小説『ソードアート・オンライン〜幻の両剣使い〜』
作者:定泰麒()

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【The Savior】 偽りの男の娘 【稲妻】

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 ジャマダハルもしくは、カタールという武器を皆さんはご存じだろうか…

 短剣の一種なのだが元々は、北インドにて使用された武器であり、この武器の一番の特徴としては、その独特な剣の柄の部分にある。簡単に例えるとメリケンサックのような握り方なのだ。つまり拳で殴るときに刺すというな攻撃の仕方になる。

 中々に優秀な武器で、柄を握る手に力を入れやすい。短剣の中では比較的威力が高い方で、鎧を貫ける威力を持っている。

 今回、この武器の説明を入れたのは、この武器を持つ人物が今回の主役だからである。

 彼の名前は、ティル。

 ジャマダハルを主装備とした短剣使いの層攻略プレイヤーだ。彼が、ジャマダハルを振るう速度は、シュタインに負けずとも劣らないと言っても過言ではない。そのことから彼は、【稲妻】と呼ばれている。

 短剣使いの中では、非常に強力なプレイヤーである。

 だが、もちろん彼を語る上でこれだけでは収まらない。

 彼の一番の特徴として知っておかなければいけないこと。それは、彼がとてもかわいいということだ。これは、決して背が小さくてかわいいとか行動がかわいいとか言うことではない。純粋に容姿が女の子にしか見えず、さらにSAOにおいても5本の指に入るくらいかわいいのだ。

 街を歩けば、ティルと知らないプレイヤー達は、みんなが振り向くほどに……

 さらに、趣味が料理や裁縫という13歳の男の子では、珍しい趣味を持っていた。

 そんな彼は、【The Savior】においていじられキャラのようになっており、特に赤の副団長であるアンディには、毎日いじられておりよく笑いの種となっている。

 だが、そんな彼も少し前まではまるで死んでいるかのようだった…というのも、彼の年齢は13歳。とうていこのデスゲームに耐えられるような精神をしていなかった。

 最初の頃は、まだティルもこの世界に耐えて、層攻略に挑んでいた。しかし、25層目攻略の時、自分の目の前でたくさんのプレイヤーが死んで行き、それを見たことにより限界まで張りつめいた精神が一気に爆発し、危うく発狂しかけ死にかけた。

 しばらくの間は、毎日ぼーっとして虚空を見ていた。それを見た仲間たちは、彼に幾度も拒絶されながらも懸命に彼を励まし応援し、サポートをし続けた。その甲斐あってティルは、以前の自分を取り戻すことができた。

 そして、暇さえあれば趣味である料理や裁縫をし、今では料理スキルを完全習得し、裁縫のスキルを80%習得している。もちろん層攻略においても活躍している…あるユニークスキルの持ち主として。

 【双短剣】スキル

 それがティルが持っているスキルである。ここで一番最初に登場したジャマダハルがもう一度登場する。ジャマダハルは、言ってみれば数ある短剣の中でもかなり特殊な武器であり、レアな武器だ。それは、使っているプレイヤーは多くはないということにつながり、さらには使い慣れないとまったく使い物にならない。

 しかし、ジャマダハルはこの【双短剣】スキルというものを使うときに関しては、本当に使い勝手がいい。それは、ジャマダハルが体術と併用して使えるからだ。

 例えば、ジャマダハルは、斬ることではなく刺すことを主軸とした武器だ。その中で、敵に対し攻撃するときに、確実に拳を突き出す形になるだろう。この時突き出していない方の手は、完全に手持ちぶさたな状態となり、一瞬無防備になってしまう。その一瞬が戦いにおいて命取りになり、非常に危険だ。それを【双短剣】スキルが補う。いや、補うどころではない。更なる攻撃のパターンを増やすことになり、自分の実力を上げることにつながる。

 元々ジャマダハルを単体で使っていたティルは、単体のみでもある程度の実力があった。それが【双短剣】スキルを得たことによって、更なる高みへと上がった。他の短剣使いが登ってこれないほどに……




 しかし、最初は、ティルはなぜこれを自分が持つことになったのかわからなかった。それは、何の前触れもなく、ふとスキル欄を見るとあったからだ。だが一つだけ言えることがあった。これは、絶対にアイズが関わっているということ。

理由は、簡単だ……
なにせ他の仲間同様に、アイズが消えた次の日に出現したからに他なかったからだ。


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