小説『とある零位の全を操る者(エネミー・デイズ)』
作者:()

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垣根の頭中には、何故?の二文字の単語が浮かんでいた。

何故荒神を的にするような事をしたのか。

それ以前に、荒神の雰囲気が変わった時点で、この戦いを止める。

たった三文字の言葉を発すれば終わる事だったというのに、と。

この状況になってやっと思った。

そして永奈が現れた。

この状態の救世主となる人物が現れる。

垣根は考えた。

永奈が来なければ、二人は既に死んでいた、と。

「垣根は下がってて」

永奈が呼んだ。

この状況では垣根は足を引っ張るだけだ。

垣根はゆっくりと後ろに下がった。

壁まで下がる事を確認すると、永奈は荒神に与えた能力を止めた。

荒神に喰らった能力が終わると、荒神は一旦前に倒れた。

「・・・・・・ふふ!?」

笑い声が聞こえた。

それは、永奈でも垣根でも、麦野の物でも無かった。

荒神の物だった。

そして、荒神は不気味に笑いながら立ち上がり、

「永、奈!?どぅぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

絶叫した。

永奈が出てくる事が不自然だったのか、解らないが、両手で顔を覆った。

「お兄ちゃん!?」

両手で覆った時に腕が見えた。

その腕には、妙に太く浮かび上がった血管が何本も有った。

荒神は数歩前に出ると、

「やめろ!?来るな!!来るな来るな来るなぁぁああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!」

何が来る?解らない。

唖然した。

その絶叫に永奈と垣根は黙り込んだ。

どびゅ!!と、ドス黒い音がした。

その瞬間に荒神の背中に赤黒い羽が出ていた。

その赤黒い物は、液体?

恐らく、荒神の血液であろう物が羽に塗られている。

「て、天、使?」

永奈の口が動いた。

荒神は天使の力を持つ者。

その羽は荒神の持つ天使の力の一つと考えても他言ではない。

恐らく衝動状態での荒神には、天使の力を使う事が出来る。

正気でいられないからこその力なのであろう。

「dsbaiyghdbh永bhgyidsajbuwdkh奈dnashigbidsanji」

荒神の発する言葉は狂っていた。

だが永奈の耳に入った言葉は何かが違った。

正常の荒神の声に聞こえた。

「お兄ちゃんの・・・・・・声?」

この状況に永奈は狂ったのか?

いや、そうではない。

永奈は正真正銘正気だ。

そして、永奈はその言葉を聞き、脳の中に探りを入れる。

気づいた。

荒神は心の中で生きている。

戻すのは難しいだろう。

だが諦める訳がない。

(永奈が探っているな)

荒神は気づいている。

荒神自身も止められるものなら、止めるが自分自身じゃ無理に等しい。

此処で荒神は永奈に託した。

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