小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

#105 想いが1つに……



























その日の夕刻の事。

宿屋で皆ゆっくりしていたのだが、

ルークは……1人出歩くナタリアを見て、後つけていた。



「……あれ?あれはルーク……?どうしたんだろ?」

アルも、眠れず夜風に当たっていたところを偶然ルークを見つけたのだ。

そのルークを見てると気づいた。

「あれ…それにあっちは ナタリアと……アッシュ…?」

ルークの視線の先に2人が海を眺めているのが見えた。

……傍まで行こうとした時。



「盗み聞きをしに行くのは感心しないと思うわ。」

「わぁっ……ッッ!!」



突然の後ろからの訪問者。

限りなく声を殺しながら驚く。

「び……ビックリした……ティア……脅かしっこなしだよ…。」

そう…… 後ろに来ていたのはティアだった。

「ふふふ。」

そう微笑んで隣にたった。

「アッシュ……ナタリアと何を話しているのかしらね?」

そう言う。

「あれ?ティアだって、気になってるじゃん!」

アルは、ティアにそう聞いて軽く笑っていた。

「気にもするわよ……。彼は……その……。」

ここで 言いよどんでいた。

恐らく……ティアが思っていた事は……。

アッシュは【本物のルーク】だと言う事だろう。



「……アッシュはね?」

アルはティアに語りかけた。

「アッシュは……ほんとに大切に思ってるんだよ。ナタリアの事。きっと……ナタリアが思いつめるのも、アッシュにとってお見通しだったんじゃないかな?」

そういった。

「……なぜそう思うの?」

ティアが聞き返すとアルは笑顔になり。

「あの時も言ったけど……。ほら、アッシュが言っててね?」

ウインクをしながらそう答える。








あの時……。

ナタリアの【父】、インゴベルト陛下から死刑を宣告された時のことだ。

アッシュが現れて……。

助けてくれた。

あの時、アッシュが言った言葉。

皆に聞こえないように……言った言葉。

『頼む。アイツを護ってやってくれ……。』

そう言っていたのだ。

ルークを信頼など彼からしては出来る事はない。

元は敵でありながら……。

それでも、最も信頼していたのが彼にとってアルと言う男だった。

任せれる、任せれるに値する事を……。

恐らくはそう言えば、【甘ちゃんなアル】は答えずにはいられないとも踏んでいたのだろう。






「あの場は引き受けるからナタリアを……ってね?ルークはまだまだ、信頼できないみたいだってね……。」

ちょっと苦笑いをしながらそう言う。

「だから、今もきっとナタリアの力になってくれてるんだと思う。……今までだって、アッシュは凄く苦しい思いをしてるはずだけど、彼の奥底には……きっと。」

そう言い、2人の方へ視線を向けた。

2人は……恐らく会話をしながら海を……夕日を見ているのだろう。

「アッシュが……。」

次にティアが…。

「アッシュは貴方になら……アルなら任せれるって思ってくれたのね。」

そうティアも笑いながら。

「え……あっ……うん。ちょっと恥かしいけどね?それに、信頼してくれてるのなら……凄く嬉しいよ。ほんとに………。こんなオレにさ?」

少し照れて……頭をかきながらそう答えた。

「アル……?」

ティアはアルの方を真っ直ぐ見つめた。

「え…?」

ティアの真剣な表情に少し気圧されそうになったが、アルもティアの方を向く。

「………アルは、どうしてそんなに謙遜をするの?それだけの事考えて……いつも……いつも誰かのためにって しているのに。 本当に素敵な人なのよ……?あなたは……。みんなもそう思ってるし……私だって……ね?」

ティアは真剣な表情から最後には微笑みかけながら……そう言ってくれた。

「あ……ありがとう///ティア。でもさ、オレは……考えて行動してるわけじゃないよ。」

アルはティアのほうを見て。

「ただ無我夢中なだけだ……。ティアが言ってくれてるみたいに……そんな立派な事してるつもりなんか無いよ。」

また 苦笑いを……。

あと……少し照れながら……。

「でもさ……。 うん。やっぱりティアが……傍にいてくれてるおかげもある………。かな?」

視線を少し逸らせる。

「え……っ?」

今度はティアは少し驚いていた。

「ティアのおかげで……オレはここにいられるんだ。皆の為に、自分の為に……ね。あの時あの街で……壊れかけたオレだったけど……。ティアのおかげで自分を取り戻せた。……サラの事だって、ティアがいてくれたから……サラを……大切な家族を……あの町で任せる事ができた。ティアだって……きっと今は苦しいのに……筈なのに……。支えてくれた……。」

俯いてそう答えた。

街での献身的な看病の事。

そしてティアの兄が犯していること……それが頭を過ぎったのだろう。

特にヴァンの事。

それは考えれば……きっとティアも気にする。

気にかけまいと振舞ってくれる。

でも、絶対……胸中は穏やかじゃないはずなのだ。

……これは悪循環なのはわかってるけど……。

どうしても考えてしまうのだ。

ティアの事……だから……。



「ふふ……。」

次に見たときにはティアが笑っていた。

「え?」

不思議そうな顔をする。

なんで笑ってるのか?よくわかってないみたいだ。

「アルは本当に優しいのね……。私の事だってそう。兄さんの事も……考えてくれて。」

家族を……故郷を滅ぼした本人といっても間違いない。

その上で考えてくれてる。

気に……かけてくれるのだ。

「そんなアルだからこそ……私は………。貴方を助けたい……と強く想ったの。それに……貴方はとても強くて……それに比例するように優しくて……。そんなアルだから……貴方だから……。」


“フワッ………。”


ティアが……アルにすっと抱きついた。

鼓動を感じれられるほどの……距離だ。


「てぃ……ティア……っ///」

心臓が……高鳴る。

鼓動が……倍以上に跳ね上がる。

「傍にいて……とても安心できるの……。」

ティアがそんな時……。

そっと声を出していた。

「私だって……ずっと強いわけじゃない……。不安だってあるし……正直兄さんとも………。でもね?」

アルの顔を見ながら……。

「アルの言葉を返すようだけど、アルが傍にいてくれるから。だから、私は私でいられる。心を強くもてるの…。ほんとに…本当に…お互い様……なのよ。」

それを聞いて……気持ちが高まる。

「ティア…………。」

アルは……そんなティアを……見て……。

愛おしくて……。

もう……我慢できなくて………。




2人の距離……。

それは再び縮まっていった。

ゆっくり……ゆっくりと……。


そして……。




「「ん……」」




【再び】0に……なった。




それは本当に一瞬……刹那で。

その次の瞬間には!






“バッ!!!”



なぜか直ぐにアルがティアから離れた!


「ごっ…ごめんっ////そのっ……オレ……ッッッ///!!」

アルは慌てていて、そして顔が真っ赤にしていた……。

アルは、自分がティアとの距離を縮めたと思っていた。

凄く嬉しくて、ティアが……愛おしくて。


「ティ……ティアにっ……///そのっ……///」


まだまだ、大パニックだ。

先ほどの行動の前とまるで別人だ…… 苦笑

そんなアルだからこそ。

逆にティアは落ち着けていた。

アルの慌てっぷりを見て……逆に落ち着けたようだ。

「私からも……//その……したのよ?……って あれ?」

少し照れながら……。

キスの事を伝えた。

アルからじゃなく……。

自分も以前に……と。

だけど今のアルの顔を見て……思った。


「うう……あうぅぅ………////」


アルは、また爆発しそうだ。

「あっ……落ち着いてっ!」

ティアは宥めて……。

「あのっ…///オッ……オレっ!ティア……ティアにっ……ッ…///」

聞こえてない……。 苦笑

「アルっ?だっ大丈夫だから!ねっ?落ち着いてっ!」

両肩を……掴んだ!

アル……震えまくってるから…… 苦笑

「うっ……え……えっと……好きな人とっ……///好き同士がッ……するもの……だよねっ…!き…きき…キスって……!それなのに……っ///オレっ……ティアと……しちゃって……あうぅっ……///」


“バッ!!”


アルは、素早く!!バックステップ!!!

戦闘の時より早いっ!!! 苦笑

そして、土下座っ!


「ご……ごめんなさいっ!そのっ……ティアの……う……奪っちゃって……///」


奪うって……。

彼は……記憶無いのに何処から仕入れたのか…… 苦笑。

ああ……一般常識は大分あるのかね……?


「そのっ…/// ほ……ほんとにっ///ご……ごめんなさいっ……!」


アルはまだ大パニック!




そんなアルに……ティアは近づいて……。

「アル....お願い。その……顔……上げて……。」

ティアはそう一言だけ……。

「あ……う……うんっ。」

何を言われても…謝ろう!そう思って顔を上げたとき。



“ちゅっ…………”



「ッ!!!」



その唇は……再び塞がれた。

「ん………。」

ティアが……。

ティアからアルに口付けをしていたのだ。

「ッッ!!!」

当然アルは驚いていた。

目を見開いていた……。






そのキスは……。

さっきより長い時間……。

初めは凄く恥ずかしかった。

けれど……アルは次第に落ち着きを取り戻しつつあった。

包まれているようで……。

とても安心したから……。

目は見開いてはいたが……。

直に自然なものとなり………。

ティアを求めてるように……アル自身にも自然と力が入る。

それは勿論ティア自身も同じだった……。














そして、今度はゆっくりと……2人ははなれた。


「……わかっ……た///?私の……その……気持ち……///。アルと同じ……なんだから……。もうこれ以上は……言わない……からねっ。」

今回はティアの方が真っ赤にさせながら……そう言う。

「あ……う……うん。ティア……その……。」

アルは、決して目を逸らせない。

ここまで、してくれて……。

何も出来ないなんて!流石に男じゃない。っと思っているのだろう。 

「その……しちゃった後に///言うの……おかしいけど……。オレ……っ」

ティアの目をしっかりと見つめて。





「オレ……オレは……。アル・エルラルドは……ティア・グランツを…メシュティアリカ・アラウ・フェンデを愛してます。その……心から……愛しています。そして……この命……例え尽きても……愛し通す事を……ティアに誓います。必ず……この先何があろうとも……。」





まるで……婚礼の儀をする際の言葉。

それを聞いたティアは……。

「あっ……。」

輝いている。

そういった言葉がしっかりと当てはまる。

そう思えるほどの笑顔だった。











そして、その後……今日、3回目のキスをして……。







「あの……ありがとう。ティア。」

アルは改めて礼を言っていた。

「え??何のこと?」

ティアは……わからなかったようだ。

「オレの事……好きになってくれて……ありがとう。でも、オレ……ティアの事好きだからっ その気持ちはティアに負けない……から!」

アルは……その事で言いたかったようだ。

「ええ……。私だって、アルを好きって言う気持ちは負けないからね。」

そう言って……最後は互いに笑いあっていた。

「そういえば、私、アルの性は初めて聞いた気がする……。」

ティアは、そう呟いた。

「え…?」

アルはティアの方を向き…。

「そう……だったかな……?」

笑いながらそう話す。

「エルラルド……初めて聞いたわよ。」

微笑みながらそういい……。

「その……あなたの両親の……かしら?」

少し口ごもりながらティアはそう聞いていた。

「あ……うん。そうだよ。オレの家族……だからね?」

アルはそう言って笑っていた。

「ふふ……あなたに……アルにぴったり。」

ティアは再び笑う。

「え……?何がかな?」

アルは不思議に思ってそう聞いていた。

「古代イスパニア語で【エルラルド】は、慈愛の守護神と言う意味なの……。」

笑いながら……そう言う。

「っ……。」

少し照れていた……。

古代イスパニア語。

それは流石によく知らないようだった。

「あっ……でも、少し危なっかしい守護神だと思けれど……ね。」

ティアは……そう言う。

「あぅ……。」

アルは項垂れていた……。

そう言われても、仕方が無いのだ。

「でも……とても愛おしい人。いつも……いつも……皆を……私を守ってくれて……。」

ティアはそう付け足すと…。


“トンッ……。”


アルの胸に頭を預ける。

「ティア……。」

包み込むようにティアを抱き……。

「守る……よ。絶対に……大切な人……大好きだから……。」

その言葉……。

デジャブだった。

「ふふふ……。私も……大好き………。」

ティアは笑っていた。

ケテンブルクで聞いた彼の寝言……。

もしかしたら、この時を予知していたのか……?

そう考えいた。















そして、暫く……互いに笑いあっていた時。

「あれ……?お前ら。」

声が……。


「「ッ!!」」


2人とも同じようなタイミングで振り向く!

息ぴったり♪

「どうしたんだ?こんな所で。」

ルークはどうやら、ナタリアの後をつけていたようだが……。

戻ってきたようだ。






「ルーク……。」

「はぁ……。盗み聞きは良くないと思うわよ。」



とりあえず、ルークの突然の出現には驚いたけど……。

どうやら ルークはアッシュとナタリアの会話を聞いていたようだ。

その事で……

その事を……気にしているようだった。

アッシュとナタリアの……約束。

それが………自分のせいで……と。


「っ………。もしオレが生まれてなかったら……って思って……。」


ルークは自分自身を責めるようにそう言う。


「………。」

アルは、黙って……ルークの傍へと向かってゆく。

「そうしたら……ナタリアとアッシュは……。「もし。」ッ!」

間に割り込むようにアルが話す。

「もし、ルークがいなければ、アッシュはルークとしてアクゼリュスを消滅させていたかもしれない。……そうだろう?」

ルークの肩を持ってそう言う。

「アル……。」

「ルーク……。」

ティアも、アルと同じように傍に来て……。

「あなたはあなただけの人生を生きているの。それはあなたしか知らない記憶……思い出……それを否定しないで。」

「そう……ルークの言い方だったら……自分自身を否定しているように聞こえるよ。ルークはここにいるんだから。自分を否定なんかしないでくれ。ルークは……オレの大切な友達なんだからさ。」

アルはそういい、肩から手を離し……ルークの手を掴んだ。

「2人……とも………。」

ルークは……言葉に詰まりそうになる……。

アルが友と呼んでくれたこともそう……。

嬉しくて……嬉しくて……それで言葉に詰まったのだ。

だが、最後には晴れたような顔になり……。

笑顔で頷いていた。















【翌日】



宿屋の前にて……。

皆がそろっていた。

「では、バチカルへ行くのですね?」

イオンが……そう改めて聞く。

「ええ。」

ナタリアは躊躇無く頷くと……

「王女として……いえ、キムラスカの人間として……出来る事をやりますわ。」

吹っ切れた……そう感じた。

「そうこないとなぁ!」

ガイも笑顔になる。

「……うまく背中を押してあげたんだね……。」

アルは、アッシュの顔を思い浮かべ……天を向いてそう呟いた。

「?何か言いましたか?アル。」

上を向いているアルが不思議だったのだろう。

ナタリアはそう聞いていた。

「いいや、なんでもないよ。ただ、良かった。そう思っただけで。」

そう言いウインクをする。

「そう……ですか。心配をおかけしましたわね……。申し訳ありません。」

ナタリアは謝るけど……。

「謝る必要なんかないよ。オレ達は仲間なんだから。当たり前じゃないかな?心配したり……信じたりするのってさ?それに………。」

アルは皆を見渡し……そしてティアを見て。

「心配かけた……その言葉最もふさわしいのって俺じゃないかな……。謝るのもさ?」

苦笑いをしながらそう答えた。

「はははは……そりゃそうだね〜。」

アニスも……。

「こいつは一本とられたんじゃないか?ナタリア。」

ガイは笑いながらそう言う。

「ふふふ。そうでしたわね。」

ナタリアも同調したようだ。

「まあ、アルだし?しかたねーって思えてきたんだけど……どうなんだろ?」

ルークは腕を組みそう言う。

「まぁ〜 それを上手く止めるのがティアの役割なんですからね?しっかりと頼みましたよ?」

ジェイドがからかう様に……そうティアに言うが。

「そうね……。任せて。ちゃんと見てるから。」

ティアは笑顔でそう返した。

「……注意します。」

アルも……慌てず普通に……。



「おんや〜〜〜??」

「これはこれは……」


ジェイドとアニスは直ぐにピンときたようだ。


「はははは……。お2人ともよかったですね。」

イオンも笑いながら祝福をした。

どうやら……周りはわかっていた事だが両思いとなった。

互いに確かめ合ったか、もしくはアルが告白したか……。

聞く事は野暮だ。

だから、笑顔でそう言っていた。

「あ……うん。ちゃんと誓ったから。ティアに。」

アルは恥かしそうにしてはいたが……。

ちゃんとそう言っていた。

「んも〜 からかう楽しみがへっちゃったね〜。」

アニスはアニスでそう言うけど……。

笑顔でおめでとうと。

勿論……その場にいた皆が……祝福をしてくれた。


「……あっ ありがとう。でも……早く出発しましょう?急がないと…。」

「そう……だよねっ?」


少し顔を赤らめながら……。

アルとティアは前へ……。


その姿も微笑ましく……場の空気が一層に和んでいた。









-108-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




テイルズ オブ エクシリア (初回特典:「15th Anniversaryプロダクトコード」&「PS3カスタムテーマ(全10種)プロダクトコード」同梱)
新品 \8000
中古 \3070
(参考価格:\8379)