小説『FAIRY TAIL 〜転生者は『人間台風』となり〜』
作者:()

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第0001話

『ヴァッシュ・ザ・スタンピード』





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



〜Side in…???



 ここはフィオーレ王国の東方に位置する街、マグノリア。人口6万人の古くから魔法も盛んな商業都市。そして、妖精の尻尾の本拠地でもある。そんな妖精の尻尾のギルド内では、いつも通りの賑やかで騒がしく、楽しそうな声が外まで聞こえていた。

 その騒がしい声を背に聞きながら小さな老人と、年の割には老けて見える男が、仲良く妖精の尻尾に設置してあるカウンター席で真昼間から酒を飲みながら話し合っている。



???
「ギルドは相変わらず騒がしいが、マグノリアは今日も平和でいいのぉ……じゃが平和だけでは面白くない。何か刺激的な事でも起こらんかのぉ……。」

???
「刺激的な事ねぇ……じゃあ、オレが依頼板の仕事先で問題でも起こして評議院から目を付けられる……どうだ? 随分と刺激的じゃねぇか?」

???
「馬鹿者。評議院の連中は、お主の魔法が原因で、仕事先に着くまでの建物を壊している事で既に目を付けておる。じゃが……前回の倍以上の始末書を書きたいんじゃったらワシは構わんぞギルダーツ。」

ギルダーツ
「ハ……ハハハ……。」



 妖精の尻尾のギルドマスターである?マカロフ・ドレアー?の一言に、大量の汗を流しながら苦笑いをする妖精の尻尾最強の男である?ギルダーツ・クライヴ?。妖精の尻尾最強の男と言われていようが、評議院からの始末書には頭が上がらない様だ。



ギルダーツ
「始末書か……前回の倍だけは勘弁して欲しいな。」

マカロフ
「当たり前じゃ!! ワシも一緒に書くのに手伝わさせるんじゃから勘弁して欲しいわ。」



 2人はその話題が終わると同時に、グラスの中に残っていた酒を一気に飲み干し深い溜め息をついた。



ギルダーツ
「確かにマスターの言う通り、刺激的な事が最近ないな。何か面白い事でも降って来ねぇかな……。」

マカロフ
「それなら仕事をしろ仕事を。二階の依頼板にはS級が2枚だけ残ってた筈じゃ……暇潰しにでも行って来い。」

ギルダーツ
「う〜ん……そうするかな。」



 ギルダーツは足元に置いてあった荷物を肩に担ぎ、二階の依頼板に貼ってあった&quot;簡単な仕事&quot;の内容の紙を剥がして丸め、二階からマカロフに投げ渡した。

 マカロフはカウンター席の裏側に置いてある妖精の尻尾オリジナルの判子を押し、二階から降りて来たギルダーツにマカロフもまた投げて渡した。



ギルダーツ
「そんじゃ、行って来る。」

マカロフ
「ちゃんと依頼先の相手に渡すんじゃぞ。お前は行くまでに紙を落とすからな。」

ギルダーツ
「あぁ……覚えてたら気を付けるよ。」



 ギルダーツがマカロフに背を向けながら手を降り、妖精の尻尾から出て仕事に行った。妖精の尻尾の玄関から出ると同時に、ギルダーツは妙な胸騒ぎがした。その為、ギルダーツは突然立ち止まり空を見上げた。



ギルダーツ
「……何か面白い事でも降って来るのか?」



 暫くの間ギルダーツは空を見上げて辺りを見回したが、特に異変は無く雲一つ無い晴天だった。



???
「ギルダーツ……また仕事?」

ギルダーツ
「ん? まぁな。今回の依頼は簡単だから直ぐに帰って来れる筈だ。ちゃんと土産も買って来てやるから、心配しなくて大丈夫だぞカナ。」

カナ
「う、うん……ありがと。」



 ギルダーツに話し掛けた少女の名前は?カナ・アルベローナ?。彼女は妖精の尻尾の中でも最年少で加入した事で、ギルド内では少し有名になっている。ギルダーツはカナを自分の娘の様に頭を撫で回しながら話すが、それでもカナは顔を少し曇らせている。だが同時に、その表情は嬉しそうな顔にも見える。ギルダーツの位置からは丁度カナの表情は見えない為、その事には気付いていない。



ギルダーツ
「そんじぁ行って来る。俺が帰って来るまでは元気で待ってろよ。」

カナ
「あっ……うん。」



 ギルダーツがカナの頭から手を離して手を降りながらギルドから出て行くと、カナはギルダーツに何かを言いたそうな顔をしてギルドの扉の前で見送った。



カナ
「……また……言えなかった。」



 そんなカナの気持ちを知らずに、ギルダーツは目の前の光景に目を疑った。



ギルダーツ
「人が……落ちて来てる……?」



〜Side out…ギルダーツ





〜Side in…???



 ギルダーツが妖精の尻尾から出て行く、数分前の『FAIRY TAIL』の世界へ転生した男?ヴァッシュ・ザ・スタンピード?が雲よりも高く上空で、黒い棺桶の様な物の中に入って空中で静止していた。



ヴァッシュ
「何も見えないけど……少し動けるな。」



 ヴァッシュが入っている黒い棺桶から外を見る事は出来無いが、その位置には豆電球の様な小さな明かりが付いている。少し窮屈だが身体を無理矢理動かし顔を回すと、顔の近くに貼ってある紙を見つけた。



ヴァッシュ
「コレは神様からの手紙……なのかな……?」



 ヴァッシュは体制を直し、神様が書いた手紙の内容に目を通した。



ヴァッシュ
「書いてある内容は……渡した能力について簡単な補足説明……か。」



 1.基本的に【宝具】には『めだかボックス』のスキルは一部だけ使えません。例えば【宝具】の形や質量を変える様なスキルです。



ヴァッシュ
「成る程。確かに宝具の形が変わっちゃうのは変だもんね。」



 2.【プラント能力】の『A・ARM』で「銃」の時に放出する威力や「刃」の時に切断する大きさは思いのままに出来ますが、無闇矢鱈に使うのは危険です。時と場を考えて使いましょう。



ヴァッシュ
「ですよね。」



 3.【宝具】は名前を呼ぶか、心の中で念じれば使用する事が出来ます。



ヴァッシュ
「あら簡単。」



 4.【所持スキル】は基本的に自動で発動しますが、任意でも発動します。



ヴァッシュ
「それは便利だな〜。」



 5.転生先は『FAIRY TAIL』の世界の何処かの山に落とします。



ヴァッシュ
「いや、何処かの山って……随分とアバウトだな。もう少し分かりやすい場所に落としてくれると助かるのに……落とす?」



 ヴァッシュの口から出た『落とす』に反応したのか黒い棺桶は、機械が動き出す様な音を鳴らし始めた。するとヴァッシュの入っていた棺桶の足場が開き、地上から数キロ上空の場所から落ちそうになった。だがヴァッシュは、咄嗟に手を伸ばした先にあったレバーを掴んだので、落ちる事はなく膝から下が外に出ている状態だった。



ヴァッシュ
「ふぅ〜助かった……まさか足場が無くなるとは考えてなかったよ。内側に掴む所があってよかったぁ〜。」



 ヴァッシュは自分の掴んでるレバーに目をやると、その少し下に黄色と黒色で書かれた注意書きが貼ってある事に気が付いた。所々の文字は暗くて良く見えなかったが、部分部分の言葉を読み取る事が出来た。



ヴァッシュ
「暗くて良く見えないけど……『作動すると自爆します』………『もし作動してしまったら死ぬ気で逃げて』……えっ?」



 ヴァッシュがレバーを引いて数十秒が経ったと同時に、黒い棺桶の天井に備え付けてあったモニターに『30秒』と表示され、次第に数が減って爆発のカウントダウンが始まった。



ヴァッシュ
「ちょっ!!? クソッ!!」



 ヴァッシュは爆死するのを恐れ、直ぐにレバーから手を離し黒い棺桶から飛び降りると、レバーは元の位置に戻り天井のモニターに映し出されていた残り時間『18秒』の文字は消えた。だが、ヴァッシュはその場から数センチ程しか離れる事が出来なかった。



ヴァッシュ
「……へっ?」



 レバーを離した筈の右手が、何かに引っ張られている様な感じがしたヴァッシュは目線を上に向けると、レバーよりも下の所から鎖が伸びてヴァッシュの右手首を繋いでいた。



ヴァッシュ
「何で僕の手首に鎖が……て言うか、何時の間に繋がれたんだ? 全く気付かなかったよ……仕方ない、壊して外すか。」



 ヴァッシュが鎖を壊して外そうと左手首からマシンガン型の隠し銃を出し鎖に撃ち込み始めると、黒い棺桶は潰される様な軋む音を出しながら一片が数センチの黒い正方形の箱へと形を変えていった。だが、ヴァッシュは鎖をマシンガン型の隠し銃で撃ち壊している最中だったので、その連射している騒音でその事に気付く事が出来なかった。

 鎖は数秒で壊れヴァッシュの右手首から外れた。そしてヴァッシュは、黒い棺桶が黒い箱へ形が変わっている事にワンテンポ遅れて気づいた。ヴァッシュが落ちても尚、黒い箱はその場から動かず空中で浮かんでいた。だが突如、無数の亀裂が走りその隙間から光が溢れ大爆発を起こした。



ヴァッシュ
「何でーーーッ!!!?」



 ヴァッシュは黒い箱の爆風に巻き込まれ為、下方向にではなく斜め下方向に加速しながら落下して行った。そしてヴァッシュの落下先には、神様の手紙に書いてあった通りの山があった為、ヴァッシュがそのままの勢いで山へと飛んで行くと、頭から地面に刺さり怪我をする予定だ。



ヴァッシュ
「ンギャーーーッ!! と言っておきながら、余裕の翼を粉砕(フェザーコンプレックス)!!!」



 だがヴァッシュは、自分の持っているスキルを使い背中から5m以上の白い翼を出し、地面にぶつかる寸前で停止が出来た。なので体制を立て直しキチンと足から着地する事が出来た。



ヴァッシュ
「あ〜怖かった。誰も見てなきゃいいけど……誰か近づいて来た。一応……隠れようかな。」



 ヴァッシュ安心して地面に座っていると、遠くの方から段々と足音が近づいて来るのに気付いた。その為ヴァッシュは咄嗟に近くの木に登り、気配を消して自分に近づいて来る人物が誰なのかを確認した。



ギルダーツ
「確かこの辺りに落ちた筈なんだけど……そう簡単に見つからねぇか。」



 そこに現れたのは妖精の尻尾最強の男ギルダーツだった。あの後ギルダーツは、赤い物体(ヴァッシュ)が山へ落ちて行くのをギルドの玄関から見ていた。興奮したギルダーツは、妖精の尻尾のギルド内に暇そうな人と一緒に探しに行こうとしたのだが生憎、声を掛けた全員が声を揃えて「予定が空いてない。」と言って断られたのだ。

 そしてギルダーツは不貞腐れながらも、赤い物体を一人で見つけに行く事を決めた。ギルドの扉を蹴破り外へ出ると、ギルダーツは大体の落下位置を予想しながら山を駆け上り、今この場にいる。



ギルダーツ
「やっぱり気のせいだったのか……? あんな遠い場所からでも、はっきりと見えたんだけどなぁ……。」



 ギルダーツは木の根元に座り込み、首をひねって考え始めた。



ヴァッシュ
「(あの人って……妖精の尻尾で最強の男って言われてるギルダーツ……だよね? 何で居るの?)」



 ヴァッシュも木の上で同じ様に座り込み考え始めたが、そんな流暢な事をしている場合ではなかった。二人が座っている木から左右3m程の場所に、武装している複数の人が近づいて来ているのをヴァッシュとギルダーツは、既に気づいていた。

 だが二人は彼等に気づいていたのだが、敢えてその場から動かずじっとして座っているのには理由があった。それは敵には自分達の存在がまだ気づかれていないと思せ、少しでも油断させる事が目的だからだ。だがヴァッシュとギルダーツは周辺にいる武装集団の行動に少し違和感を感じた。



ギルダーツ
「(コイツ等の狙いは、オレ達じゃないのか……?)」

ヴァッシュ
「(彼等は僕達に気づいてないのか……?)」



 二人が気づいた様に、武装集団はギルダーツとヴァッシュの存在に気づいておらず、その場から通り過ぎようとしていた。武装集団の本当の狙いは、マグノリアの外れに立てられてる小さな銀行の金庫だ。彼等の目的は銀行の金庫にある金目の物を全て奪い、それを換金して自分達の闇ギルドの資金にするつもりだ。



ギルダーツ
「(コイツ等の目的はオレ達を襲うんじゃないなら……目的はマグノリアか?)」

ヴァッシュ
「(このまま、彼等が進む方向には……目的はマグノリア絡みか? 気づかれない様に阻止しなきゃ。)」



 互いに予想を立てながら動き出した。ヴァッシュは両方の腰に備え付けてあるリボルバー銃をホルダーから抜き、木々の隙間から見える左右の敵が持っている武器を狙っている。ギルダーツはまるで動いていない様にして、右拳へ徐々に魔力を高めていった。

 少ない時間でギルダーツは武装集団をこの場で食い止め一掃する方法を思い付いたが、それは、あまりにも危険なものだった。



ギルダーツ
「木の上の奴!!! オレが周りに居る奴等の足場を崩すから何とかしろッ!!」



 実はギルダーツは、木の上に誰かいる事を木の下に座って考えながている時に気付いていた。ギルダーツは不意に上を向いた時に、赤い布が上から垂れ下がっている事に違和感を感じていた。だが声を掛けようとした時に丁度、武装集団が現れたので声を掛けられなかったのだ。



ヴァッシュ
「……了解!! 殺さない程度に加減してねギルダーツ!!!」

ギルダーツ
「あいよ!!!」



 二人の出した大声に20人近くの武装集団が始めて気がつき、姿の見えるギルダーツの方に銃口を向ける者や、魔法を使おうと魔力を高める者もいた。だが、それよりも先にギルダーツは魔法?クラッシュ?を使い、一瞬にして自分の場所から10mの範囲にある地面を砕き、その場にいる全員の足場を失わせた。

 ヴァッシュはギルダーツの魔法による被害で木の上で体制を崩していながらも、両手に構えられた白と黒のリボルバー銃から発射された無数の弾丸は、左右に見える武器を余す事なく壊したり、魔法を使用する者の腕や足を撃ち抜き集中力を削ぎ無力化した。

 ヴァッシュは武装集団の武器が壊れ、抵抗する事が出来ないのを確認してからリボルバー銃をホルダーに仕舞うが、地面に着地する時に足場が脆い事をすっかり忘れていたので回避する事が出来ず、気づいた時には顔面からぶつかっていた。



ギルダーツ
「凄ぇなオマエ。見えない筈の場所に後ろ向きのまま撃って当てる奴……オレは始めて見たぜ。」

ヴァッシュ
「イタタタタ……。僕の唯一の得意技なんですよ……後ろ向きで撃つのが。」



 ギルダーツはヴァッシュの言葉を聞きながら近くに倒れている男が落とした機関銃を拾うと、ある事に気がついた。ギルダーツはヴァッシュにその事を問い掛けた。



ギルダーツ
「しかも……撃たれた奴らは怪我で動けないのは結構だけど、ご丁寧に致命傷は外してるから死ぬ事は無いな……オマケに奴等が持ってた武器だけがボロボロに壊されてるから、また使うのは不可能だな。オマエ……最初から狙って撃ったのか?」



 ギルダーツの言葉を聞きながらヴァッシュは服に付いた汚れを手で払って綺麗にしていた。一通り終わるとヴァッシュは笑顔で答えた。



ヴァッシュ
「いや〜偶然ですよ。
『偶然』僕達はこの山で出会って、
『偶然』マグノリアを襲う武装集団を見つけ、
『偶然』持っていた機関銃だけ撃ち抜かれ、
『偶然』機関銃がボロボロに壊れてしまい、
『偶然』誰も死なずに大事に至らずに済んで、
『偶然』偶然が重なっただけですよ。」

ギルダーツ
「へぇ……偶然ねぇ……。」



 ギルダーツとヴァッシュの二人の付近は妙な風が吹き始め、場の空気が変わった。先程まで足や腕を撃たれて呻いていた武装集団は、場の空気が変わった事に気が付き静かになった。



ギルダーツ
「単刀直入に聞くから素素直に答えてくれ……オマエは味方か? それとも……敵か?」



 ギルダーツは警戒体制になりヴァッシュに聞くが、ヴァッシュ本人は特に怪しい動きを見せず笑顔で答えた。



ヴァッシュ
「ソレは君が決めてよ。今の僕は君にから見れば味方でも敵でもない……フリーなんだからさ。」



 ギルダーツはヴァッシュの答えに戸惑いを見せた。だがギルダーツは、目の前の男が嘘を言ってる様には見えないと感じた為、警戒体制を解きギルダーツも笑顔で応えた。



ギルダーツ
「んじゃあ、話は簡単だな。」



 ギルダーツは一歩近づき手を延ばした。



ギルダーツ
「オレの……いや、オレ達のギルド妖精の尻尾(フェアリーテイル)に来いよ。歓迎してやる。」



〜Side out…ヴァッシュ





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