小説『ソードアート・オンライン〜幻の両剣使い〜』
作者:定泰麒()

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【The Savior】 赤の副団長 【明敏】

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【The Savior】には、2人の副団長がいる

 1人は、青の副団長で【蒼氷】と呼ばれるレミナ。
 そしてもう1人が、赤の副団長で【明敏】と呼ばれるアンディというプレイヤーだ。

 アンディは、レミナと違い万能キャラという訳ではない。実力的に言っても【The Savior】内においても決して強いという訳ではなく、さらにどちらかというと弱い方に入るだろう

 では、なぜそんな男が副団長になったのか……その理由は、簡単だ。

 それは、彼は飛びぬけて頭がいいのだ

 彼は、リアルでは誰もが知っている大学においてトップで合格し心理学を専攻している。

 いわゆるエリートに近い。しかし、大体のイメージのエリートのようにつんけんした態度をとったり偉ぶったりはしない。

 それは、心理学を専攻し人の心について熟知しているためというだけでなく元からの人柄からなっているようだ。

 彼の主な役割として、まず作戦を立てることから始まる。基本的なことは、アイズ、レミナ、アンディで決め細かいところは、アンディだけが務める。

 それだけでも大変な仕事なのだが、他にも、メンバーへのアイテム配布であったり資金等の調達など裏方の仕事を主に行っている。

 それに、パーティのリーダーも兼ねているのでギルド内で一番きついのは、彼ではないだろうか。

 だが、彼はそれを決して表に出すことはない。

 いつも飄々とし、ムードメーカーであり、軽い男。それがアンディなのである






過去―――――――β版SAOにおいて

 俺は、今話題の【風神】という男を見ているところだ。

 【風神】は、どこかつかめない人物だ。奴を観察して3日目になるが、どんな人物なのかというのが一切見えてこない。

 ただわかるのが、決して悪い人物ではなく、どちらかと言えばいい人物であるのだろう。

 まぁ俺にもいろいろあるし、寝ないといけないからログアウトは、行うのでその間は、知らないが……少なくとも俺がログイン中は、決して何もしていない。

 というか奴は、ログアウトしていないのだろうか? いつもログインしているように感じる。確信ではなく、憶測の段階でしかないのだが。

 ただ奴についていくつかわかったことがある。それは、奴は嘘をつかないことと実力については、噂通りいや噂以上でそして、一番俺が気になったのが仲間集めに必死なのだ。

 嘘をついていないというのは、絶対と言える。

 それは、俺が心理学を専攻しそのなかで嘘というものについて習ったのだが人間には、絶対嘘をつく時にやってしまうことがあるらしい。それは、人によって違ってくるのだが、大まかに言って3つのものを見ればわかる。

 まず顔と目の動き。
 これは、一般的な嘘の見抜き方でよく取り調べやカウンセリングにおいて使われるものだ。

 だがこの2つは、意識すればしないことができる。

 しかし、これ以外にも分かってしまう方法がある。
 それは、なんなのかというと体の動きであったりする。

 例えば……
 嘘をついている人は質問者から顔や体を背けたり。
 無意識的に自分と相手の間に物(本やカップなど)を置いたりといった行動だ。

 だが【風神】は、それさえもなかった。つまり彼は、俺が見る限り正直モノ。もしくは、俺が見破れないほどのポーカーフェイスということだ。

 実力のほどは、見ればすぐにわかる。あの見るモノに鳥肌を立たせるあの動き正直恐ろしい、同じ人間とは思えない。


 そして最後に一番大事なこと。それは、仲間集めをしているという点だ。

 奴は、β版参加者に声をかけまくっている。そしてどう考えても、その人のことを探ろうとしているように見える。

 さらに言えば、俺がどう考えても仲間集めをしようとしている風にしか思えない。

 俺は、そこが気になった。最初観察しようと思ったのは、ほんの些細なことだったのだが、その初日で【風神】に興味を持ってしまった

 そしてそろそろ話掛けてみようと考えている。これ以上観察しても、何にもないだろうし、それに直接話してわかることもあるだろう。

 「なぁ【風神】さん。なんであんたそんなに仲間集めに必死なんだ?」

 俺は、観察していた所から抜け出し、ほぼ直球という質問を投げかけた。

 普通ならこんなことをしないだろうだが、普通ではこの男から何もできないと考えたからだ

 「その前に聞きたいことがあります。なぜ3日間も俺を付け回していたのですか?アンディさん」

 どうやら気づかれていたようだ。さらに逆に俺のこと知られてしまっている。俺は、この時ただ恐怖した。

 まるで、蛇に睨まれたカエルのように……

 しかし、俺の口が動いてくれた。

 「そうか気づかれていたのか…まぁ当たり前か。【風神】君を見る限り頭がよさそうだもんね」

 【風神】はニヤッと笑う。

 「いえいえあなたほどではないと思いますけどね。それで質問に答えていただけませんか?」

 顔は、至って普通だ。しかし俺には、怒っているように感じる。凄まじいほどにだ……

 「そうっだったな。それは、ただ単に君を見てみたかったんだよこの目で。ほんとに最初は、ある程度見たら帰ろうと思っていたんだよ。だが君を見ているのが楽しくなったんだよ。なぜかわからないがね」

 「そうですか。それならさっさとしゃべりかけてきてほしかったですね。あまり観察されるのは、好きではないので」

 「それは、すまなかったね。だが最初の質問の答えを教えてくれないか?どうしても知りたいんだ」

 「うーん、そうですね。一つ提案があるのですがいいですか?」

 「なんだい?」

「そうですね。もしその答えが知りたいのなら俺の仲間になりませんか? そうすればわかると思いますよ。いずれですが…」

 【風神】はそういった途端。先ほどまで受けていた威圧のようなものが溶け今度は、何と言ったらいいのかわからないが、言うなら安心感というものが生まれた気がした。

 俺はただの興味であったのが、それだけに収まらないように思った。そこに今回の提案をとても面白く感じた。

 普通さっきまで自分を観察していた人間に仲間にならないかということができるだろうか

 俺が、このβ版をしようと思ったのも適当に応募してみたら当たってしまいレポートを書くのに使おうと思ってやり始めたのだ。

 そしてそこに現れた。興味を持たされ間違いなく現時点で一番面白い研究対象。

 それを俺は、みすみす逃すことができるだろうか? いや、できない。

 俺の答えは決まっていた。

 「ああ。仲間になろう…。これからよろしくな【風神】君…」

 



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