小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#99 強襲 vs アリエッタ

























【ローレライ教団総本山ダアト】







一向は、セフィロトの場所の情報を得る為に、ダアトに来ていた。

街中を歩いている際……。


「こんにちは……イオン様。」

「イオン様。ご機嫌麗しゅう…。」


何度目かな?

街を歩けば歩くほどにそういった声は後を絶たない。


「どうも、こんにちは!」


だから、イオンも笑顔で受け答えをしていた。



「みゅう!イオン様!お友達がいっぱいですの!」

ミュウも笑いながら見ていたが……。

アニスの顔は優れない。

「はぁ……ダメだって言ってるのに、す〜ぐあちこちお散歩にいっちゃうから…。

アニスが苦言を……。

「あははは……、それは無理なことだよね?イオンだし。」

アルも心中察するようだが……。

やっぱし 性格を考えると難しそうだ。

「でもね〜 導師守護役のあたしからしたらね〜……。」

「心配でおちおちしてらんないね?」

アルは笑顔でイオンを見ていた。

凄く微笑ましい。

イオンの笑顔もとても素敵だったから……。

んで、アニスは……。

「も〜!笑顔で言わないでよっ!ほんっと大変なんだから!」

アニスはと言うと、頬を膨らませていたのだった。 苦笑




そんな時。


「あ〜ら……。アニスちゃん!?」

前方から女性が走ってきていた……。

そして、勢いそのままにアニスを抱きしめる。

「ママッ!!」

突然の事にアニスは驚いていた。

まあ、この街に住んでいるみたいだから、こう言う事もあるだろうね?




「アニスのお母様?」

ティアがそういい。

「……みたいだね?」

アルもそう思っていた。


「はぁ…元気そうでよかったわ。導師イオンもご一緒で……。」

そう言うとイオンのほうを見た。

「お久しぶりです。パメラ。」

勿論イオンは知っているようだ。

互いに挨拶を済ませたら…。

「アニスちゃん?しっかり 導師のために働いているかしら?」

アニスを心配する母親の顔になる。

「働いてるよ!……ママこそちゃんと貯金してる??」

アニスも…親を心配する子?になっていた。 苦笑

なぜなら……。

「ええっ!ちゃんと月のお給金はローレライ様に捧げているわよ……。」

天を拝みながら……。

それをきいたアニスは……。

「えええっ!まーーだ!そんなことやってるの!老後の生活はどうするのよ!!」

慌てていた……。

「あら?大丈夫よ。予言どおりに生きていれば……お金なんかなくても……。」

こう言った事があるからこそ……アニスは……。







「何だか……金に苦労しているみたいだな。」

ルークも……そう思っていた。

「だね……。この街でいるから、予言の力は凄く信じてるんだとは思うけど……お金は大切だよ?オレでもそのくらいはわかるし……。」

アルも……苦言を言っていた。

お金は勿論大切。

無ければその日の生活……つまり衣食住に困る事になるのだ。

「……それで玉の輿を狙っていたのね。」

ティアは納得していた。

アニスが狙っている玉の輿……。

それは全部このことからのようだ。

「あはは…… アニス優しいね?母親のために…ってことかな?」

アルは…まだ問答を繰り返しているアニスを見ながら……微笑む。

てっきり……。



お金が大好き〜〜。

働かなくてもお金に困らないから〜〜〜。



……………………………。

っ的なことを考えていたんだけど……。

どうやら違ったようだ。

それに……。

「凄く優しそうな……お母さんだから……。助けてあげたい…って思うの仕方ないよね…?大変だったとしてもさ………。」

アルは……懐かしむような表情をつくる。

そして、寂しそうな顔も……。



「アル……。」

ティアもその顔には気づいた。

故郷の事を……母親の事を考えていたのだろう。

その事を考えたら……今の顔もわけも……。

だけど

アルは、直ぐに表情を戻していた。

それを見たティアは、少し安心をしていた。





アルはジェイドの隣にたって……。

「……あはっ、アニスの認識が変わりそうだよ?ジェイドはどう思う??」

アルは笑顔でそう言う。

「はっはっは〜。油断してると、痛い目見るかもしれませんよ??」

ジェイドは相変わらずのようだ。

「たははは……。」

ルークも笑う。

まあ、アニスだし? 苦笑




一行は…笑顔に包まれていた。

だが……直ぐに事態は急変する!









“キィィィィィン”







空気を切り裂くような……けたましい音があたりに響く!

「!!!」

アルは咄嗟に上を…その音の発信源をたどると…。

頭上から……赤い光線が…。


「あっ!危ない!!!」


咄嗟にアニスとパメラ…イオンを押し出すように飛び掛った!

そして、その瞬間!



“ズガアアアア!!!!”



アニスがいた所、他の仲間がいた所に着弾し、爆発があがる!

その攻撃の正体は、屋根の上にいる二頭のライガだった。


「ま…!ママ!大丈夫ッ!!」


アニスは、母親を支えた。

「え……ええ。大丈夫よ……。」



どうやら大事無いようだ。

「よかった……。」

アルはその姿を見ると安心し……

そして、頭上のライガに集中する。






「きゃあああっ!!」「うわあああああっ!!!」「きゃあああああああっ!」



……この騒ぎのせいで街は大混乱だ。







そしてライガの後に遅れて現れたのが……。

「……見つけた。ママの仇……!」

……妖獣のアリエッタだ。

「根暗ッタ!!こんな所で暴れたら!!」

アニスがそう叫ぶが、アリエッタはそのまま無視し!

「行けッ!!!」

魔物に指示をだした!

その瞬間!




“グオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!”




無数のライガ、そして、グリフィン等の魔物が一斉に襲い掛かってきた!


「くッ!!街の皆は!!」

アルは辺りを見渡す!

まだ……皆混乱していて……満足に避難できてないようだ!

「アニスはイオン様を頼みます!!」

ジェイドはそう指示すると腕から槍を取り出した!



「イオンっ!皆っ!動かないで!」

アルはイオンやパメラ、アニスがいる所に術式を展開!


「我が成すは、堅牢たる絶対領域…… 侵すことの出来ない聖域よ来れ!」



“キィィィィィィン!!!”



術式は光を帯び……イオン絶ちを包み込む!


「ミスティック・フィールド!!」



“パキィィィィィィィンッ!!”



アルが唱えた瞬間、包み込んだ光はさらに輝きだし光の壁となっていた!



「いつぞやと同じだね!絶対そこからでちゃだめだからね?アニスは パメラさんもお願い!」

アルはそう言うと、ライガたちの方へ!


「あ…ありがとっ!アル!!」「ありがとございます!」


イオンとアニスは、礼を言っていた。






「さて……!街の皆も危ない!被害少なく終わらせよう!」

アルが前へ出る!

そして。

「ママの仇ッ!!かくごッ!!」

アリエッタも降りてきた!

その顔は……憎しみと悲しみでいっぱいだ。

その気持ちは……本当によくわかる。

「……あの時も言ってたよね。…………それに、今は親を失う悲しみはもう……オレだって知ってる。」

アルは、憎しみにとらわれているアリエッタを見ながら……。

「でもっ!それでも!……関係ない人たちを巻き込むのは間違ってる!ヴァンも……今のキミも!絶対に!!」

アルは……そう叫んだ!

「うるさぁい!!!!」

アリエッタは何も聞いてくれない。

聞く耳を持たないといった感じで襲い掛かってきた!

「皆ッ!いくぞ!!」

ルーク……そして、他の皆も武器を構えた!


















暫く、魔物。

そして、その魔物達の司令塔であるアリエッタ。




数では、ルーク達が圧倒的に不利だが、

皆は協力し合いお互いをカバーしあい。

五分の戦いが続いていた!

が……!


「本気!だしちゃう…んだからっ!!」




“ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!”





アリエッタは……強力な譜術の術式を展開させる!






「これはっ……!」

「不味いですね!」


ジェイドとアルは異常なそれに直ぐに気がついた!

力の集約……。

周囲からアリエッタ自身に集っていく感覚…。

そして、魔物たちもそれに気がついたのかアリエッタの指示なのか……。

アリエッタの周辺から距離をとった!



「みんなっ!オレの後ろに!!」

アルはそう言うと、


“キィィィィィ………”


術式を展開!!

「私も手伝うわ!」

ティアも同様に譜歌を!






アリエッタは……詠唱を再び続けていく。



「始まりの時を再び刻め………」



アリエッタがそう唱え……

空間に歪みガ出来たかのような感覚が迸る!!








「我らを護れ聖なる盾…… 干戈を和らぐ障壁となれ!」

「堅固たる守り手の調べ……」


「「大いなる願い…全てを護る意思。堅固の障壁!」」


アル、そしてティアは呼吸を合わせる!!


「「ミスティック・フォース シールド!」」








“キィィィィィィィィィ………!!”





合わさった譜術は二重の防護壁となり、仲間達を包み込む!





「倒れて!!ビッグバン!!!」



そして、アリエッタも譜術を解き放つ!!!!





“カッ ! ズゴオオオオオオオオオオオオッ!!!!!”





アルたちがいた所で大爆発を起こした!!!










「はぁ……はぁ……!」


アリエッタはかなり力を使ったのか。

肩で息をしていた。






煙が晴れた所を凝視すると…。

「くっ……しぶとい……です!」

アリエッタは、にらみつけた。

その視線の先には……皆が無事でいたからだ。




「ふぅっ…… やっぱり彼女も六神将。今の……魔物よりも強力な一撃だった。」

ガードに使った腕も痺れが取れない。

「アル…?その腕……ッ」

ティアはあることに気がついた。

庇うようにしているアルの右腕だ。

「大丈夫、ちょっと痺れただけだから!それより皆!大丈夫?」

後ろにいるみんなの方を見ると。



「大丈夫です。」「ありがとう!アル・ティア!」「ああ!大丈夫だ!」「こっちも!」


皆どうやら無事のようだ。

あの爆撃を無事防ぎきったようだ。

(アル………。)

ティアは不安を隠せれない……。

彼の腕の状態……。

初見だけで……医者じゃなくたってわかる。

腕が……。

「ティアッ!」

アルは呆然としていたティアに声をかける!

「ッッ!!」

ティアは少し驚き直ぐにアルの方を向いた。

「……今は集中だよ。まだ、魔物だって……あの娘だっているんだから。」

ティアが心配をしてくれてるのは直ぐにわかった。

だけど……今は本当にそれどころでは無いのだ。

「あッ……ええ!」


「ッ!!行けぇっ!!」

アリエッタはすかさず追撃に魔物を解き放った!

どうやら、さっきの一撃で相当消耗しているようだ!


「今のうちに…だね!」

「ええ!」


ジェイドは頷くと槍を構え!

魔物の群れに飛び出してゆく!


「援護しますわ!」

ナタリアも矢で後方からの攻撃を開始する!








攻防は続く……。

皆の戦闘能力は申し分ない。

魔物になんか引けをとるはずもない。

だが、絶対的に魔物の数が多い。

そして、通常の魔物に比べて強さも増し、

何より厄介なのがチームワークを使ってくるの所だ。



「それにしても数が多い……!ガイ!あわせよう!広範囲で蹴散らすよ!」

アルはガイに背中を合わせるように近づくとそう言う。

「おっ?いいぜぇ!でもついてこれんのか?オレによ?」

ガイが笑いながらそう言う!

「こっちのセルフだよ!」

アルも笑い返した!




意識を集中……。

互いの得物は拳と剣。



「我が拳は地を翔けるが虎の猛威が如し……。」




アルは体勢を低く……そして、腕に力を集中させる!



「我が剣は天翔けるが龍の牙が如し……!」



ガイも剣を天に向けて構える!




「「天・地・空!尽くを制す!」」



魔物の中心で!発動!!



「「幻・龍虎殲滅覇!」」



合わさるはガイの剣のアルと拳!




“ズガアアアアアアアッ!!”




それらは衝撃波を生み出す!



“グアア…………”



一気に周囲の魔物を打ち払った!!



「やるねえ!アル!」

「ガイこそ!」



最後には互いを称え合っていた。






「くぅ……また!アリエッタのお友達を……!」

アリエッタは倒れてゆく魔物を見て更に怒りをあらわにする!

そして!


「いけっ!!!」

更にライガたちが、一斉に飛び掛ってきた!













息つかない攻防。

「皆………ッ!ッあれは!!」

その中……イオンは見た。


「うっ……うっ……ままぁ……。」


崩壊しかかった建物の傍で……膝を抱えて動けないでいる子供を…!


「ッ!!!」


すぐさまイオンは結界から抜け出る!


「!!イオン様!!」

アニスが気がついたときには遅かった。

イオンは抜け出ており…

その子供の下へ。




「大丈夫ですよ。ほら……。」

イオンはいつもと変わらぬ笑顔でその子供に微笑みかける…。

「あっ………」

その子も……イオンの笑顔を見て、徐々にではあるが落ち着きを取り戻そうとしていたが……!


「イオンッ!何で外にッ!」

アルは、イオンが結界から抜け出た事に驚いていた。

アルからでは、子供はイオンで死角となって見えていなかったのだ。


「あッ!危ない!!」

ガイがかわした攻撃がイオンの方へと向かっていったのだ!!



そして……


「あっ……!」


イオンは……どうする事もできない。

避ければ子供に当たってしまうのだ。


“キィィィィ……!”


イオンはそれを自分自身で止めようと覚悟を決めていた時!



“バァッ!!!!!”




信じられないものを見た……。



イオンの前に出て……2人を庇ったものがいたのだ。

それは……。



「ま……ママァァァッ!!!!」

「パメラッ!!!」



アニスとイオンの叫びが辺りを木霊する。

ライガの攻撃からイオンを護るために身を挺して庇ったのはアニスの母親……

パメラだった。



攻撃の直撃を受けたパメラは……。



“ドサッ…………ッ”



力無く倒れ落ちる……。





「ッッ!!!」




“バキィィィッ!!!”


その姿を見たガイは……脳裏に記憶の断片がフラッシュバックする……。



その姿を……。


家族が殺される時の記憶……。


護ってくれて……。


倒れ逝くその姿を……。



「あっ……ああッ………。」



ガイは……この時すべてを思い出していた。










「あ……ああ………。」


アリエッタも……動揺を隠せなかった。

攻撃を指示したのは自分。

だが……パメラを攻撃するつもりは全く無かった。

全ては自分の母親を殺した者達への……。

パメラは……いつも優しい人で……。

自分にも優しく微笑みかけてくれる人だった……のに……。



「アリエッタ!!!」



イオンが叫ぶ!


「ッ!!」


その言葉のお陰で、アリエッタは我に返れていた。

「もう やめなさい!!」

イオンは強い口調でそう言う。

「で……でも………。」

アリエッタも……強い決意で復讐に望んでいる。

今回の出来事でも……簡単に、帰れるわけ無い……のだが。

イオンの表情……。

そして、倒れているパメラ……。

それを見たアリエッタは……完全に戦意を喪失し……。




「………皆…やめて……。」



魔物たちにそう言った。



““グルルルルルル…………””



その声に反応した魔物達は……。

アリエッタの傍まで駆け寄り……。

アリエッタもライガに乗って、無言のまま……その場を後にした。






















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