#100 ガイの過去
アリエッタは去り……。
町の皆にも被害は無く、危機は去ったが……。
今はそれどころでは無いのだ!
「ッ!!皆!のいてっ!」
“パァァァァ…………。”
アルが直ぐに駆け寄って治癒をかける!
「アル!アル!!お願い…!ママを!!」
アニスは……涙目でそう懇願する。
「任せて!オレだって…オレだって……!」
アルは必死に治癒術をかける。
思いは一つ。
≪もう、目の前で誰かが死ぬのなんか見たくない………。≫
そんなのは……もう二度と……。
その想いがそのままアルの手に宿ったのか……。
治癒の光はパメラだけでなく。
辺りをも照らし……皆を包み込んだ。
パメラの状態は……意識は無かったが、深刻なものでもないようだ。
「……大丈夫。助かるよ。」
アルはほっとしながら治癒を続けた。
「あ……あっ……ありがとう……アル……。」
アニスは……思わずアルに抱きついた。
「は……はは、良かった……本当に……。」
泣き崩れるアニスを見て……安堵していた。
だが……もう一つ問題が発生した。
「ぐ……あああああッ!!!」
ガイが……頭を抑えて蹲ったのだ。
「ッ!!ガイ??」
直ぐにそっちを見る。
ガイは……蹲ったままうめき声を上げていた。
「くっ……。」
アルは方にも行きたかったが……
ここを離れるわけには…。
「大丈夫。任せて!アル。」
「私もいきます!」
ティアとナタリアがそう言う。
アルばかりに負担をかけるわけにはいかないのだ。
「あっ…… ありがと!2人ともお願い!」
二人にそう言うと。
ティアとナタリアは頷き……。
そしてガイの方へ向かった。
「ガイ!どっかやられたのか??大丈夫か!」
ルークも、ガイの傍でいた。
「ぐあ………ああっ……。」
徐々にではあるが……。
うめき声は……小さくなる。
そして、ガイは目を見開いて……。
「すべて………おもい……だした。」
一言だけ……そう呟いていた。。
そして、一向はダアト教会へと入った。
そこなら、パメラさんもゆっくりと養生できるし、何より外よりは安全だから。
「ふぅ……。」
アルは、汗を拭う。
「アル!アニス!パメラさんは?」
ルークがそう聞く。
「………ん!大丈夫だよ。安静にしてれば直ぐに元気になる。」
アルは、サンズアップをしながらそう言う。
「命に別状が無くて本当に良かった……。アル、本当にありがとう。ありがとうっ……。」
アニスは何度目かな?
しきりにお礼を言う。
「もう良いって……///でも…ほんとに良かった。」
アルはテレながらも安堵していた。
「そうね……。良かったわ。」
横にいたティアもほっとなでおろす。
そして、もう1つの問題にうつる。
それはガイだ。
突然の事でまだ状況がわからなかったが……。
その当人のガイは、礼拝堂で祈りを捧げていた。
そして……。
「すまなかったな……。あんな時に取り乱したりして……。」
ガイは皆に謝罪する。
その顔色は特に問題なさそうだ。
「良かった……。でも 何か思い出したみたいだったけど?」
ルークも心配だったが……。
ガイの状態を見てとりあえず安心する。
そして、その原因をガイに聞いていた。
ガイの【思い出した】といっていた事だ。
「何を思い出したんだ?」
ルークがそう聞いていた。
ガイがこれから言う事……。
それには皆が衝撃が走っていた
「オレの……家族が殺されたときの記憶だ。」
「「「「!!!」」」」
時はさかのぼり……。
ガイの5歳の誕生日の事だ……。
家に親戚が集まり……預言者がガイの予言を詠む事になっていたが……。
そこでホド戦争が勃発したのだ。
ファブレ公爵によってガルディオス伯爵家の人間が惨殺されたあの戦争……。
なぜ、ガイだけが無事だったのか……。
そればガイは、彼の姉であるマリィベル・ラダン、そして、ガルディオス家に仕えていたメイド達が命を懸けて彼を護ったのだ。。
戦争が始まり、瞬く間にガルディオス家は制圧される……。
その時、マリィベルはガイを暖炉へと隠し、
「ガイラルディア、貴方は生き残らねばなりません。ガルディオス家の跡取りとして……。決してここから出てはいけませんよ!」
強く……そう言い聞かせた。
幼いガイは……ただ頷くしかできなかった。
そして、とうとうこの部屋にもファブレ公爵が率いる白光騎士団が進入してきたのだ。
女・子供にも容赦なくその凶刃を振りかざす……。
1人……1人と切られ……鮮血を散らせながら倒れてゆく……。
ガイは、その光景が……恐ろしくて、
何より、大切で大好きな姉がそうなってしまうと考えたら、いてもたってもいられなかった。
何も出来ない。
だけど……姉上だけは……ッ!
そしてガイは言いつけを破り、暖炉から出てきてしまった。
それを見たマリィベルはガイの下へと走り……。
そして、惨殺されてしまったのだ。
彼女に続き……残りのメイド達も……。
白光騎士団はガイの存在に気づかなかった。
なぜなら……彼女達が盾になったからだ。
文字通り……身を盾にして……守り通したのだ。
姉は……涙を流しながら最後に力を振り絞り……
ガイを強く強く抱きしめていた。
護るように……。
その光景は……ガイの脳裏に刻み込まれたのだ。
「……助け出されたとき、オレは姉上やメイド達の遺体の下で血塗れになって気を失っていた。………そして、その時の記憶も……。」
全てを今……思い出した。
「では……貴方の女性恐怖症は……。」
イオンがそう聞くと……。
「情けない話だよな……。命を懸けて護ってくれた姉上達の事を忘れちまって……おまけに怖がっていたなんて。」
ガイは……そうつぶやく。
「……かぞく……かぞくを……。」
アルの脳裏にも……描かれる場面がある。
全て、失ってしまったあの時の場面。
……わかる。
痛いほどに……わかる。
ガイは…その痛みを僅か5歳の時に受けたのだ。
記憶を失ってしまう程の………。
「……ガイは情けなくなんかないッ!……誰だって……誰だってそんなことがあれば……。あればッ…………。」
だから、アルはそう力強く否定した。
そして、言いようの無い怒りに似た感情に包まれそうになっていた。
まるで自分の事の用にだ。
「ははっ……サンキュな。アル。」
アルの言葉……。
それは、ダイレクトに心に入ってくる。
同じ境遇だから……なのかもしれない。
だから、ガイは笑いかけた。
≪お前まで……怒らなくてもいい……。≫
≪もう終わった事なのだから……と。≫
「ッ……。」
ガイの目を見て……もう言葉が出てこなかった。
………逆に励まされたようだった。
「その……指揮を執っていたのが……親父 なのか……?」
ルークも……自分にも責任がある。
そういった面持ちだった。
それを見たガイは、
首を左右に振り、
「お前には関係ない話だ。……気にするな。」
……そういった。
そんな時、ジェイドから……。
「……ヴァンとは、そのときから一緒だったんですか?」
そう聞き……そして続けた。
「ベルケンドで……アルと貴方はヴァンと会ってましたね?」
「「「「!!!」」」」
あの場に……ジェイドもいたのだ。
この男に隠し事は不可能なのだろう。
「……気づいていたのか?流石だな…。」
ガイは素直に頷く。
「兄さんと!?それに……アル……とも?」
不安そうにティアはアルのほうを見た。
「ごめん……ティア……。その……言い出せなかったんだ………。必死………だったから……。」
アルは顔を背ける。
本当に必死だった……。
彼……ヴァンに対する憎しみ……殺意……全ての負の力を抑えるを……事だ。
そんな事……実の妹で……そして、大切な人であるティアに………話す事は出来なかったのだ。
「っ………。」
ティアは……その目を見て……これ以上何もいえなかった。
「……そうだな。見られてたんなら、隠す必要も無い。……ヴァンは、オレの守役だった。……フッ、アルにはもう言ったけど、言わば……オレとルークみたいな関係だった。」
「師匠と……ガイが?」
ルークは……意外な事実に少し驚いていた。
ジェイドは……更に続ける。
「……何を話していたのですか?お2人とも。」
そう聞いてきた。
そう……つまりは。
「大佐!ガイを……アルを疑ってますの!?そのようなこと!」
ナタリアは声をあげていた。
だが……ガイは問題ない……という表情を作り続ける。
「ヤツとはファブレ公爵家で再開したときから、復讐を誓い合っていた。だが……今は違う!それに……アルも関係ない。ヴァンが アルの力を欲した。だからあの場にアルも呼んだみたいなんだ。真意を……読めなかったオレのミスだ!アルは関係ない!」
そう言う……
「ガイ……。」
必死に庇ってくれるのはわかる。
でも……。
「ガイを信じてくれ!あの時……ガイはきっぱりと断ったんだ!ヴァンが捧げた剣をヴァンにつきかえしてッ!……ガイはもう付いていけないって言って……。本当だからっ!」
アルは皆の前で訴える。
「アル……」
ガイは、自分を庇ってくれているアルに……感謝をしつつ………それでもこれから自分が疑われる事を覚悟して。
「今すぐ……信じてくれとは言わない……だが……。」
ガイは俯かせる。
その時!
「信じるっ!!」
ルークから声が響く!
「オレは、ガイを……アルを信じる!」
「私も同じです!これまで……何度も私達を救ってくださいました。信頼できます!」
「ええ……私も、信じるわ。」
「当然です。」
「はいですのっ!」
ルーク……ティア……ナタリア……イオンが頷く。
「皆甘いな〜〜でも!」
アニスも!
「わたしも信じるよ!」
ガイだけなら……行動、動機全ての面で疑わしい所だってある。
だが……
アルは違う……。
こんなに優しくて……そして優しさに比例するように強い人見たこと無いんだから。
ジェイドを除く皆がそう言う。
ジェイドはため息を1つすると……。
「ヴァンの事です。スパイを送り込むにしても、もう少し上手くやるでしょう。それに、アルとも出会っていた時点で私の中では、全て疑いは晴れていました。私もあなたと言う性格は理解しているつもりですからね?しかし、客観的に見て1%でも疑いがある場合は……儀礼的にですが一応疑ってみました。」
そう言って笑っていた。
ジェイドもどうやら本心じゃないようだ。
あの感じに騙された……みたいだ。
「……はぁ、オレはジェイドの性格を忘れていたよ。」
アルは苦笑いをし……。
「………ははっ。」
ガイは変わらないみんなを見て……微笑んでいた。