小説『ソードアート・オンライン〜幻の両剣使い〜』
作者:定泰麒()

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【The Savior】 沈黙の少女 【猫魔女】

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少女は、人が嫌いだった。
 少女は、お金が嫌いだった。
 少女は、世界が嫌いだった……

 そんな少女にも、好きな物がある。ゲームと大親友の女の子だ。

 彼女の家は、大富豪と言える家であった。昔から彼女はちやほやされ育ってきた。だがある時、そのことに嫌気がさして来ていた時のことだ。

 彼女は、ある少女に出会った。その少女は、どこか自分と似ていた。それは、顔ではなく性格でもなく、なんといっていいかわからないが、似ていた。

 その少女は、自分と同じ良家の令嬢で、順風満帆にエリートコースを歩いていた。

 彼女達は、お互いに惹かれた。これは、決して恋愛感情という訳でない。これまた説明できないなにかよって……

 そして彼女達は、親友となっていったのだった。

 だが彼女は、その少女以外には心を開かなかった。そして彼女は、いつの間にか現実から目を背け、仮想の世界…ゲームの世界にどっぷりはまってしまっていた。

 彼女には、世界で一番大切にしていたものがあった。それは、あの少女からのプレゼント。

 小さい頃、少女と一緒に買い物へ行ったときに、似合うと言われ買ってもらったモノだった。

 猫耳の髪飾り

 彼女は、常にそれをつけている。付けないのは、学校に行くときだけだ。

 彼女は、ゲーム世界においても猫耳をつけている。そして彼女は、ゲームの才能を持っているらしく魔術師という職業において敵は、いないとも称された。そうしていつからか、彼女は【猫魔女】と呼ばれていた。

 そんな彼女が、SAOという魅惑的なゲームに興味を持たない訳がなかった。ゲームシステムに魔法という概念がないのは落胆したが、それでもこのSAOというゲームがしたかった。

 彼女は、両親に懇願し、なんとか手に入れることができた。

 SAOβ版において彼女は現実では根暗であったが、ゲーム内ではそうではなく友達がたくさんいた。当然、β版でも友達はできた。だが彼女が選んだのは、ソロプレイという道だった。

 彼女は、友達がいても、どこか一線を引いてしまう。だからこそ選んだ道だったのだが……

 まさかもう一人信頼できる人物ができるとは、思っていなかった。

 その男は、どこかに闇を感じた。
 それでいて圧倒的な光を感じた。
 そしてどこか彼女に似ていた。

 彼は、彼女を仲間に何度も誘った。だが彼女は、何回も断った。

 しかし、ある日のことだった。彼女は、彼の仲間になることにした。

 別に特別なきっかけがあったわけではない。
 ほんとにただの気まぐれで…





 彼女の名前は、ミント。

 今日のSAOにおいて知らないものはいないギルド。【The Savior】の一員となっている。

 彼女にとって大変だったことは、やはり魔法がないということだった。彼女は、今まで魔術師という職業しかしてこなかったため剣や槍といった武器を使う戦闘に慣れていなかったのだ。

 だからこそ、彼女は人一倍の努力をした。そのおかげでミントは、槍使いとしてギルドにおいても一目置かれるプレイヤーとなった。

 そのミントに驚くべきことが、3つ起こった。

 まず、現実での唯一心を許した親友である人物がSAOのプレイヤーになっていたことだった。

 その名前は…アスナ。
 【The Savior】ともう一つの最強格のギルド【KoB】の副団長である

 アスナは、元々兄が当選し、その兄が出張するということで貸してもらったのだった。そして運悪くこのデスゲームに参加することになってしまったのだった。

 ミントは、ギルドで何かするとき以外はアスナとともに行動することが多い。例外は、LV上げの時だけだろう。

 次に、アイズの失踪だった。あの事件は、本当に意味が分からなかった。

 本当に急にだったのだ。

 それは、50層目の時。急に消えた。

 あの層のボスは、最悪なほど強く、攻略組の中からもかなりの人がやられた。

 あの時、ミントはボス相手にかなり手ひどくやれてしまい、転移アイテムを使い戦線から引いた。あの時彼女があの場に残っていたら……彼女は間違いなく死んでいただろう。あの時彼女にはわかっていた。アイズがなぜあんなことを言っていたのかを……そして最後のアイズの頼みを聞き入れた。

 そしてその50層攻略完了とともにアイズが消えた。

 消えたというのは、死んだという意味ではない。〈黒鉄宮〉に行き確認したが、線は引かれていなかった。

 そして最後の一つ、それは……
 そのことがあった次の日に新たなスキルがあらわれたのだ。その名も【弓術】。

 SAOにおいて初めての弓使いが誕生したのだった。


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