小説『ソードアート・オンライン〜幻の両剣使い〜』
作者:定泰麒()

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SAO開始〜はじまり〜

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 俺は、アバターをβ版同様の見た目に設定し、SAOの〈はじまりの町〉に降り立った。兄さんからのデスゲーム化を聞き、まず何をしたらいいのかを考えたプランを実行する。

 まず第一に、降り立ったらすぐに裏通りの安い武器屋に行き片手用直剣を買う。そして〈ホルンカ〉に向けて出発し≪森の秘薬≫クエを受け、≪リトルネペントの胚珠≫を入手し”アニールブレード”を手に入れる。

 そうβ版での行動と一緒だ。

 だが、2つこれと違ってくる。まず最初に武器屋に行ったときに、キリトとクラインに会う可能性が高い。
それと仲間に誘ったメンバーを〈ホルンカ〉に呼び出す。この2つだ。

 1つ目は、原作で書いてあったからで、きっとここでキリトとクラインが会うことは、変わらないだろう。

 2つ目は、もう既に実行してある。俺がSAOにログインした時には、仲間は全員ログインしていたのを確認した。

 俺は、裏通りに行きながらも慣れた手つきで[メインメニュー・ウィンドウ]を開け、仲間たちにメッセージを放った。

 武器屋に着くまでに、みんなから返信があり、わかったや了解等のメッセージが帰ってきた。






 武器屋には、やはりと言っていいのだろうか、キリトとクラインがそこには居た。

 「ここが武器屋だ」

 「なるほどな。じゃあ俺はこの海賊刀(カトラス)を買うぜ」

 「へぇー曲刀ね。俺は、この片手用直剣(ワンハンドソード)の”スモールソード”を買おう片手剣使いだし。β版から」

 「てことは、あのキリトでいいのかな?」俺からの突然の声に少々驚きながらも、俺の顔を見た。俺の顔は、β版と一緒だ。だからこそすぐにキリトは、気づいたようだ。

 「その顔に、その声・・・お前はアイズか?」

 「ああそうだ。お前は、あのキリトでいいんだな」

 「ああ。久しぶりだな・・・【風神】」

 「やめてくれ。その二つ名は、あまり好きじゃないんだ」

 と俺は、苦笑い。

 その会話を聞いていたクラインは驚いた顔をして俺に話しかけてきた。

 「お前があの【風神】か・・・俺の名前は、クラインだよろしくな」

 と言って握手を求めてきた。

 「あのかどうかは知らないけど・・・アイズだよろしく」

 俺は、握手に応じた。

 なぜクラインが俺のことを知っていたのか。それは、考えてみればすごく簡単だろうと思う。

 俺は、前にも言ったと思うがβ版においてエース中のエースになっていた。どのプレイヤーが一番最強かと質問されたらまず俺の名前が出てきた。それほどのことをやっていたし、それにSAOの正式版において名前を憶えられていることは、俺にとって目標のうちの一つだった。

 まあなぜかは、後々わかることだと思う。

 SAOは、良くも悪くもかなり世間に注目されていた。その中で当然SAOのβ版も注目されない訳がなかった。

 β版をプレイしている人達の中で日記を書いている人が俺のことを書いていたり、それこそ、どこかの掲示板にてβ版をプレイしている人が書き込んだりと。

 俺のことが、ネット上で噂になるのも時間がかからなかった。

 俺のことについて様々な憶測が飛び交い、中には、俺に成りすますやつが出てきたりした。
 
 このSAOの正式版をプレイしている人のほとんどは、コアなゲーマーばかりだ。そんな奴らが俺のことを知らないはずもなく、そして今に至るという訳だ。

 「にしてもキリト、お前は風神と知り合いなのか?」

 「まぁな。というかβテスターでこいつと知り合いじゃないやつのほうがおかしい」

 「はっ?なんでだ?」

 「それは……こいつは、β版に参加してた時にすべてのプレイヤーに話しかけてたんだよ理由のほうはしらないけど……」

 そういってキリトは、俺を見てきた。

 「理由は、ただ単にβ版テスター同志で仲良くなろうと思っただけだよ。β版テスターは、ほぼ必然的にこの正式版をプレイすることになるからね。仲良くなっていて損はないさ」

 「なるほどな」

 クラインは、うなづいた。

 俺は、クラインに話しかける。

 「クラインお前は、かなり運がいいな。初日にキリトに会うなんて……しかもレクチャーしてもらってるんだろ」

 「どういうことだ? それになんでレクチャーしてもらってるなんて知ってるんだ?」

 「うーんなんて言ったらいいのかな。まずキリトはβ版テスターの中でもエースの一人だったし、俺もキリトに関しては、かなり一目を置いている。レクチャーに関しては、俺が最初に聞いたお前らの会話が「ここが武器屋だ」ってキリトが言ったところだったからな。運がいいなと言ったのは、俺のイメージからするとキリトは人見知りするタイプだったから……人にレクチャーなんかするやつじゃないし、β版の時なんか知り合いはいても、フレンドは俺だけだったからとでも言えばいいのかな」

「そうか。なら俺は運がいいみたいだ。というかキリトよ、あの【風神】に一目置かれるってすごいな」

「やめてくれよ。俺はただゲームがうまいだけのやつだ」

「ゲームがうまいとこは、認めるんだな」

 俺は、キリトの発言に笑い出す。

 それにつられクラインも笑い、キリトのほうは、ちょっとふくれっ面だ

 「やめろって、ほんとに」

 キリトは少々怒っているようだ。

 なので俺は、謝り、クラインも俺に続き謝った。キリトは、もうこれ以上レクチャーしないとかいっていたがクラインがその言葉を聞き土下座をしなんとか許してくれた。

 まぁ本気でキリトは怒ってはいなかったと思うが……

 ここで俺は、用事があるからと言って、俺のほうから2人にフレンドにならないかと持ちかけると、2人とも同意してくれた。そしてフレンド登録も終わり、武器を買うと〈ホルンカ〉に向け走りだした。





 道中で≪フレンジーボア≫に何回か遭遇したものの、全ての戦闘をノーダメージで終わらせ、〈ホルンカ〉にたどり着いた。

 約束の場所には、仲間が全員集まっていて、俺が来るのを待っていた。




Sideキリト

 「なぁキリト、β版で【風神】とどうやってフレンドになったんだ?あいつの話じゃ、お前のフレンドはアイズだけって言ってたじゃねえか」

 そういって俺に話かけてくる人物・・・クラインは、俺がこの〈はじまりの町〉に降り立ってすぐに、β版テスターなら誰もが知ってる裏通りの安い武器屋に行こうと走っていた最中に話しかけてきたやつだ。俺にレクチャーしてくれとこいつの頼み方があまりにも図々しくて、つい受けてしまった。そしてとりあえず武器屋に行こうと思っていたし、武器がないとなにも始まらないので、最初に武器屋に行った

 そこで、アイズと久しぶりに再会した

 最初に話しかけられたときは、まだ初期段階で(索敵スキル)もつけておらず、急にはなしかけられたため驚いてしまった。

 「その顔に、その声・・・お前はアイズか?」

 「ああそうだ。お前は、あのキリトでいいんだな」

 「ああ。久しぶりだな・・・【風神】」

 「やめてくれ。その二つ名は、あまり好きじゃないんだ」

 と奴は苦笑いをしている。

 俺は、アイズが【風神】と呼ばれることが好きではないのを知っていたが、驚かされた仕返しに【風神】と呼んでやったのだ。

 やはりクラインは、【風神】という名を知っていたようでアイズに握手を求めた。アイズは、はにかみながらも握手を仕返す。

 「にしてもキリト、お前は風神と知り合いなのか?」

 クラインは、俺がアイズとなぜ知り合いなのか気になったようだ。

 「まぁな。というかβテスターでこいつと知り合いじゃないやつのほうがおかしい」

 「はっ?なんでだ?」

 「それは・・・こいつは、β版に参加してた時にすべてのプレイヤーに話しかけてたんだよ。理由のほうはしらないけど・・・」

 そう俺にもアイズがなんでβ版テスターに話しかけていたかわからなかった。というか、その行動に興味がわかなかったこともあり、本人に理由を聞いたこともなかった。

 「理由は、ただ単にβ版テスター同志で仲良くなろうと思っただけだよ。β版テスターは、ほぼ必然的にこの正式版をプレイすることになるからね。仲良くなっていて損はないさ」

 理由はどうやら至極当然のことであった。β版テスターの知識や経験は、このSAOというゲームにおいてかなり特別なものだ。だからアイズの考えも間違っていないと思った。

 奴の場合は、自身の知名度からあっちのほうから寄って来たことのほうが多かった。しかし、アイズはそれを決して邪険に扱わず、対応もよかったので、β版においてアイズを嫌っている奴は、ほとんどいなかったと思う。

 俺の時は……ここで話を戻そう。

「えっと確かあの時は……」

 そういって俺は、クラインに説明を始めた。

 俺がアイズと初めて話したのは、8層目の攻略の時だった。そのとき既にアイズは、β版テスターとネット界では有名になっていた、

 というのも桁はずれの実力に、片手用直剣の使い手なのにも関わらず、速さを追求し、盾を装備しない、装備も軽い物のみといったスタイルが話題を呼び、層攻略において常に先頭に立ち続け、2か月間のβ版において、一度も死んだことがないのは、アイズだけだった。

 この死ななかったということは、かなりすごい。どのβ版テスターの奴も始まって1週間のあいだで最低でも10回は死んでいたからだ。俺はといえば2か月間で100回は死んだ。






 俺も層攻略には挑戦していた。そして8層目の時にアイズのほうから話しかけてきた。

 俺がちょうどその時アイズの近くにいたからだろうか。

「君がキリト君だね。よろしく」

 俺は、驚いた。あの【風神】に名前を憶えられてるとは、思わなかったからだ。

 「なんで俺の名前を?」

 俺は、驚きながらも質問していた。

 「知ってるさ。キリト君は何回も層攻略に参加してくるし、俺は、偶然君が敵と戦っているところを見たけど凄まじいものがあったからね」

 「【風神】にそんなことを言ってもらえるとは、光栄だな」

 するとアイズは苦笑いしながら

 「俺は、あんまりその二つ名好きじゃないんだ・・・アイズでいいよ」

 「わかった。じゃあ俺もキリトでいい。よろしく」

 「ああ。よろしくね」

 それが俺とアイズとのファーストコンタクトだった。





 そして8層目の攻略も終わり、俺がゲーム内の家に帰ろうとしていた時だった。

 「待ってくれ。キリト」

 と後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。俺は後ろを振り向くとそこには、アイズがいた。

 「キリト。俺とフレンドにならないか?」

 「ああ。いいけど」

 「そうか、よかった。じゃあ今度一緒にクエストでも行こう」

 といってアイズは、俺とフレンドになった。

 そしてそのフレンドになった次の日にクエストに無理やり参加させられた。 





 クラインに説明が終わり

 「【風神】ていいやつなんだな」

 と一言の感想でけりがつき、もうちょっとなにか言ってもよかったんじゃないかと思った。





 そして、それから様々な所に行った。最後に戦闘のレクチャーをすることになり、俺とクラインは、近くの草原へ移動し、≪フレンジ&#8212;ボア≫を相手にクラインのレクチャーを始めた。




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