#111 若い世代の為に
【アルビオール】
ルークは……ひとり、考え事……をしていた。
考えてるのは……。
それは……勿論嘗ての師……。
今でもたまに……思う。
こんな事をしているのにも関わらず…。
嘗ては本当に優しい師匠だった。
記憶の無い自分を……いつも優しくしてくれた。
だが、裏切られた……。
そして、出来損ない……とも言われ捨てられた。
……でも 師匠の過去を聞いて……。
「ルーク……。もし 兄に同情しているのなら……その必要は無いわ。彼の計画はどんな理由があっても許されるものじゃない。」
そう……ルークが考えていた事……それをティアは的確に言い当ていていた。
「っ……。」
ルークは……すぐには言葉が出なかったが……。
だが直ぐに思った
「……やっぱり強いな。ティアは。」
そう……ティアについて。
それは……強い。
その言葉だった。
「え?」
ティアはそう言われる意味がよく分ってなかった。
「ティアだって……いや、ティアの方がショックだった……そうだろ?ホドと師匠の事。……実の兄貴だもんな?……なのに、オレ……気の利いた言葉が出てこない。もどかしいんだ……いろんなことが……オレに……力があったら……。」
ルークは……そう悔やむ。
力になれない……その事を……。
「ルーク。」
ルークの背中が凄く……辛そうにしていた。
後ろで見ていてよくわかる。
「あ……アル。」
アルも傍に来ていた。
「ひとつひとつをこなして行こう。力……確かに必要だけどさ……。【仲間】って言う力……凄く強大……だよ?ひとりなんかよりずっと……ずっと……。仲間がいてくれたから乗り越えられた。そんな事いっぱいあるから……。」
アルは……ルークにそう伝える。
自分がそうだったから。
どれ1つ……何をとっても、
自分だけの力なんて思わないから。
思ってもいないから……。
「アル……。」
ルークは……アルのその力強い言葉に………救われている。
そう思っていた。
「アルの言うとおり……1つ1つをこなして進んでいくしかないわ。貴方には……みんながついてるんだから……。」
ティアもそう言い笑った。
2人のその言葉を聞いて……。
ルークはうなずいた……。
そして……強く思った。
「本当に……真に強い男って……アルの様な男を……言うんだな……。ティアが……惚れるわけだ……。」
そう……思ったのだ。
アルの様な男になりたい……とも思った。
本気で……。
「ん?」「え?」
ティアとアルには聞こえてなかったようだ。
聞こえてたら、多分真っ赤になりそう…… 苦笑
それはルークも容易に考え付く。
「はは……なんでもない。ありがとな?アル……。ティア……。」
ルークは笑っていた。
さっきまでのもどかしさが……嘘のようだ。
体が……凄く軽くなっていた。
場面は再び……。
【シュリダン】
そこは……そこにはいつもの平和な町並みがあるはずだった。
だが……。
今は違った……。
死臭が漂ってくる……。
職人達の……死体が一面に転がっていたのだ。
それを起こしたのは。
「お前達だな……?あの船を改造しているのは。」
リグレット……そして、その部下達だった。
そして、彼女達が前にしているのは……。
生き残ったアストンたちだった。
「覚悟してもらおう。」
タルタロスを改造しようとしてる職人達を……全て抹殺する。
地核の振動を止めようとする者を全て……
計画を知るもの。
そして、何より……。
その様な装置を破壊する。
その絶対的で圧倒的な戦力の差がある状況だったが……。
「……年寄りをなめるなよ?わしらは案外しぶといんじゃ。」
臆す事がない。
自分たちの誇りを……守るために。
そして……この世界の未来を守るために。
そして……。
「こいつは“ゐ組”と“め組”初めての共同作業……おまえらヒヨッコどもには指一本触れさせんぞ!」
何より……仲間の為に。
自分たちより遥かに若い子供達の為にだった。