小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#108 滅びた街の真実




























そして、運命の日……。


場所は【魔界】




【二国会議会場 監視者の街 ユリアシティ】




「話には聞いていたが……驚いたな。」

到着したインゴベルト陛下の第一声はそれだった。

無理も無い事だろう。

同席したファブレ公爵……【ルークの父親】も、

「ええ……大地の下にこのような海や街が……。」

同様に驚きを隠せなかった。

【上】とは明らかに違う……。

この目で見るまでやはり、現実感が無かったのだろう。



そして……。






「ご足労いただいたのは他でもありません。」




ティアの一声から、始まる……。

今は、キムラスカ王国の王族しか到着していないが、マルクトの方はジェイドが説明しているはずだから問題は無いのだ。


「外殻大地の降下先となるここ魔界を……実際に皆様の目で見て置いていただきたかったからです。」


まずはそう説明した。

全ての作戦が成功すれば、ここ【魔界】が全ての者が暮らす場所となるからだ。

……当然の考えだと思われるだろう。



「テオロードさん 協力ありがとうございます。」

ルークは、小声でテオドーロにそう伝えた。

「……構わんよ。お前達を信じる事にした。予言から外れたこの世界を、われわれも救いたいのだ……」

テオロードはそういい頷く……。

「………よかった。」

アルは咄嗟にそう呟く。

予言……スコアに執着している。いや、スコアしか信じられない。

そう言った人間が大半を占めていたとすれば……?

何もかもヴァンの思い通りになるだろう。

明日……仮に彼がこの世界を滅ぼそうとしていたら?

スコアではそのようなことは詠まれていない。

人々は……国を代表するものも同様に、

その日をありきたりな日として……。

永遠に…予言通りに進むと疑うことなく……

最後の日を迎えていただろう。

そう容易に考え付くところが自分でも、恐ろしい……。


「アル……」


テオドーロが口を再び開いた。

「ッ……!はい?何でしょう?」

アルはまさか話しかけられると思ってなかったからか、少し驚きながら返事をした。

「すまなかったな。あの時のそなたの考え……永久に心にとどめておく事を約束する。」

そう言って、目を伏せた。

「い……いえ…… そんな……。」

アルは少し戸惑っていたが……。

「いいじゃないか。アル。信じてくれて…、お前の考えもって言ってくれてるんだしさ?」

ルークはアルの肩に触れながらそう言う。

「あ……そうだね……。ありがとうルーク、それにテオドーロさんも。」

「はは……」

「ふむ。」

ルークもテオドーロも苦笑いしていた。

特にテオドーロは、自分の方が謝罪をしていると言うのに、礼を言われるとは思ってなかったようだ。

彼の性格……彼についてはティアより、きかされていた。

その事が無ければ、戸惑っていたかもしれないな。


「ふふ……。」


そんな3人を見てティアも笑顔になっていた。




そして、暫くして……。



「お待たせしました。」


キムラスカに続き、マルクトの王族、そして、イオンも到着し、席に着いた。




「調印を交わす前に……提案をさせてください。外殻降下計画にはあとひとつだけ問題があります。」

ティアがそう説明する…

「それは、この魔界を覆っている瘴気です。大佐の……マルクト軍ジェイド・カーティス大佐の案で解決するとは思うのですが、万が一にも、再び瘴気が現れないと言う保障はありません。そして、この瘴気から逃れるために人々はかつて外殻大地を作ったのです。そして、その外殻大地でさえ……瘴気に襲われていた所もあります。」

そう説明を続ける。

「なるほどな……つまり、国を超えた共同研究が必要ということだな?万が一に備えてとは言え、実際起こってしまい、どうしようもない。じゃ話にならないからな。それも平和条約の条項に含めるべきと。」

ピオニー陛下がそう聞き返した。

その答えにティアは頷き……。

「キムラスカの音機関研究所シェリダン ベルケンド。マルクトの譜術研究のグランコクマ。そして……魔界大地復活の要でもあるここユリアシティ。その全てが協力し合う必要があります!」


ティアの言葉に……。


両国の陛下は互いに向き合い笑みを見せた。


【互いに異存なし。】


聞くまでも無い、そう判断できた。


「マルクト皇帝 ピオニー九世陛下。キムラスカ国王 インゴベルト六世陛下。それではよろしいでしょうか?お2人とも。」


二国の中立に位置する、ローレライ教団 導師イオンが入り……。


「平和条約締結調印の署名を……」


そう……署名をしようとしたその時だ!
「ちょっと待った!」



ガイが、前へ出た。

「ガイ!?一体何を……ッ」

皆驚いていたがルークが一番反応し、ガイの方へ行こうとしたとき、

アルが、ルークの肩を掴んでいた。

「悪いな、ルーク。それにアルも。……これは大事な事なんだ。」

そして……。

緩やかな速度で、前へ出て署名を手に取る。


「……これと同じような取り決めが16年前にも合ったな……?【守れるのか?今度は?】」


鋭い目つきで、インゴベルトの方をにらめつけた。

「ホドの時とは違う!あれは我が国に平安をもたらすために!」


“キッ!!”


その言葉を聞いたガイは素早く剣を抜き、首元へ構えた!

「そんな事のために、ホドを消滅させたのか!あそこには、キムラスカ人もいたんだぞ!」

ガイの怒りに満ちた表情……。

初めて……見た気がした。

「なんだと!?お前は一体…」

インゴベルトは驚きの表情でガイの顔を見る。



「……和平の証としてガルディオス家に嫁いだ……オレの母親みたいな人間がなッ!」



そう……そのキムラスカ人というのが、ガイの母親……。


【ユージェニー・セシル】なのだ。


それを聞いたファブレ公爵は立ち上がり……

「ガイ…。復讐に来たのならば、私を刺しなさい。忘れもしない……ガルディオス伯爵夫人を手にかけたのは私だ。」

告白……。

「父上!?そんな……」

ルークはその事実を聞いて驚愕した。

「ッ………。」

アルは……黙って聞いていたが……。

ガイの負の感情……。

恨み、憎しみ……。

そして、復讐。

今のガイが、そんな事考えてない。

あの時の目はそんな事をする目じゃない。

直ぐにそれはわかった。

だから…・・・ガイを心から信じれた。

そもそも、初めからガイの事は信頼していた。

当然だ、仲間なんだから……。

だけど……。



「戦争だった。勝つためにはなんでもした。息子を鉱山都市に送ることで……ルグニカ平野の戦いを発生させたようにな。」


「ッ……!」

アルは……その言葉に再び強く反応する。

その街とは……。

その……鉱山都市と言うのは………。



「納得づくものはまだいい……何もかもご存知でと継がれた母親もな。だが、何も知らずにホド崩落の犠牲になった者たちは?戦争で……殺されていった者たちは……?オレの姉上もホド戦争で死んだ。ファブレ公爵……アンタの白光騎士団の剣からオレを庇って……な?」


その時の光景が……再び蘇る…。

姉は……切りつけられながらも……ガイに覆いかぶさる。

それは仕えていたメイド達も……。

【命の盾】

それでガイは救われたのだ。


「オレが女性に近づけないのは……あの時のトラウマのせいだったんだ。どうして今の今まで、忘れていたんだろう?こんな大事な事……。姉上は……姉上は……。」


ガイは……

涙を懸命にこらえながら……。


「姉上はオレを……命を捨てて守ってくれたのに……!」


そう言った……。


その言葉に……インゴベルトもファブレも……言葉を失っていた。

その時……意外な人物が……声を出す。



「剣を向けると言うのなら、オレの方がふさわしいかもしれんぞ?ガイラルディア・ガランよ。」



それはピオニー陛下だった。

「!!?」

突然の事に当然ガイは驚きを隠せない。

それは皆も同様だった。

「ぴ…ピオニー陛下!」

インゴベルトだけが……何かを知っている。

そう言う表情だった。

「黙っていてもいずれはわかる事です。インゴベルト陛下。……我々は知る真実を全て話すべきだ。」

そういい……。

表情を引き締めなおし……。

「ホドを滅ぼしたのはキムラスカではない。ホドは自滅した……いや。」

ここから先の言葉……。

それが本日一番の驚きだった。




「我々マルクトが消したのだ!」















話は……皆をあのホド戦争の真実へと誘っていった。


「マルクト領ホド島……嘗て、あの島では多数の譜術実験が行われていた。公にはすべてが開戦の直前に引き上げたとされているが……真実は違う。【間に合わなかったものがひとつだけあった】」


それが……。

島を最悪な自体へと導いた。


「16年前……戦渦に取り残された孤立無援の実験施設の中で……研究者達はその装置へ被験者をつないだ。そして彼らは【それ】を人為的に引き起こした。【それは】非情に強大で……島ひとつつを完全に消滅させるほどのものだったんだ。」


島を……消滅……。

「完全に……消……滅?オレの……故郷のような……?それって……」

「まさか………。」

ルークもアルも……気が付いた。

【それ】の正体……。

そう……


【超振動】




「そうだ……。貴行らの想像通り。超振動だ。そして、その施設が扱っていたのは。同位体複写技術……フォミクリーだ。」






皆が……言葉を失う……。


次に発したのはナタリアだった。

「何故です!?追い詰められたとは言え、なぜ彼らはそのようなことを!!」

その問の答えは簡単だった。

「……命令だったからですよ。オレの父、前マルクト皇帝カール5世の。『その技術をキムラスカに渡すな』ホド島とホドにすむ人々もろとも……“全てを消滅させよ”とな……。」


ガイは……まだ、驚きを隠せない。

「そして……ホドは消滅……キムラスカの仕業だと発表させた……?」

「兵や国民は父の言葉を信じた。そう……ガイ、おまえのようにな。」

ピオニーは続けた……。

「それによって、父は国内の反戦論をも退けてしまった。全く……見事なものだ。あの時……あの日。ホドで起こった真実を知る者はもはやいない。我々のような……ごく一部の人間を除いてはな……。」




………………………………………………………………………………………………



「その被験者はどうなったんだ?第七音素譜術士だったんだろ?生き延びている可能性は……。」

静まり返った中……。

ルークがそう聞く。

「……ほど消滅で亡くなったでしょうね。記録では当時11歳の少年だったそうですが……。」

ジェイドが答えた。

「ひどい……子供じゃないですか……。」

アニスも思わず口に出した。

自分と……かわらない歳の……。

「………………。」

アルは……言葉が出てこなかったようだ。

歳は……サラと近しい子だった。

あの……幼けな……歳の子供が、戦争のために?

そう思ってしまったら……。


『この世界の……醜さ……』


誰にも聞こえない程の大きさで呟く。

嘗て、ヴァンから聞いた言葉だ。

その言葉が……頭の中を駆け巡っていた。



「ガイ、貴方なら……その少年と顔を合わせたことがあるかもしれませんよ。」

ジェイドがそう言う。

「オレが?」

「その少年は騎士の息子だったそうです。ガルディオス伯爵家に仕える……たしか、フェンデ家といいましたか。」



「「「!!!!」」」



その言葉に驚愕するのは3人。

「フェンデ……11歳の少年?そんな……」

ティア……。

「その……その名は………。」

アルも同様だった。

「何だ…?知っているのか?」

ルークは驚いていた。

ティアやアルが驚いている事に、

いや……ティアはホド出身だから知っているのかもしれないが、アルは?

「ルーク……キミもよく知っているよ。」

アルは、静かに答えた……。

「オレが……?」

「ああ、」

全くみに覚えが無い事だが……アルの表情。それをみて冗談の類ではないとわかった。

「ティアの本名……オレは、以前に教えてもらった事があるんだ。」

アルはそう続けた……。

「私の本名はフェンデ……メシュティアリカ・アラウ・フェンデ。」

ティアがそう言う。

「え……?」

その本名の中で……聞いた言葉。

真実を導く名。

【フェンデ】





「まさか……被験者のヴァンデスデルカという少年は……!」

ジェイドも気が付いたようだ。



「ヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデ……」







……………………………………………………




「私の兄……ヴァンよ。」





……………………………………………………







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