしかめる。
「なんでだ?強いんだろそいつら」
「はい。俺が見てきた中でも最高のパーティだと思いますよ」
「じゃあどうして?」
「それは、彼らはパーティが最強であり、一人一人だと決して強くはないからです」
シュタインは、さらに顔をしかめる
「いまいち、意味が分からないんだがどういうことだ?」
「うーん。彼らのことは、口で説明するよりも見たほうが早いですよ。どうせ今は、暇ですし会いに行きましょうか」
「お前、場所わかんのかよ」
シュタインがそういうと、アイズはさも当然のように
「知っていますよ。9層目の廃墟ダンジョンにいるらしいです」
「なんで知ってるんだよ……まぁいつものことか……じゃあ行くか。そこに」
「はい。行きましょう」
と笑顔で、アイズは言った
ここは、廃墟ダンジョンの一番奥。
アイズとシュタインがそこまでたどり着くとそこでは、壮絶なボス戦が行われていた。
「スゲー」
それが、シュタインがこの戦闘を見たときに言った一言。
実際彼らの目の前で行われていた戦闘は、それほどまでに素晴らしく、圧倒的過ぎて声を出すのさえおっくうになる。
どことなく王を思い起こさせる敵のモンスター相手にそれぞれが、お互いの個性をだし、フォローしあう姿は見るものに畏怖さえ覚えさせる。
まるで、映画のような計算され、洗練された動きで敵を翻弄する。
ほんとに、「凄い」という言葉があっている。というかそれ意外に褒める言葉が浮かばない。
それから、すぐに戦闘も終わり、アイズは、彼らのリーダーであるシンに近づくと話しかけた。
「やはり、凄いとしか言えない戦闘ですね」
「いや、そんなことはないよ【風神】君」
シンは、軽く笑いながら答える。
「謙遜なされないでください。あなた達は、ほんとにすばらしいチームです」
「君にそんなことを言ってもらえるなんて光栄だな。SAO最強のプレイヤーに」
「最強では、ないですよ。決してね…」
「なんだい、その意味深げなセリフは…誰か他にいるとでも?」
「いますよ。きっと…おっとそんなことより、先日の件考えてくれましたか?」
一瞬、シンは顔をしかめたが、すぐいつものおだかな表情になった。
ちなみにアイズは、先日【four piese】が〈崖〉にて、彼らに仲間にならないかとオファーをしていた。
「そうだね。受けようと思うよ」
アイズは、その言葉を聞いた途端に嬉しそうな顔になる。
「ほんとですか? ありがとうございます」
「嘘をついても何の得もないだろ。ただし条件がある」
「条件…なんですか?」
「それは、俺たちは俺たちで活動したいんだ。だからこのパーティのままでやらせてくれ」
アイズは、何を言われるか心配だったようで安心したように、ほっと胸をなでおろした。
「当然です。あなたたちのパーティのままでやっていただきます。そして、先日も言わせていただいた通り、偵察の仕事以外は自由行動でやっていただいて結構です」
「そうか。了解した。よろしくな【風神】君」
こうして、【The Savior】にまた新たな仲間が加わった。
ちなみに正式版SAOにおいて【four piese】は、ある伝説を作るのだがそれは、また別の話。