小説『ソードアート・オンライン〜幻の両剣使い〜』
作者:定泰麒()

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【The Savior】 歌う情報屋 【鬼目】

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 【The Savior】には、いわゆる情報屋と呼ばれるプレイヤーが存在している。
 彼の名前は…ユウ。

 彼の特徴は4つある。

 彼の特徴として第一に挙げられるのが、その独特の戦闘スタイルだ。腰には、片手用直剣を装備しているのだが、片手用直剣だけを使うのではなく、両手用直剣や短剣という武器を使い分ける。それにより臨機応変に様々なところで活躍することができるというスタイルだ。

 このスタイルは、SAOを探してもそうはいないだろう。というのも普通こんなことをすると自殺行為みたいなモノだからだ。その理由は、スキルを装備する枠が足りないというまさに至極当然であり簡単な理由であろうと思う。このSAOというゲームのシステムでは、スキルはLvが上がれば装備できる枠ができる。そんな中で生活するためのスキルも取らなければならないし、戦闘に必要なスキルをとりたい、そして武器のジャンルのスキルも早く熟練度を上げたい。つまり武器ジャンルのスキルは、1つだけとるというのがSAOにおいての一般常識となっていたのだ。

 しかし、ユウにはこれができる訳があった。アイズやレミナ、シュタインといった頼れる仲間達。彼らがいたから彼は武器ジャンルの装備を3つ取るという決断をし、後は、必要最低限な戦闘スキルと情報屋として必要なスキルだけをとるということになったのだ。




 第二に神出鬼没だということだ。情報屋としては、当然なことであるがその出現場所がおかしいのである。その場所は、行く先々によって変わるがどうやら高い所が好きらしく、建物の屋根や煙突があるところでは、煙突の上にいるなどの其処にいて何がわかるの?という所に現れるのだ。まるで猫のようだと人は言う。だがユウは、どのようにしてか情報を調べ上げアイズへ報告する。




 第三に歌が好きだということだ。酒場や【The Savior】のギルドホームでは、歌っている姿をしょっちゅう見かける。腕前はプロ並みと言って過言ではないだろう。だが、彼の場合はただ歌が好きだから歌を歌うという訳ではなかった…

 彼には、一人の弟がいた。ユウ達の両親は、共働きでそのうえ二人とも会社である程度地位があるようで夜遅く帰ってくるのが当たり前だった。だからユウは、いつも弟のおもりをしていた。ユウの弟は、ユウの歌声が好きだった。毎日ユウに歌ってとせがみ、ユウは毎回それに答えていた。

 だがある日のことだった。ユウを地獄へと突き落す出来事が起こった。それは、ユウの弟が死んだのだ。それもユウの目の前で…。交通事故だった。詳細は、その事故が起きた日、母親が2人に夜ご飯を作る暇がなくユウにお金を渡しこれで夜ご飯を買って食べなさいと言って仕事に行ってしまった。ユウは、弟を1人家に残して行くわけにもいかず、一緒に近くのコンビニまで向かったのだった。

 そして手を繋いでいたのだが、弟がなにかを見つけたらしく、手を振りほどきそれに向かった。一瞬の出来事だった。弟は、それに向かって走り出し道路に飛び出した。その時、猛スピードの車がどこからか湧いたように現れ、弟に突っ込んできた。そして弟は、死んだ。

 それからだった。ユウがどこか変わったのは……

 ユウは、弟が死に嘆き悲しんだ。それも何日も。しかし、ある日それがパッと止んだ。その代わりに歌を歌いだした。まるで弟との絆を忘れないように、断ち切られないように……

 そして、最後の彼の特徴として普段は見ることができないその目だ。彼は、前髪を伸ばしているため普段は目を見ることができない。だがある特定条件の時だとその目を見ることができる。それはボスとの戦闘時と情報を特定のターゲットから得るときだ。その目を見たものは、皆一度恐怖を覚える。

 そのナイフのように尖った。赤い色をした鬼のような目を……

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