小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#106 父と娘


























そして……。

場所は変わり……。

【光の王都 バチカル】

一行は、正面から堂々と入っていった。

勿論それは門兵にもバレバレだ。

だが……、逆に戸惑いを隠せないようだ。


「な……ナタリア殿下……」

「お戻りになられるとは……」

戸惑ってはいたが……。

直ぐに武器を構えた!

「覚悟はよろしいのですか!」

2人して……武器を突きつけながらそう言う。


「ッ………。」


ナタリアは……やはり自国の兵に武器を突きつけられる……その事がショックなのだろう。

言葉が……上手く出てこないようだが。


「待ちなさい!」


イオンが前へ出た。

そして アニスも一緒だ。

「私はローレライ教団 導師イオン。インゴベルト六世陛下に謁見を申し入れる。」

静かだが……威厳を持ってそう言い放った。

「はっ!……ですが……」

後ろにいるのは逆賊……。

そう言おうとするのを阻止するように。

「後ろの者達は等しく友人であり、ダアトがその身柄を保証した方々……。無礼な振る舞いをすれば… ダアトはキムラスカに対し、今後一切の予言を詠まないだろう!」

一門兵に過ぎない2人には重過ぎる言葉だ。

「イオン様のご命令です。道を開けなさい!」

トドメのアニスの一言。

もはや道を開けるしか選択肢は無かった。

左右に分かれていくのを確認すると……。

「行きましょう。まずは国王を戦乱を唆す者たちに厳しい処分を与えなければ。」

イオンがそういい……。

「ええ……。」

ナタリアも頷いた。

そして……城内へと入っていった。











【謁見の間】






そこでは、まだモース、そして側近が陛下を説得するようにと進言をしていた。

が……。




“ガタァンッ!”



扉が……開く。


「んん?」「ぬ?」


入ってきた者たち……その姿を見て驚きは隠せない。

なぜなら、この場所から逃亡したものたちだからだ。

「お父様!」

ナタリアが……近づいてゆく。

「な……ナタリアッ!」

驚きを隠せないのは陛下も同様だ。

「ざ……罪人がなz“ギンッ!!”ッッ!!」

モースが、何かを話そうする。

それは火を見るより明らかなのだ。

だから、アルは先制をうった。

有無を言わさず、眼力で威圧をしたのだ。


「ッ!兵士達は何をッ!」

側近の男がそう騒ぐが。

「ここに兵はいらない筈だ!なぜなら……ナタリアは貴方の娘なんだから!」

ルークがそう叫ぶ!

「わ……私の娘はとうに亡くなった……。」

インゴベルトは俯きそう答えた。

「違うだろ!この場所に……今ここにいるナタリアこそがアンタの娘じゃないのか!」

アルが引き続いてそう叫んだ。

「何で……何でなんだ…?今の今まで……ずっと一緒にいたって言うのに…。なぜ唆されたとは言え……何でそう簡単に切り捨てられるんだ!家族だぞ?……その家族を!何で今までの思い出までをも否定できるんだ!!」

そう…。

アルはナタリアに比べればほんの一時……。

だけど、彼の【家族】は本当の家族のようだったのだ。

凄く……暖かかった。

本当に………。



「くっ………。」

インゴベルトも…口が止まっていた。

「違さアル。……否定なんか出来るわけないんだ。」

ルークがアルにそういった。

激昂しているアルとは対照的にルークは落ちついていた。

「ルーク……。」

アルは確信いっているようなルークの表情を見て少し安心していた。

……本当に信じられなかったからだ。

だが、ルークの言葉は信じるに足る言葉だった。

「ここにいるナタリアが貴方の娘だ。貴方の中の18年の記憶がそれを否定できるはずが無いんだ。……これはティアの受け売りだけどな?」

ティアの方を見て……そう笑った。

ティアは…頷いていた。

「……突然誰かに本当の娘じゃないって言われても、それまでの記憶は代わらないんだ。親子の思い出は2人だけのものなんだから。」

強く……訴える。

それだけでなく、ルークは心の奥底にある確かなそれを……揺さぶっていた。

「そんな事はわかっている!わかっているのだ!!」

インゴベルトはそう叫んだ!

「わかっていてなんでっ!」

アルも言い返すが…。

「良いのです。アル。」

ナタリアはアルを制止すると。

「ナタリア………。」

アルはナタリアの制止で引き下がった。

彼女自身がインゴベルト……【父】に伝えたいことがあったようだ。

ナタリアは前へと歩み寄る。

「お父様。いえ……陛下。」

そして、跪いた。


「私を罪人とおっしゃるのならそれも良いでしょう。……ですが、どうかこれ以上マルクトと争うのはおやめください。」


ナタリアは……父の言葉を受け入れながら……。

そして王族として……真にやらねばならない事を訴えた。

そして……。

「あなた方がどのような思惑でアクゼリュスへ使者を送ったのかは……私は聞きません。知りたくも無い!ですが私は、マルクトの皇帝陛下から和平の使者を任されました。私に対するその信頼を……あなた方の為に損なうつもりはありません!」

イオンが……そう告げる。

つげた相手はもちろん、陛下の隣にいる男にだ…。

「……だが、それでは第六譜石に詠まれた予言はどうなる…?」

インゴベルトは、そう切り出した。

予言では戦争が起こる……。

そう詠まれているからだ。

「予言はもう……役に立ちません。オレっ……私が生まれた事で予言は狂い始めました。」

ルークが……そう言った。

ルークについて……その事が予言から抜けているのだ。

そう……レプリカ。

その存在が……。

「陛下!最早、予言に縋っても繁栄は得られません!今こそ、国を治めるものの手腕が問われる時です!この時の為に、私達王族がいるのではありませんか!」

ナタリアがそう説得する!

「なっ……何を言うか!王族を語る売国奴めが!」

モースが………。

「……………」

アルはそれを聞き……。

怒りが頂点に達しようとしていたが…。

「黙りなさい!血統だけに拘る愚か者!」

イオンがアルの手を引き…一歩先へとでて叱責をする!


「うっ……!」

モースはたじろいでいた。

このままだと万が一にでも戦争を回避される可能性がある。

それだけはなんとしても回避しなければならない事だ。

アルという男の気配は尋常じゃないもの。

その力は六神将もみとめているところだ。

だが……その脅威があろうとも今は説得などされてはならない。

そう考え、止めようとしたが。

予想外の人物からの声が上がった為に、もう何もいえなかったのだ。


「……生まれながらの王女などいませんよ。そうあろうと努力したものだけが、王女と呼ばれるに足る品格を得られるのです。」

ジェイドもイオンに続いた。

「そう……そうだ。オレは……町中の皆に慕われているナタリアを見た。故郷で……必死に街の人たちを助けてくれているナタリアの姿も見た。……真の王女っていうのは、決して血統なんかじゃないんだ。」

アルは、暴力と言う手段に出ようとしていた自分を恥じ……皆に続きそういった。


「私に……皆が言うような品格があるのかはわかりません。……でも私は陛下のお傍で18年間そだてられました!その年月に懸けて……。」

ナタリアはまっすぐ陛下の目を見て。

「私はここに宣言いたします!私は……私はこの国を愛するが故に、マルクトとの和平を望んでいるのです!」

その言葉を聞いた。

そしてナタリアの真っ直ぐの目も……見た。

インゴベルトは……。

「……それで、私に何をしろというのだ。」

表情を……落とし、そう聞いた。


「それは マルクトと平和条約を結び。外郭を魔界へ降ろす事を許していただきたいのです。」


ルークがそう訴える!


「なっ!なんと言う事を!!」

側近の男は戯言を聞くようなそんな感じで返事をしていたが……。


「よかろう……。」


インゴベルトは……低くそういい……。

頷いた。


「へ……陛下っ……。」


モースは信じられないような……そんな顔つきだ。


「叔父上!本当ですか!?」


「………本当に……?」


ルークとアルが喜びを露にしながら……そう聞き返す。




「なりませんぞ!陛下!」

「マルクトは長年の敵国ですぞ!?こやつらの!戯言など!!」



必死に止めようとするが……。

陛下・インゴベルトの決意は固いようだ。



「だまれ!我が娘の言葉を戯言などと愚弄するな!」



モース達を一蹴した……。



その言葉に……喜びを隠せない。

「お父……様……。」

「ナタリア……。お前は私が忘れていた、国を憂う気持ちを思い出させてくれた……。」

ナタリアは……涙を流し……。

「お父様……。私は……王女でなかったことよりも……。お父様の本当の娘でなかった事の方が……。とても……とても……つらかった……。」

その涙は止まらず…。

流れ落ち続けていた……。

泣き崩れるナタリアを……玉座から降りてきたインゴベルトは抱きしめた……。


「……確かにお前は私の血をひいてはいないかもしれぬ。だが……お前と過ごした時間は……お前が父と呼んでくれていた時の事は……忘れられぬ……。」


「ッ……!お父様……。」


ナタリアは……暫く父の腕の中で泣き続けた……。




















「よかった……。ほんとに………。」

アルは……アルも、崩れ落ちそうになるのをこらえていた。

【家族】が争う……。

そんな事、あってはならないんだと思ったからだ。

絶対に……そんなの……否定したいから………。

「アル。」

イオンが……肩を優しく触る。

「あっ……イオン。ありがとう。オレ……とんでもないこと……するところだったよ。」

モースの時の事だろう。

そのアルの怒りと言う名の剣をまさに抜こうとした時に止めるように入ってくれたのがイオンだった。

「いいんですよ。……貴方はとても優しいんです。……だからどうしても許せられなかった。私も理解できます。」

イオンは笑いかけた。

「ですがね?感情で大局を見誤るのはよくありませんよ?しっかりとしてください。アル。」

ジェイドもそういう……

「うっ……。その……ごめん……。」

アルは謝る。

「ですが、貴方にも苦手なこともある。そう思えば安心もできますよ。」

ジェイドは笑いながらそう言っていた。

「苦手………。」

アルは呟く……。

「はははは……オレにだってそれくらいあるよ。」

苦笑いしながらそう答えた。



「アル……。」

そんな時、インゴベルト陛下がこちらに声をかける。

「は……はいっ。」

驚きながら慌てて返事をしたため、声が裏返っていた。

「そなたにも大切な事を……思い出させてくれた。礼を言う……。そしてすまなかった。……アクゼリュスでの事はきいていた。そなたに言われた言葉は生涯……もう 二度と忘れはしない。」

そう言っていた…。

ナタリアを抱きしめながら……その目は僅かだが、一筋の涙が流れていた。

「あ……ッ。いえ……そんな……。オレの方こそ……無礼な振る舞いをして……。」

アルの方も頭を下げ……わびる。

その姿に自然と一部を除いた回りは笑顔になっていっていた。












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