小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#103 言葉無き殺意



























そして、タタル渓谷のセフィロトへと到着し…。

ダアト式の封印を解いた時。

やはり 相当な負荷がかかるのか……イオンは辛そうな表情をしていた。

「大丈夫……?イオン。」

アルは、肩を貸し……イオンを支えた。

「ええ………大丈夫です。」

明らかに大丈夫でなさそうだ。

「……………。」

アルはそんなイオンを心配そうに見ていた……。

そんな時だ。



「「オレが代われたら…」って思ってるでしょう?」



イオンが口を開く。

表情は辛そうなのだが……心なしか笑っているようにも見える。

「ッ……。」

アルは思わずたじろいでしまった。

実際にそう思っていたからだ。

誰かが……仲間が傷つく事は自分自身が傷つくよりも遥かにつらい事だから……。

「ははは………。アルは僕以上に無理をするんですから。」

イオンはそう言って笑うと、

「僕は本当に大丈夫ですよ。信じてください。それに……」

イオンはティアの方を見る。

「……皆の言うとおりですアル。アルはティアに心配をかけるものじゃありません。僕が言えたことではありませんが、これは僕のやるべき事なので。」

イオンはそう言って……笑っていた。

「うっ……うん。でもね。」

アルはイオンと目をあわせ……。

「お互い様……だよね?ねっ?アニス?」

そして、アニスの方を見た。

「む〜……まあ、そう言われてみれば……」

アニスも……最初こそは笑っていたけど、イオンの事と照らし合わせてみたら……

口も……ねえ? 苦笑

「ほらっ!イオンもオレと同じだってっ!………だから皆っ!オレだけじゃなくて……イオンの事もしっかり見てあげてよぉ……?」

アルばかり話題に上がっている。

だから...話題逸らし〜をしようと…… 苦笑


でも……。



「はっはっは〜あからさまですね?」

「うっ……。」

「そーそー!よくよく考えたらさっ!アルの方が多いよっ!それに ティアにも心配かけてるし?」

「ううっ……。」

「たははは……。まっ 全くをもって否定できないな。」

「うううう……。」



話題逸らしは……失敗。

言われるたびに小さくなってってるし…… 苦笑


「ははは……あんまし、いじめてやるなよ?」

「はぁ………」

ガイのおかげで何とか……

ティアもため息をしてたけど……

その顔は心配などではなく……笑っていた。











そして、一向は、タタル渓谷のセフィロト内部へと入っていった


そこは……


やっぱり 外の世界とは別物だ。

雰囲気……。

そして、細部にいたるまでの構造。


「これは……。」

ガイも……改めて見るとやはり驚きがある様だ。

「うん……パッセージリング……ってやつだね。」

アルも頷いた。

「ああ……同じ……だ。アクゼリュスで見たやつと……。」

ルークも同意した。

それは間違いないんだけど……。

何の反応も無く、動いているような感じがしない。

「これ……止まってるよね?」

アニスがそう呟く。

「……恐らくヴァンがセフィロトツリーを消す為に意図的に停止させてしまったのでしょう。」

イオンが、そう結論した。

大地を崩落させようとしている以上……。

その線が濃厚だろう。


「ダメです。このままでは測定はできません。」

ジェイドがそう言う。

計測器を持っているが……。

ここが活動していない以上、意味が無いのだ。


「くそっ……!ここまできてっ!」

ルークは落胆を隠せない。

「何か……方法があるかもしれない。手分けして探してみない?」

アルがみんなにそう言うと、それぞれ散開していった。

ここには、モンスターの気配も無く、特に問題なさそうだからだ。





暫くしてのことだ…!



“キィィィィィィィ!!!!”



突然辺りが光りだした!!

「わっ!!」

突然の事だ。

皆が驚いていた。

「パッセージリングが動き出しました!」

イオンがそういった。

何故動き出したのか…?

それはわからなかった。

「ガイっ!測定を!」

「ああ!わかった。」

この隙にガイは測定器を取り出し、計測を始めた。

「でも……なんで…?って!!」

アルは周りを見渡すと……。

ティアが膝をついているのを見つけた!

「ティアっ!大丈夫!?」

慌ててティアの方へ駆けつける。

「大丈夫……。何でも……ないわ……。」

ティアは微笑むように……そう言う。

でも……そうは見えないけど……。

「でも……いったい何が………ん?」

ティアの直ぐ傍に、何か……本が開いたような形の台座があった。

あからさまに怪しい雰囲気だ。

薄っすらだが……光もそこからも見えていた。

なぜだろう……。

ティアを介抱しなければと思っているのに……。

まるで吸い寄せられるように……。

アルはそれに自然と向かっていった。



「ティア?大丈夫か?」

そこにルークも来て…。

「ええ……。」

ティアは、同じように答える。

「でも……顔色悪いぜ?腹でもへったか?」

ルークはそうデリカシーの無い事を…。

「馬鹿……。」

ですよね……。

「………ははっ」

ルークはそんなティアを見て少しは安心したようだ。

その時だ!


「ッッあ!!!」


悲鳴……とまではいかないが、アルの声が響く!

「アルっ!?」

ルークは直ぐに気が付いた。

偶然視線が向いていたからだ。


「うっ……あっ……!な……なんだッ……!あぐっ!!」



“バシュオオオオッ!!”



アルは、台座から発生していた稲妻の様なものを受けていたのだ!


「おいっ!アルっ!!」

ルークが……すぐさま駆け寄り!

アルを引き剥がす!!

どうやら感電したりはしないようだ。


「ッ……あっ……。」

無事に引き剥がす事に成功はしたが……。

「おいっ 大丈夫か!アル!!」

「ッ……あっ……。」

アルは痙攣していた。

「あ……アルッ!」

ティアも……ゆっくりではあるが、傍による。



「大丈夫ですか!」



その様子に……皆が集まってきた。

アルはそのまま、気を失ってしまっていた。














それから暫くしての事だ。

「う……ん……」

声が……聞こえてきた。

「アル!」

傍でいたティアが真っ先に気が付く。

「よかった……心配したぞ。」

ルークも同様に気が付いた。

「あれ……オレ……いったい………。くっ……。」

アルは、頭を抑えた。

まだ……鈍い痛みがある様だ。

「しっかり……!」

ティアとナタリアが治癒を施してくれた。

「あ……ありがとう。2人とも。もう、大丈夫……。」

アルは立ち上がると礼を言った。

「いったい……何があったのですか?」

ジェイドは肩に手をやりながらそう聞く。

「いや……オレにもよくわからないんだ。その……あの台座に近づいたら……。」

アルは、指をさした。

それを聞いたジェイドはその台座に近づき……

「……これは、パッセージリングの操作盤ですね……。」

ジェイドが触りながらそう言う……。

別段変わったところは無いようだ。

「わからないけど……明確な事があるよ……」

アルは表情を請わばせる。

「なにが……あったの?」

ティアも心配そうに見つめた。

「……なんていえばいいのかな……そう、あれから……このセフィロトから殺意を感じたんだ。……言葉の無い殺意……。そしてあれを浴びている時ずっと……。」

アルは右腕を抑えながらそう言う。

「殺意……。」

ジェイドが触るがなんとも無い。

「もう一度貴方で試すわけにもいきません。目的は達成しましたし、引き上げましょう。」

ジェイドは……気にはなったが勿論検証などできはしない。

「そうだな。それにティアも気になるし、」

ルークはティアの事を気にしていた。

彼女もちょっと様子が変だったからだ。

「私は……大丈夫よ。それよりアルを……。」

ティアはそう言うと……アルの肩を持つ。

「ティア、無理すんなよ?調子……変なんだろ?オレにも任せてくれ。」

アルを挟むようにしてルークが反対の肩をもつ。

「ルーク……それにティア……ありがとう。」

アルは……素直に2人に身を任せた。

そして、この場所から皆撤退した。















そして、シュリダンへ向かう途中。

「もう、大丈夫。2人ともありがとう。」

アルは手を貸してくれていたルークとティアにそう言う。

「でも、アルだしな〜…」

「そうよね……。」

な〜んか胡散臭そうに……。

「えええっ!大丈夫だって!ほらっ!……ね?」

アルはすっ!っと立ち上がった。

問題ないかのように!

「はっはっは、今までが今まででしたからね?【無理をする=アル】……と言う図式が完成してしまってるみたいですね?」

ジェイドが楽しそうにそう言う。

「えええっ!それほんと??大丈夫だって!!無理なんかしてないよ!信じてって!」

アルは慌てていた。

みんなのこと…凄く信じてるのに……。

自分の事は信じてくれてないみたい……。

「ふふふ……冗談よ?」

ティアはコツンっ……と額に手を当てる。

「ははは……。」

ルークもティアと同様……所謂からかってた?

「うう……なんか、2人ともヒドイ……。」

シクシクシク……っと。

「普段心配ばっかかけてるからだぜ?」

「まったくですわね。」

ガイとナタリアが…。

「あぅ……。」

そういわれたらグゥの音もでないな。

「ほらほら〜!アルイジメてないで、ついたよ〜!」

アニスがそう言うけど。

「おや?アニスは混ざらなくてもいいのですか?あそこに」

ジェイドが……。

「え??ははは!たまにはよゆ〜をあげないとね〜〜。あたしまで混ざっちゃったら、またアル倒れちゃうかも♪」

笑顔でそんな事いっても説得力無いよぉ?

「はははは………。」

アルビオールから降りたノエルも苦笑いしていた。



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