小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#98 憤怒再び



























そして、暫くして……。

帰り道。

「ん?」

ガイの周りに街の子供達が……。

「なんだい?坊や達?」

ガイがそう聞くと……。

紙切れを渡された。

それを確認すると……。

「ん?どうしたの?ガイ?」

アルは後ろにいたガイが止まっているのに気づき近づく。

「ん?何かあったのか??」

ルークも同様だった。

「悪い!先に行っててくれないか?」


「はっ?」

「え?」


ガイが突然そう言い出す。

「この街にしかない珍しい音機関があるんだ!」

そう言うと、持っていた計測器をルークに渡す。

「折角だから見ておきたくって!」

笑いながらそう言う。


「はぁ?こんなときにか??」

ルークは……呆れて……。

「はは…… ほんとに好きなんだね……。」

アルは苦笑いを……。

「お前もこいよ!アル!」

「え?」

アルはちょっと驚く。

「ほら!アルだって好きだろ?珍しいものとか?勉強が好き……って事は知る事が好きってことだろ?」

ガイは笑いながらそう言う。

「え?ええ?ま……まあ…… そう言えばそう……だけど……。」

ちょっとついてけないテンションだよ……。

「まぁまぁ!オレ気持ちをわかってくれる!ってヤツが1人いてもいいじゃんかよ!」

ガイが……誘ってくれたんだし?

「はぁ……良いよ?行こう。」

アルは了承したようだ。


「んじゃ、善は急げ!行くぜ?」

ダッシュ!!

「わっ!待ってって!!」

アルもついてゆく!

「おおいっ!待てって……ったく……困った奴らだぜ……。」

どっちかって言うと……アルは巻き込まれただけの様な気がするけどね……。

まあ、最後は自分の意思だから……巻き込まれたっとは言わないか…… 苦笑













そして……住宅街の外れで……。



「………ん?こんなトコにそんな珍しいものがあるの?」

あたりを見渡しながらガイに聞く。

「アル……。騙すような真似して悪かった。」

ガイが真剣な表情でそう言う。

「え?」

アルは予想外の言葉に戸惑っていた。

「これからの事……冷静に対応してくれ……。」

ガイが……肩を掴みながらそう言う。

「いったい……なにが……?」

アルは……やっぱりわからない……が。

直ぐに判ることになる。

ガイが、何故……落ち着かせるように言ったのか。

冷静になれといったのか……。










それは…こっちに歩いてくる……男の存在だ。



「あ………っ……ああっ………!」



アルは……。

その姿を見た瞬間!

身震いする。



「うッあッ……!!!!」


そして、記憶が……蘇ってくる!!

それは……あの崩落したアクゼリュスの…。


「お…お前……お……おまえはぁぁぁぁぁ!!!!」


アルは……構えた!!

怒りで……憎しみで我が忘れそうに……なった!



「落ち着け!アル!!」

そんなアルをガイが……両手で肩を押さえた!

「なっ!!何でだ!!ガイ!!止めるな!!!あいつは…あの男はぁ!!!」

アルは我を忘れそうになったが…

ガイのおかげで自我は保てたようだ。

だがアルは、ガイを振り払おうとする……。

無理も無い……。

近づいてくる男は……。

「ふ……予想通りの反応だ……。それに、何やら動き回っているようだな?」

ヴァン……だった。

「キ………キ…サマ……。」

アルは……自我はあっても、怒りでどうにかなりそうだった。

「落ち着け…!ここで暴れたら……この街だってただじゃすまないんだぞ!」

ガイが……そう言う。

「ッ!!!」

アルは……その一言で止まった。

この男の目的は外殻の消滅……。

なら……街一つ壊すなんて……。

「く……ゥ……。」

だから……懸命に怒りを静めた。

「ふふふ……。懸命な判断だ。ここで、無闇にあの力を使えば、ただじゃすまないのはお前とこの街だからな。」

そう言って笑っていた。

「く……ぐ……ッ!……いったい……何のようだ。ガイと……オレにようがあるんだろ!」

アルは……そう言って睨みつける。

「………もうかぎつけたのか?いい子分を持っているな?」

ガイもアルが落ち着きを取り戻したと判断すると離してそういった。


そして……ヴァンは。

「私を止める事はできないぞ……?そう……いかにお前でもな。」

そう言う。

「く……止めてやるよ!絶対に………。」

アルは……拳を握り締めながらそう言う。

ガイは黙っていた。

「ふっ……血の気が多いようだな。」

「誰のせいだと思ってるんだ!」







一触即発の関係だ……。

だが、次の言葉……。

それが最も意外な言葉だった。




「貴様も呼んだのは他でもない。2人とも……私と一緒に来い。」



勧誘……なのだ。

「……オレが首を縦にふるって思ってるのか!?」

意外な言葉にもあまり動じてないようだった。

この男が目の前に現れた……。

その衝撃が大きすぎたから。


そして、ガイも……。

「もう……付き合うつもりは無いね。」

きっぱりと断った。

「……【もう】?」

アルはその言葉に違和感を覚えた。

そして……その違和感は解決する。

「………一度はともに進むと誓い合ったはずだ。」

ヴァンはそういった。

「アンタのやり方にはついていけない。」

ガイは首を縦に振る事はなかった。

「……オレは兎も角、なんでアルまで連れて来るように書いたんだ?」

ガイはヴァンに向かってそう言う。

確かに……それはオレも不思議に思ったところだ。

焚き付けるのが目的……?

でも、そのようなことをするメリットなど無いはずなのだ。

ヴァンの目的を考えれば……。

「わかっているはずだ……。」

ヴァンはガイと…そしてアルを見る。

「貴行の力……それがほしいのだよ。アッシュ同様……にな。そう……単独で全てを破壊せし者の力をな……」

そう言っていた。

「……ッふざけるな!」

アルは勿論拒否だ。

兵器として……仲間になれ!といっているようなものだ。

「……お前は知らないのだ。この世界の醜さが…。それが証拠。亡霊の如きユリアの予言ではアクゼリュスは元々崩壊する、それを既に詠まれていたのだ。」

ヴァンはそう言う。

「確かにそれはユリアシティで聞いた。」

市長に聞いていたことだ。

「ふっ……。それを知っていても防ごうとしない世界。それがこの世界なのだ。ホドもそれで失った。私のやり方なら、ホド……そしてアクゼリュスは再び蘇る。」

そう言う……が。

「レプリカとして……だろ?そでに、ホドは滅んだ。オレ達の故郷はもう…消えてしまったんだ!」

ガイがきっぱりと……。

ガイの気持ちは痛いほどわかるのだ……。

アルも目の前で失ってしまったんだから……。

「……忌まわしい記憶と共にか?」

ヴァンが見え透いたような瞳でそう言う。

「ッ……!」

ガイは……驚きながらヴァンを見る。

「まだ、思い出せぬのだろう?記憶とともに怨念までも忘れ去ってしまったのか?」

ガイの……記憶?

「ふざけるな…!何が怨念だ!お前……お前に一体何がわかるって言うんだ!!」

アルが…ガイとヴァンの間に立つ!

「わかるとも……私はこの方に……、ガイラルディア様に剣を捧げた。私の主なのだから。」

「ッ!!」

アルは驚きながらガイを見る。

「ああ……それは本当だよ。まあ、言わばオレとルークの関係みたいなもんだ。」

ガイは否定せずそう言う。

「それにオレをまだ主だと思ってくれるのなら……大人しく命令を聞いてほしいね…。ヴァンデスデルカ!今すぐバカな真似は止めるんだ!それが聞けないのなら、剣を返す!」


ガイはどうはっきりと命令するが……。


「それは聞けません……。ガイラルディア様……。」


ヴァンは……主であっても譲れない思いがあるようだ。


「ならばもう……お前とこうして会うことも無い。」


決別……その言葉だ。

「オレも、初めからお前とともに行くはずがないだろう!そんな事も読めないほどお前は愚かなのか?」

そして、アルもヴァンの申し出を一蹴する。

「ふ……。貴行の正体……それについてある程度、わかった事があるのだが?」

ヴァンは次にアルを見てそう言う。

「………ッ!」

その言葉に動揺する。

「お前……何を知ってるんだ?」

ガイもそれには飛びつくようだ。

「ふっ……私の研究機関だ。どの国よりも遥かに調べるのには適しているのだ。」

そう言う……。

まるでそれが餌のように……。

「だが……今は、まだ【わかってはいない】のだがな?」

そう言って、笑みを……。

「ッ!お前はオレを怒らせたいのか!?わかってないのに!」

アルは怒りを再びあらわにする!

「違う……。よく考えてみるがいい。私の研究機関では様々な事に精通している。創生暦時代。そしてダアトでの知識……それらを駆使しても……【わからない】のだ。貴行の正体が。それがいかに違和感があるのか……わからないか?」

「ッッ!!」

再び……動揺した。

「まだ、完璧に調べきったとは言えん……、だが これだけは断言してやる。どの国で調べようと、私以上の成果はありえん。それが死霊使い殿の国……マルクトであっても、キムラスカであってもな……。私とともにくれば、貴行の正体に近づく可能性はある。それに私も非常に興味深いのでな……。」

ヴァンの狙いはこれもあったようだ。

アルの事はヴァンも【あの時】から気にかけていたこと。

大陸を破壊する力……。

それがあれば、外殻を落とすまでも無い。

オリジナルの世界そのものを破滅させることだってたやすい。

そして、力の根源を調べれば……あの力を習得できるやも知れない。

全てのレプリカ情報を調べると共に……

セフィロトを調べると共に………。

アルの事も調べ上げようとしたのだ。

それを餌にもするはずだったのだが……。

誤算があった。

それがこの雲を掴むように難しい素性なのだ。

「…………。」

アルは黙りこむ。

「アル………。」

ガイは心配そうな顔で見る。

「………そんな顔しないでよ。」

アルはガイにそういった。

「その話は真実なんだろう。……でも。」

アルはヴァンの顔を見据えて……。

「わかんなくってもいい……!自分探しは ゆっくりと時間をかけてやるよ。……全てを終わらせたら……。」

そう静かに言い放つ。

ヴァン同様……。

その目には強い決意が現れていた。

「ふん……」

ヴァンもこれ以上の説得は無意味……そう悟ったのか。




「わかった…… さらばだ……」




そう言うと………。

2人から離れていった。



「アル……なんか悪いな。巻き込んじまって……。」

ガイがそう言う。

「え……? 大丈夫だよ。オレもルークと一緒でガイを信じてるし、それに……。」

アルは上を向いて……。

「自分の正体……その事少しでも知れてよかった。気長に探すよ。それはね。」

そう言う。

「ははは……。多分お前さんについてくる!ってやつもいると思うからそんなに寂しい旅じゃないと思うぜ?」

ガイがそう言う。

「だと……いいな。」

そういいながら……最後は互いに笑いあっていた。

だけど……ガイの笑みには寂しさの様なものも見えた……。

それは、ヴァンが去っていった方を見ながら…。

多分……昔の事 思い出しているのだろう。

決別してしまった今では……。

決して戻れない時の事。

「………ガイ。」

そんなガイにかける言葉が見つからなかった。

どんな事があったとしても……。

ヴァンが故郷を滅ぼした張本人には違いない。

憎しみ憎悪……それらを消す事は……容易ではないからだ。

「ははは……お前には隠し事ができないみたいだな?旦那と一緒だ。」

ガイは、アルの視線に気がついたようだ。

そう言って苦笑いしていた。

「……ジェイドほどじゃないでしょ?」

アルも苦笑いを……。

「はははっ、オレにとっちゃあどっちも同じだって、……大丈夫だ。アイツのやり方にはついていけないって言うのは事実だからな。例え再び剣を捧げてもらっても……つき返すさ。」

ガイはそう言って笑っていた。

自分が行くべき道……歩むべき道を……。

間違えない……と誓うようだった。

「……それでも、やっぱり割り切るのって……。」

笑っているのだが……。

それでも瞳の奥に見えるのは……。

寂しさが出ているような気がした。

「……ほんっと、隠し事できねーわ。」

ガイは苦笑いしながら両手を上げる。

「互いに引けないものがあるんだ。コレばかりはな?」

ガイはそう言う。

「それに、お前は気にしなくていいさ。……これはオレの問題だからな。」

そう言って笑う。

これ以上……首を突っ込むのは無粋……かな?

「……1人で抱えこまない方が良いよ。その……オレの経験…からね?」

アルも苦笑い。

「っははは!説得力あるわ。そらそうだな?」

最後は……互いに笑いあっていた。
















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