小説『ソードアート・オンライン〜幻の両剣使い〜』
作者:定泰麒()

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【The Savior】 傍観者と介入者 【炎帝】 【水姫】

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 この世には、どうやっても科学では証明できないことや人がどう考えても理解できないことがたくさんある。僕たち兄妹に起こったこともその中の一つだ。

 僕たちは、ある日突然転生した。別に事故で死んだという訳でもない。夜寝て起きたら…知らない天井、声が出せない、体が赤ちゃんだった。まさに転生。しかも転生した先が、ソードアート・オンラインという小説の中だった。
 妹は、僕が生まれた2年後に生まれた。転生前と一緒だ。

 では、なんでソードアート・オンラインだと分かったのか…従兄妹に桐ケ谷和人・直葉がいたのだ。最初は、名前だけ一緒なのだろうと思ったが、彼らに起こったこと、やったことが原作と全て一致しここまで来たらそうとしか考えられなかった。




 そこで僕たちは、大事なことを話し合った。SAOに参加するか、しないか。僕としては、参加したくなかった。それは、当然じゃないかなと思う。だってそうだろ…僕たちは、転生モノによくある神様に会ってチートをもらってるわけじゃない、それなのにSAOをして無駄に死にたくない。

 だが、妹と来たら…SAOに参加しようというのだ。僕は、止めた。だが妹は言うことを聞いてくれない。僕には、わかっていた。妹が言いだしたら聞かないということが…だから一つ条件を出した。もしSAOのβ版に応募して当たったなら…参加しようということ条件を…



 後々、この条件を後悔することになったが…でも僕がこのことを言ってなければ、今の刺激はなかったんじゃないかなと思う。SAOを楽しんでいるという今が…



 しかし、この世界において原作と確実に違う出来事があった。それは、茅場晶彦に弟がいたということだ。いや、実際の原作にもいたのかもしれないが、ここまで有名な弟なら原作に名前が出てきていても不思議ではないだろう。

 弟の名前は、茅場康彦という名前だ。18歳という若さながら、研究者としても会社の社長としても超一流で、世界から注目を受けていた。それにナーブギアの基礎設計を茅場晶彦とともに行ったという話がある。まさに天才。その上徹底的なマスメディア嫌いなのか決して公には、出てこなかった。

 僕は、妹にある仮説を聞かせた。すると妹も私もそうじゃないかと思っていた。と僕と同意見だった。茅場康彦が転生者なのではないかという仮説。さらにもしかしたらチートをもらっているのではないかというのも同意見だった。

 では、どうしたらいいのか…答えは、簡単だった。茅場康彦が転生者ならSAOのβ版に出てくるんじゃないの、だって転生者ならSAOのβ版は、安全だとわかっているのだから。という妹の一言。まさにその通りだった。




 そして、SAOのβ版に運よく当選し、しかも兄妹両方とも。さらに運よくSAOのβ版で運よく茅場康彦に出会えたのだ…

 僕は、この時には理解していた。これが全て運がいいということではなく、必然であり運命だったということに。

 

 茅場康彦またの名をアイズと出会ったのは、第7層攻略終了後のことだった。その時は、僕たちからではなく向こうから話しかけてきたのだ…

 僕たちは、SAOのβ版で少々活躍していた。ちょうどその第7層目攻略の時は、兄妹同時にボスにラストアタックしたし、それに第4層目では、超難関と言われた2人用クエストを初めてクリアしたりもしていた。

 だからこそ、アイズは話しかけてきたんだろう。噂では、アイズは強いと言われているプレイヤーに話しかけまくっているという話なのだ。

 この時、僕たちは、アイズ=茅場康彦ではないかと考えていた。それは、アイズが活躍しすぎていたからだ。たとえアイズが原作にいたとしたらどうだろう、SAOのβ版の成績を見る限り最後まで生き残った確率も高いし、大いに物語に関わっていたに違いない。しかし一切彼は、出てこなかった。もしいたとしたらヒースクリフ同様最強の存在として扱われていただろう。このことから僕たちは、アイズ=茅場康彦と考えた。

 それだけじゃ、アイズ=茅場康彦とわからないじゃないかという意見もあるだろう。しかし、仮にそうじゃなくてもよかった。アイズは、転生者というのは、ほぼ間違いないと思っていたし、転生者ならば誰でもよかった。

 今になって思うと、なんて僕たちは、あやふやな考えを持っていたんだろうと思うが、今さらそんなことはどうでもいい話だ。



 「ねぇ、君たち。俺と話をしないか?」とアイズは、僕たちに話しかけてきた。

 僕たちは、緊張した。いや、緊張どころではない。もうなんといえばいいのかわからない…もはや恐怖さえ感じていた。

 今まで、僕たちからアイズに話しかける機会は、何回もあった。でも話しかけることができなかった。それこそまだ仮説でしかないこの話が合っているという確証もなかったし、いざ話しかけようとすると腰が引けてしまっていたからだ。
 
 そんな人物が、僕たちに話掛けてきた。これは、チャンスだった。今聞かないともう聞けないかもしれない。僕は、なんとか口を開け言葉を発した。

 「いいですよ…でもその前に聞きたいことがあります。あなたは、転生者ですか?茅場康彦さん?」

 僕は、ついに言ってしまったという思いとなんてことを言ってしまったんだという思いでいっぱいだった。そして帰ってきた答えとは…この時のことは、一生忘れないだろう。普通の人間なら、こんなことを言われてどう反応するだろうか。きっと人それぞれ反応は違うだろうが。きっとアイズみたいな反応をするやつはいないだろう。顔が変わらずただ冷静に返事をして、さらにこちらの秘密を言い当てるという芸当はアイズにしかできないに違いない。



 「ああ、そうだよ。よく現実の名前までわかったね…でも転生者は、俺だけじゃない君たちもだろ…だからこそ俺は、君たちに話しかけたんだ」

 その言葉を聞いた僕たちの顔は、どんなふうだっただろう…きっと笑えるほどに滑稽な顔になっていたに違いない。その顔を見てアイズは、笑ったのだから。
 
 「なぜ?」

 妹が、声を絞り出すように尋ねた。するとアイズは、微笑みながら

 「なぜ俺が、君たちが転生者だと分かったか。答えは簡単、普通のプレイヤーと違うことを君たちが行っていたからだよ。最初の街で君たちは、自分たちが行ったことを覚えているかい?」

 その言葉で僕は、気づいた。妹の方を見るとどうやら気づいたようだった。

 「思い出したみたいだね。そう君たちは、普通のプレイヤーが知っていない情報をわかっていたから、ログインした瞬間に走り出して、裏通りにある武器屋に向かい武器を買った。そしてそのあと、レベルを上げながら〈ホルンカ〉に向かったんだよね。≪森の秘薬≫クエを受けるために。俺には、それが見えたんだよ。偶然だったけどね」

 そう、僕たちは、ミスを犯していた。行動が早すぎていたのだ。もしSAOのβ版に僕たちの他に転生者がいたならば僕たちは、あそこで早急にあんなことをせずに武器屋や〈ホルンカ〉で待っておけばわかっていたはずだったんだ。目の前の人物が転生者だということに…

 

 「そして君たち…もしよかったら俺の仲間になって欲しいんだ。仲間になってくれないか?」

 急に何を言い出すんだこいつは、仮に同じ転生者でもすぐに信頼できる訳ないじゃないか。と俺は、思った。しかし、またもや僕の妹は違っていた。ただ「はい」と即答したのだ。僕はそれを聞いて即座に妹に駄目だといった。

 「お兄ちゃん。わかってないな…この人は、茅場晶彦の弟なんだよ。さらに転生者…そしてナーヴギアの設計に携わってる。そして天才。このことから考えられるのは、SAOにおいて何らかの手を打ってるということじゃないかな。そして、私たちをそれに関われせてくれようとしている。これは、はいというしかできないでしょ。せっかく転生したんだから思う存分私は、やりたいの!」

 僕は、妹に初めて狂気を感じた。妹のこんな一面を初めて見たような気がする。そんなとき、再びアイズの口が開いた。

 「妹さんの言うとおりだよ。俺は、ナーブギアの設計に携わった時にデスゲームにならないように細工を施した…きっと大丈夫だろう。でも俺は、心配なんだ…茅場晶彦こそ天才の中の天才だからね。だからこそ、君たちに協力して欲しい。仮にSAOがデスゲーム化したとしても君たちは、大丈夫だろう。なぜかは、言えないが…俺には君たちが絶対に死なないというだけの自信がある。だからこの通りだ。頼む仲間になって欲しい」

 そう言って、アイズは僕たちに頭を下げた。僕は、当然僕たちが死なないという根拠を知りたかった。だが聞いてはいけない気がしたんだ。そして…僕たちはアイズの仲間になった。







 時は流れて、49層目…アイズから事前に伝えられた作戦を僕たち兄妹が行動を実際に起こす時が来た。50層目攻略後このSAOは、その姿を変える。その時だ、僕たち兄妹が動き出すのは…

 ここまで来るのは、本当にきつく大変だった。しかしあともう少しでその努力が報われる。

 僕のプレイヤー名は…レオ
僕に与えられた役割は、傍観者。二つ名は、【炎帝】

 妹のプレイヤー名は…ディーネ
妹に与えられた役割は、介入者。二つ名は、【水姫】

 【The Savior】の一員であり、キリトの従兄妹であり、このSAOにとって革命を起こす英雄たちの中の1人なのである。

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