小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#9 負けられない戦い





























町の住民は必死に抵抗を続けていた。

ここが破られれば・・・

背後にいる自分たちの家族が・・・

その思いだけが彼らを突き動かしていた。

しかし、状況は変わらない。

1人・・・また1人と動けなくなっていく・・・

「くそぉ!! こんな化け物どうすりゃ良いんだよ!!」

一通りの銃火器・刀類で巨大生物の攻めのセオリーである足を攻撃していたのだが。

化け物(ゴーレム)はそれをものともせず、攻撃を繰り返していた。

鉱山の男たちの仕事は戦う事ではない・・・

鉱山の力仕事で体力はあっても戦いにはまるで素人なのだ・・・

その上ここアクゼリュスは領土問題もあり、マルクト帝国に所属するのだが、その問題もあって軍隊も迂闊には動いてくれない。

ガーランドは町一番のの力持ちであり、軍隊にいた経験もある為戦いなれていたが、

ここまでの敵とやり合った事は無かった。

ついに、皆の頼みの綱であったガーランドも、

ゴーレムの譜術 「ロックブレイク」を脚に直撃してしまい。

動けなくなってしまった。

その他の皆も満身創痍だ・・・

「く・・・そぉ・・・ ここまで・・・ なのか・・・・ オレの後ろには・・・ あいつらが!!」

力を振り絞るが・・・

体が言う事を聞いてくれない・・・

ガーランドは、ゴーレムがデカい腕を振り上げるのを見て、覚悟を決めた。

グオオオオ!!

(アル・・・ 頼む・・・ 俺の家族を・・・・・・・)

目を閉じた・・・ そして無情にもゴーレムは腕を振り下ろした。

誰もが絶望していたその時!

「我らを護れ聖なる盾・・・ 干戈を和らぐ障壁(かべ)となれ」

「ミスティック・シールド!」

ガキイイイン!!!!!

凄まじい激突音が響いた。




(なんだ・・・ 今の・・・ まだオレぁ・・・死んで無いな・・・今のは・・・・)

ガーランドは目を開ける・・・

そこに見えたのは、

「ガーランドさん!!しっかりしてくれ!!!」

アルだった。

アルは壁の様な物で化け物の攻撃を受け止めていた。

「ア・・・ル・・・・?」

ガーランドは突然の事で混乱していた。

そのガーランドを担いだ者がいた。


??? side

「ガーランド!逃げるぞ!!」

ガーランドの仕事仲間の1人、ファンだ。

「ファ・・・ン・・・ こいつぁいったい・・・」

ガーランドは朦朧となりながらもファンに聞く。

「オレも聞きてぇよ! あの化け物がおめぇに攻撃してくる時、アルがオレのそばに来て 「アイツを止めるからその隙にガーランドさんを頼む」って言ったんだよ! 無茶だって言おうとしたんだがな! 言ったと同時に駆け出しやがった。あんな小僧が命張っていったんだ!オレもいつまでもおねんねしてるワケにゃいけねえだろう?」

「アル・・・が・・・? あいつ・・・ くそ! あいつ・・・を1人で戦わせるわけには・・・」

ガーランドは目に生気が戻り体に力を入れた。

「動くな!じっとしてろ!!悔しいが俺たちにゃアレはどうにもなんねぇんだよ! アルに・・・掛けるしかなんねぇんだ! 」

ファンも納得したわけじゃなかった・・・

あんな・・・子供に・・・任せるなんて・・・

だがあの場にとどまりゃあ今のボロボロの俺たちじゃ何も出来ない・・・寧ろ足手まといになる事も理解できていた。

「ファン・・・!」

理屈は分かる・・・だが、

ガーランドも納得できなかった。

「ああ!最低だ!!一人で戦わせるなんてよ! なさけねぇよ!!だがな・・・ アイツがやられたら次は俺が真っ先に死ぬ!!死んでも 家族には指一本触れさせねぇ!! 」

ファンの強い決意が・・・感じられた。

「おい・・・ オレも一杯つき合わせろや・・・」

ガーランドは、にやけ顔をつくり・・・

答えた。

「あぁ・・・わかってるよ!!」

そして、ファンはガーランドを戦闘範囲から離れたところまで運ぶと、ガーランドを地面に座らせ、他の仲間たちを運ぶため、再び戻っていった。


side out


グオオオオオオオオ!!!

ドゴオオオオォォォォォン!!

何度も何度もその巨大な拳をぶつけてくる・・・

「ぐうううう・・・・・」

なんて威力だ・・・

先ほどのゴーレムたちに比べればまさに大人と子供の差だ・・・

腕に鈍い痛みが再び走る。

「くそっ!!」

腕を放したその時、



パキャアアン!!



シールドが・・・破られた。

破られる瞬間、後ろに下がった為、

何とか直撃は避けられた。


「堅牢なる守護の力……来い!」

「バリア!」

自身防御強化の譜術。先ほどとは違い自らの防御力を上げる譜術だ。

焼け石に水かもしれないが…

ゴーレムは体の一部を散弾銃のように飛ばす攻撃もしてきている。

あるのと無いのでは全然違う!そして。

「天を切り裂く力! 雷撃の剣となり我が敵に降り落ちろ!!」

「サンダー・ソード!!」

雷を帯びた巨大な紫色の剣がゴーレムの足に突き刺さる!雷撃の有る斬撃だ。



バリバリバリッ!! ズッシャアアン!!



グルオオオオオ!!



初めてのゴーレムの叫びがあたりに響いた。

「うおおお!!」「す…… すごい!!」「頑張れ!!!」

倒れていた人たちもアルに気付き、力の限り声を上げる。

アルは逃げて欲しかったが・・・彼らは足を負傷し動けない。

だからと言って、運び出そうとすれば格好の的だ。


………鉱山の男達は決して仲間1人だけ残して逃げるという選択肢は持ってなかったのだ。

皆ファンやガーランドのように……。

「アルが倒れたら次は俺だ……」っと皆、そう考えていたのだ。

その決意は嫌でも感じる。

そして責任重大になる……

(オレが倒れるわけにはいかない!)

まだ暴れているゴーレムに向きなおし身構えた。




??? side






「これは…… 何事ですか?」

ここはマルクト帝国の軍艦タルタロス。


あれは……アクゼリュスですか………


戦塵が見える……。

場所は鉱山の町アクゼリュス。

確かにマルクトの領土になっても国境に位置するせいか、両国の小競り合いも少なくない。

だが、あまりにも巨大な戦塵だった。

「大佐!」

使いを出した部下が帰ってきた。

無闇に、軍艦で近付く事は出来ないのだ 小競り合いならば混乱をさらに増す可能性が有る。

「何か分かりましたか?」

大佐と呼ばれる長身・長髪の男が尋ねる。

「はっ!! 確認に向かったところ!鉱山奥より大量のモンスターが出現したとの事! それらは撃退したそうなのですが、その後、巨大なモンスターが現れ、町で暴れている模様です。」

敬礼しながら町の現状を伝えた。

「巨大なモンスター…… ジェイド……時間がないのは分かりますが」

大佐に比べると少し背丈の小さい中性的な顔立ちの男が不安そうに伝える。

「……分かりました。問題はありますが、町の住人を救う為です。そういうことならば問題はないでしょう。ただし、少数精鋭でいきます。軍艦がそのまま行きますと混乱が有るでしょうから。」

大佐…ジェイドはそういうと出発の準備をしだした。

「もー!イオン様は!!ここに残ってくださいよ!!」

続いて出てきたのは…… 小さな女の子だ……

歳は10代前半だろうか?

にしても軍艦に乗るには少し場違いな気がするような子である。

「いいえ アニス。僕も行きます。町の住民の人はきっと傷ついてしまっている人達もいるはずです。ならば僕の力が役に立ちます。」

イオンと呼ばれている中性的な顔立ちの男性(男の子かな?)。

行くなと言われているが 行く気満々のようだ。

「もーーイオン様は一度言うと聞かないんだから…… はぁ〜 じゃあわたしも行きますよ!」

アニスと呼ばれている女性。(女の子かな?)

この会話を聞くと彼女はこの男性の護衛なのかもしれない。

「じゃっ 話はまとまりましたね!さっ 早速行きますよ。」

「もー 大佐もあっさりしすぎ〜!少しは止めてくださいよ!!」

「はっはっはー♪ イオン様は言ったくらいでは止まらないでしょう?」

「すみません。ジェイド、アニス。」

「もー わかりました!ってば!! 早く行ってちゃっちゃと解決しちゃいましょう!!」

「「はい!」はい。」

そう言って、3名+警備隊数名の少数精鋭は艦を降りアクゼリュスへ向かった。



side out

-10-
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