小説『ソードアート・オンライン〜幻の両剣使い〜』
作者:定泰麒()

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SAO開始〜開始前〜

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 2か月間のβテストも終わり、SAOにおいてやるべきことの準備は、全て終わったと言ってもいいだろう。

 あとβテストをするなかで、キリトに会うことができた。βテスターのなかでもトッププレイヤーだったと言っておこう。

 俺は、層攻略に出向いてきたキリトに話しかけ、仲間には、誘わなかったがフレンドになることはできた。

 そのためβテストにおいて何回か二人でクエに行ったりした。まぁキリトと友好を図っていても損は、ないだろうと思ったからだ。

 今日は、2022年11月6日、日曜日。

 今日からSAOが正式に運営されることになる






 そんな中で問題が発生した。今日の朝のことだった。急に兄から電話がかかってきたのだ。なんでも今から会わないかとのことで、あっちは忙しくないのかなと思いながら、俺たち兄弟が2人で会うためによく行った、個室のあるカフェに向かった。

 俺が行くと既に兄さんは、来ていて店員にこちらですと一番奥にある個室に案内された。

 「康彦、時間通りだね」

 「まぁね。早速だけどなんで俺を呼んだの?今日からSAOが始まるのにこんなところに居ていいの?」
 
 「あぁ、もう私がやることは、ほとんど残っていない」

 「そうなんだ」

 そういって少々談笑が続いた。話が途切れた所で俺は本題に戻した。

 「で俺に話ってなんなの?」

 「そのことなんだがな・・・康彦お前気づいてるだろ」

 と言って元々目が細いのにさらに目を細めて俺を睨む

 「なんのこと・・・」
 
 俺は、得意のポーカーフェイスで焦る心をごまかした。

 この目を兄がした時は、俺のやろうとしていることに感づいている時なのだ。

 「そんな、ごまかさなくていいさ。SAOのことだよ」

 「そう、じゃあ単刀直入に言うよ。SAOをデスゲームにするのかい?」
 
 俺は、観念し直接聞いた

 「そうか、やはりばれていたか・・・お前はそれを聞いて何がしたいんだ」

 「質問を質問で返さないでほしいな・・・でも質問には、答えるよ・・・止める」

 兄さんは、それを聞くと笑った。

 「止めるか。そうか・・・だがそれは、無理だ」

 「えっ・・・意味が分からない。そんなことは、無理なはずだ」

 俺は、焦りと驚きによって発言した。

 「確かに俺が考えていた手段では、無理になった・・・お前のおかげでな。さらに言うとお前は、ナーヴギアを作る時点で俺が何をしようとしているかわかっていただろう。だから、バッテリのいらない設計にして、セーフティ機構やセキュリティシステムの強度を上げた。違うか」

 兄さんは、実に冷ややかな声で俺に告げた。俺は、この時点で全てを理解した。

 「兄さんは、わかっていたうえで俺を泳がせていたんだね」

 「そうだ。お前は、実によくやってくれたと思っている」

 そう兄さんは最初から、俺がやろうとしていたことを見抜いていたんだ。だからこそ、兄さんには何らかの思いがあったから俺がやることを見逃していたんだ。

 「でもどうやって兄さんは、デスゲームにするつもりなんだい。今の設計では脳を焼切ることは不可能でしょ」

 ここで俺は、当然の質問を投げかけた。

 「人は、脳を焼切らなくとも死ぬさ」

 そういうと兄は、不敵に笑った。

 「でもそれを、今俺に話してよかったの?俺がどうにかして食い止めるかもよ」

 「それができるなら、私の弟は、神だな」

 とまた笑う。

 そしてその流れでまだ話す。

 「今何時かわかってるか?SAO開始まであと15分だ」

 俺は、時計を見る。ここに来たのが12時だったから、かれこれ45分も喋っていたということだ。

 俺は、手の打ちようがなかった。今俺がなにかしらしたとしても、ゲームは既に始まっているだろう。

 まだログインしていない人は、救えるかもしれない。だが俺がここで何かやったとしても最低でも1時間はかかる。

 俺は、甘かった。

 油断していたんだ。

 俺は、完成したナーヴギアを見て、これでデスゲームは、起こらないとどこか慢心していた。

 そして実際はどうだろう。兄は、いろいろと仕組んでいたに違いない。

 しかし、その考えの中で一つ疑問が湧いた。

 「なんでそれを俺に教えたの兄さん。俺がゲームに参加しないかもよ」

 そう、兄さんは俺を何らかの目的で動かしていた。それは、SAOにおいて俺に何かしてほしかったに違いない。だからこそのこの質問だ。

 「そうだな……なんでだろうな。言うなれば肉親の情というやつかもしれない……おととし、両親が交通事故で死んで俺の家族はお前だけだ……そんなお前が死ぬのを見たくなかったのかもな」

 言っていなかったが俺たちの両親は、おととし交通事故でアメリカにて亡くなっている。とても素晴らしい親だった。俺や兄さんにかなりの愛情を注いでくれたほんとにいい親だった。

 それと同時に兄さんからそんな言葉を聞くなんて思いもしなかった。原作において約6000人を殺した人のセリフとは……

 「なるほど・・・でもね兄さんせっかくで悪いけど・・・SAOに参加させてもらうよ。デスゲームになったときのために対策はいっぱいしてるんだ」

 「そうか、お前ならそういうと思ってたよ・・・しょうがない参加を認めよう。だがお前には、層攻略の旗印になってもらわないといけない。だから下手なところで死ぬなよ。あとお前にはプレゼントを用意しておく
喜んでくれるといいが・・・」

 そういって悲しそうに笑った。

 俺には、この人が今から歴史上稀に見る最初で最後の大犯罪をするとは、思えなかった





 そのあとすぐ俺は、家に帰り、俺が専属に雇っている看護師に俺の世話を頼むと言って、ナーヴギアをはめた。

 この看護師は、昔から雇っていて、それこそ俺が、1週間以上フルダイブしていた時も世話をしてもらっていたから、いつものことだと思ったのだろう。すんなりと了承してくれた。信頼の置ける人だから、決して俺を見捨てたりはしないだろう。

 今現在の時刻は、1時ちょうど。

 見事にSAOが始まる時刻だ。

 俺は、デスゲームを防げなかった罪悪感とともにどこからか湧き上がる恐怖。それをいだきながらもいろいろと今後のプランを練る。

 そして俺は、SAOを起動した。






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