小説『ソードアート・オンライン〜幻の両剣使い〜』
作者:定泰麒()

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【The Savior】 癒しの女神 【死神】

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 彼女は、味方か敵によってその見方が変わってくる。

 名前は、ミュウミュウ。
 愛称は、ミュウ。

 外見は、タレ目。さらに特徴的なものは、そのピンク色の髪だ。髪の長さは、セミロングでどこで手に入れたかはわからないが、いつもキツネのようなキャラのついたゴムを使って軽いツインテールをしている。

 そして、性格はとても温和でそれでいてどこか抜けている。

 このことから、彼女は味方からは癒しの女神と言われ、SAO内においてもかなりの人気を誇る女性プレイヤーとなっていた。

 だが、なぜかそんな彼女に【死神】という二つ名がついていることも事実なのだ。

 この【死神】という名前が付いたのは、あのSAOを騒然とさせた事件。

 「アイズ失踪事件」

 の後についたものだった。







 それは、59層目の攻略の時。
 アイズが何処かへ消え3か月経った時のことだった。

 今回の攻略において、アイズの代わりに層攻略のリーダーは、KoBの団長であり、【神聖剣】というユニークスキルを持ちアイズとともにSAO内最強と呼ばれているヒースクリフであった。

 彼は、実力もさることながら、圧倒的な頭脳とアイズに匹敵するほどのカリスマ性を持ち、さらには名声も持っていた。

 そんな彼が、攻略をするうえで一番悩んだのは、【The Savior】との連携だ。

 今までは、アイズという絶対的な存在がいて成り立っていたギルドであり、仮にアイズがいなかったら、確実にソロやそれぞれのパーティとして動いていた連中なのだ。

 実際、【雷神】と呼ばれているシュタインや【four piese】といった者たちはギルドから消えていた。

 だがそれでも、レミナやアンディといった副団長達が残り、なんとかギルドとしての動きをしていた。

 つまり、今の【The Savior】の状態は最悪と言っていい状態であり、メンバー全員が、層攻略の大事な戦力であったのに今となっては、落ちぶれていた。

 だが、そんな中でも一人光り輝いていた存在がいた。それが、ミュウミュウであった。彼女がいることによって、暗い雰囲気となっているギルドが徐々にではあるが明るくなっていった。

 その彼女を見て、ギルドメンバーでない人達の元々人気があったが、さらに人気が高まったのは、言うまでもないだろう。

 そしてそんな彼女を、ヒースクリフが放っておく訳がなかった。ヒースクリフは、彼女を中心として【The Savior】を一定の水準まで戻そうとしたのだ。

 そのためには、彼女には今よりもカリスマ性が必要であった。だから彼女は、かわいいだけではないということをプレイヤーの間に知らしめる必要があった。

 彼女は、アイズやレミナ、シュタインといったトッププレイヤー達の影に隠れて知られてはいなかったが、他のチームやギルドに行けば確実にエースになれる実力を持っていたのだ。

 そこで、ヒースクリフはミュウだけにある特別な任務を59層目攻略時に伝えていた。それは、とても簡単な任務であり決して重要な任務ではなかった。

 その任務とは、みんな先導しボスの部屋にたどり着くことであった。

 決して難しくはない任務で、いわゆる攻略組の先頭に立ってみんなをボスがいる部屋まで連れて行くというだけだった。

 既に地図もあり、その道中にはモンスターさえも出現せず、難なくボスの部屋までたどり着いた。

 そして、ミュウはボスの部屋の扉を開けた。なんの躊躇もせずに……

 ピッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 突然、耳が痛くなるほどの警告音が鳴った。

 それがやんだかと思ったのも束の間。
「トラップ発動。トラップ発動。トラップ発動」
 59層中にシステムのアナウンスが流れた。

 ミュウは、急いで外に出ようとするが……出られない。扉は開いているが、目に見えない壁みたいなものがあり外に出られなかったのだ。

 そうつまり、ミュウは、一人でボスの相手をしなければならない……当然外からも入ろうと何人ものプレイヤーが挑戦するがいっこうに入れない。

 だが、ボスの部屋の内部を見ることはできた。

 ここで、みんなは思った。ミュウミュウが死ぬのではないかと……そんなことは、させまいと【The Savior】のメンバーだけでなく、様々なプレイヤーが見えない壁を破壊しようとするが壊れない。

 その間にも、この階のボスである≪サーペントサウルス≫という、骨だけのティラノサウルスみたいなモンスターがミュウに近づいてくる。

 みながそれを見て絶望した。悪いイメージを頭に思い浮かべている。

 ただ一人を除いて……

 ミュウは、ある武器を取り出した。それは誰も見たことがない形状をした武器であった。

 「なんだ……あの武器は……」
 
 誰かがつぶやいた。

 ミュウは、その武器を持ち≪サーペントサウルス≫に立ち向かっていった。

 彼女は、敵に向けその武器を振るう。まるで一撃で命を奪うように

 さらに攻撃の手を止めることなく武器を振るう。まるで冷酷な機械のように

 そうそして、誰かがつぶやいた。
 「まるで…【死神】のようではないか…」と

 彼女の持っている武器は、【鎌】。大きさは、彼女の身長以上はあり、刃である部分の大きさも異常だ。

 これこそ、彼女の【ユニークスキル】であった……

 そして、皆が唖然としていると、
 「おい、壁が無くなってるぞ。早く彼女を助けるんだ」
 ヒースクリフが叫ぶようにして言った

 それを聞いて一斉にみんなが動き出す。

 ミュウは、というと疲労はしているがHPもほとんど減っておらず、一旦前線から逃げ、HPが回復するとまた前線に戻っていった。


 そして、ヒースクリフの策は、一定の効果を得た。彼女の実力や新たな【ユニークスキル】の発現。その特別なモノは、一躍彼女をトッププレイヤーの1人にした

 そして彼女の二つ名に【死神】という名が増えた。

 彼女の存在のおかげで、【The Savior】には以前ほどとはいかないが、ある程度活気が戻ってきた。

 だがそれでも欠けたものの影響は大きく、みなが自分の心の中に開いた穴を埋めれずにいた……




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