小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#115 心中ゲーム アル vs シンク









































その惨状をみなが目の当たりにする……。


「な……何コレ!!」

「酷い……無茶苦茶だ。」

「侵入者がいた……ってことか!」



動力室で……主力の配線であろうコードが滅茶苦茶になっているのだ。


「しかも相当趣味の悪いやつのようだ。」

「どう言う事……?」


ガイの言う趣味の悪い……その言葉。

悪い予感しかしない。


「このままだと……この船はまもなくつぶれるぞ!」





「「「「「「ッッ!!」」」」」」










「くそっ!!主力は三系統。予備も三系統補助が……だめだ!確実に熱暴走する!もって……30分?いや……25分!? くそっ よりにもよって圧力中和装置の主力動力配線を全部ぶったぎりやがって!!」



ガイは必死に考えを巡らせる。

「でも 動力は生きてるんだ!全部繋ぎ直せば……だが!それにはあまりにも時間が……。」


ガイの苦悩を見て……。


「私たち……死んじゃうの……?ここで……?」

アニスが……不安そうにそう聞く。


「逃げるだけなら……できるんじゃないかな。アルビオールがあるんだから。」

アルがそう答えた。

表情は険しいままだ。

「でも……この船は……。」

表情は……沈む。

「そうだ、この船はつぶれる!そして、同じような振動発生装置は二度とは作れない。……イエモンさん達はもういないんだから……。」

ガイも肯定した。

「世界最高の人たちが……命に変えても作ってくれたもの……だから。……そうだ!ジェイドは!?」

アルは、ジェイドの方を見た。

「……残念ながら音機関は私の専門外です。あまりにも時間が無さ過ぎる……無理です。こんなにも複雑な配線。技師の手も借りずに暗闇の中30分足らずで繋ぎなおすなんて……。」

ジェイドが……そう言うなんて……。

もう……絶望なのか……?

ここまできて……。

そんな状況の時!


「いや。」


声をあげたものがいた。


「ここには確かに技師はいない……そして時間も無い。状況は最悪だ。」


そう言うが……その言葉の一つ一つに絶望は感じなかった。

そう……みなぎる自信を感じた。





「だが、ここにはガイ様がいる!音機関好きのガイ様がな!」





ガイは立ち上がった!

「ガイ……!!よっし!!手伝うよ!何をすればいい!」

アルは、直ぐに駆け寄った!




「アル、それに皆!制限時間は20分だ!侵入者を全力で探し出せ!予備動力を全力で死守するんだ!オレがこの船を生き返らせるまで!!」




ガイのその指示に一斉に皆が動いた。

ガイと頭脳を借りられるジェイドは、配線の修理。

そして、アニス・ナタリアはイオンの護衛。そしてノエルを連れアルビオールへ向かう

残ったアル・ルーク・ティアで侵入者の捜索だ。









アルたちは侵入者を捜索していた際にあることに気がつく。

「……どうしてこのタイミングなんだ…?」

アルが不自然に感じていた事だ。

「え?」

隣でいたティアはアルの方を見た。

「ほら……。タルタロスを止めようとしたら、別に外殻でも……魔界でも良かったはずだ。少なくともここよりは危険が無いんだから。でも……この侵入者。」

「オレ達と……心中するつもりなのか?」


ルークはそう結論図いた。

そう……

一目瞭然だ。

今この場所は惑星の中心。

普通ならば膨大な圧力で押し潰されるところだが、世界最高の技術で何とか保っている状況だ。

そんな装置を……壊してしまえば、アルビオールで飛んだとしてもアルビオールを護ってくれてる障壁もつぶれてしまう。

助かる可能性など……無いのだ。




『心中?』




そんな時……

前から……声が聞こえた。

その男は……嘴の様な仮面をつけていて、顔は見ることが出来ない。

だけど、よく知っている男……。

そう……。


(六神将の1人 烈風のシンク)



「……上等だね。楽しもうじゃないか。この……生きるか死ぬかの心中ゲームをさ?」



不敵に笑いながら……暗闇から姿を現してきた。














「さて、ゲームをしようよ。アンタ達が圧力中和装置を復旧するのとこの船がつぶれるのと……どっちが早いかな?」

シンクはゆっくりとした足取りでこちらへと歩み寄る。

「……お前正気か?間に合わなければ死ぬんだぞ!お前も一緒に!」

ルークは……驚愕の表情でこちらをみた。

「上等だね!その時は泥と共に沈むまでさ!この船をお前達の墓場にしてやるよ!!」




“ギュンッ!!!”




ゆっくりとした動きから突如!

高速に動き拳をルークに向けて放った!!

まさに烈風の名に相応しいほどのスピードだ。

だが……。





“バシィィィィィ!!”




ルークに当たる寸前でその拳は防がれる。

「チッ……やっぱり お前だけは別物だったな。」

シンクは舌打ちをすると、バックステップで距離をとった。

「……ルーク!ティア!」

アルは、シンクから目を逸らさないようにしながら2人に叫ぶ!

「ここは オレ1人でいい。2人はガイ達のとこへ!」

両手で行くように促す。

「なっ!何言ってんだよアル! 1人で何とかなる相手じゃないだろうが!」

ルークは反対だ。

それは勿論……。

「私もよ……!約束したじゃない!もう無理は……無理は決してしないって!」

ティアは、激情があふれ出るような表情でアルにそう叫ぶ!











ティアは……彼を支えると決めていたんだ。

その彼を……1人になんてさせたくない。

彼を失うなんて……考えられないから!






だが、ティアとは対照的にアルの声は優しく……

そして、自信に満ち溢れていたようだった。




「大丈夫だよ…!とっておきがあるんだ!オレなんかよりもさ?ガイたちの方が心配なんだ。オレがシンクを止めれても。シンクがさっき言ったように、中和装置がおじゃんになったらどうしようもないからね。あの手の作業は人数がいすぎても問題ない!それに……。」

アルは、声が穏やかになる。

「信じて。……オレは無理なんかしてないよ。侵入者を探すのには人手が要ったけど、見つかればそうでもない。オレは……この男に【話】があるんだ。」

強い決意を再び感じる。

アルの言葉はそもそも全てにおいて強い想いがある。

そう感じるのだ。

今回もそうだった。



「…………。」



シンクは、ただ黙ってアルを見ていた。

この時……明らかに油断しきっているティアとルークは、はっきり言って良いカモだ

だが……。

2人を狙う事は【不可能】だった。

……目の前の男。

この男が見ている。

それだけで、……この場に縫い付けられている気分だった。






シンクのその視線に勿論アルも気がつく。

だからこそ……。

最大級の警戒を怠っていなかった。








「でも……ッでもッ…!」


ティアはまだ納得が行かない。

1人にするんだ……アルを……また……。

そんなの……ッ!!


「ティアっ!」


アルは、ティアに叫ぶと。

「ッ!!」

ティアは心配そうに見ていた。

「大丈夫だよ。信じてよ……。もし、約束……破ったら ティアの言う事。何でも聞く!なんで……もね?だから……この場だけはお願い。」

アルは切実に願った……。

「ッ………。」

だが、ティアはこの時に。

その言葉には、決意だけではない何かを感じた。

そして、急速にティアの頭は回転する……。




―――……この場にいては後に問題が起こるのではないか?
        アルは、シンクと話がしたいといっていたが。
        その話を聞いてしまえば……何か問題があるのではないか?




ティアはそう考えた……。



アルは自分の事に不利になる状況はなんでもない。

例え状況が悪くなろうともだ

寧ろ望んで受け入れる。

それが仲間の為なら……。

守るべき人のためならば……。

全ては自分の責任でカタをつけようとする。






そして……他の仲間の為に……自分が避難を浴びる。

この時、自分自身をひとりにしろと言えば、拒否されるのはわかってて言っているのだろう。

それでも……






「…………わかった………。」




ティアは、首を縦に振る。

「ティアっ!!」

ルークはまさかティアがアルを1人にするなんて考えていなかったせいか……驚きを隠せなかった。

「ルーク!……行きましょう。アルの言うとおり……。侵入者を……シンクを見つけた以上……ガイ達の方が心配だわ。船が潰れてしまっては全てお終いだもの。」

ティアは、ルークに行くようにジェスチャーをする。

「ルーク。心配するなって。軽く片付けてから向かうよ!」

顔はシンクの方に集中しているから表情は見えなかったが……。

その顔は笑っている。

後ろからでもわかった。


「ッ……わかった。アル!!……終わったら助けに来るからな!絶対に!」

「……OK!待ってるよ。」

アルは、サンズアップをして答えた。



ルークは走り出す!

ガイの方へと。



「アルッ!!!」


ティアの声が聞こえてきた。

アルは、振り向く事はなかったが……。

「貴方のお願い聞くんだから……1つは私のお願い問答無用で聞いてもらうわよ!そして……約束守ってよ……!破ったら……絶対許さないからっ!」

ティアはそう叫ぶと……。

ルークと共に暗闇の中に消えていった。



「ははは……これじゃ、約束の意味ないよ。」


アルは苦笑いしながらそう呟く。



「……大した余裕だな?」



シンクは構えつつそう言う。

「そっちこそ。ティアたちをただで行かせるなんて随分優しいじゃないか。」

アルも……同じようだ。

「ふん。……あの状況で後ろの2人を追っていたら、アンタに殺られるって思ったんだよ。」

腕に力が篭っていくのがよくわかる。

「へぇ……オレの事随分と評価してくれてるんだ。嬉しくないけど。」

アルは苦笑いをしていた。

「僕は過大評価はしないんだ。本当に思ったことしか言わない。お前に集中しないといけないようだからな……。」

シンクはフッと笑うと。

「でも アンタ……僕を舐めてるよ。以前と同じだと思ってたら大間違いだ。……今の僕は以前と段違いだよ……。【使ってないもの】もあるしね……。 彼女との約束は守れないさァッ!」




“ドンッ!!!!”




纏うその力……。

そして雰囲気。

見ているだけで十分に伝わる。

恐らくはあの時にラルゴに止められていた力……。

だが……。



「それは 好都合だな……。」



アルは……笑っていた。


「?」


シンクは笑う意図がわかっていないようだった。

アルは構えなおすと……





“ドンッ!!!!”





シンクと同じように構え……そして、譜術の力を解放した!

その力は……その場にいるもの、全てを吹き飛ばしかねない圧力を秘めていた。




「以前は……物足りないって思ってたところだ!」


「チッ!ぬかせぇ!!!」





“ズギャアアアアアッ!!!!!”





2人の拳と拳……。

ぶつかり合ったその瞬間。

その周辺の空気が弾けとんだ。










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