小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#116 シンクの正体









































「お前ら!何で戻ってきたんだ?」

動力室でガイが奮闘している時……。

ティア・ルークが帰って来た事に驚いていた。

「シンクだ……。このタルタロスの侵入者は。」

ルークがそう伝えた。

「シンク……。それで?あなた方は【2人】だけで戻ってきたんですか?アルは?」

ジェイドが立ち上がりそう聞いた。

「……アルはアイツを止めるって。1人で十分だって。……ガイ達を手伝ってくれって。」

ルークは複雑そうに俯いた。

「……また、アルに無茶をさせるつもりですか?ティア……貴女らしくもない。」

ジェイドは心配そうな表情と呆れている表情が混じったような感じだった。

「アルはッ!……アルはシンクと話がしたいって……。無理はしないって言ってくれました……。私と【約束】をしてくれました。……彼の目も見ました。信じられます!アルの現時点での心配事は中和装置だけだって。だから……。これを直したら直ぐにアルのところへ戻ります。それも……彼と【約束】しましたから!」

ティアは平常心ではいるが……アルの事、信じているが……。

やはり心配なのだろう……。

それは直ぐにわかった。

彼女の顔を見て……。







ジェイドはそれを確認すると。

「ふぅ…わかりました。なら……」

ジェイドは配線の一覧表を取り出し!

「あなた方にも手伝っていただきますよ!直ぐに終わらせましょう!ガイ!指示をください。」

「……ああ!任せておけ!」

ガイは頷き……

そして、皆で作業を急ピッチで行っていった。












“ガキィィィィッ!!!!”





2人の攻防は続いていた。

その実力はほぼ拮抗していたが……。


「ふん……ッ!!」

シンクは腕に譜術の力を込め………。





“ズガアアアアッ!!”





アルを殴りつける!

「くっ……!」

アルは、その攻撃を肩で受けて流していたようだ。

だが、僅かながらおされていた。



シンクはゆっくりと歩き出す……。


「どうしたんだ?物足りないんだろう?それとも 強くしすぎたのかな?」

余裕綽々と言った様子だ。

「いや……。」

アルの表情は暗い。

あの場で ああは言ったものの……。


この時、アルの頭の中には、別のことを考えていたのだ。

そう……。

今までで聞いた言葉……。

全ての情報を聞いて……紡いだ結論。



「なぁ……シンク。」

だからアルは、話しかけた。

全てを……知るために。

あの時、ルークたちの前では聞きたくなかったことを……。


「?なんだい。命乞いでもする気かな?」


シンクは完全に天狗になっていたようだ。

今は、【例の力】を十分に使っているのだ。

例え【劣化】しているとは言え、この力は相当なものなのだ。

……目の前の男の力がいかに未知数だとしても……。

敵わなかった、とシンクが考えても不思議ではなかった。

だが……、

次のアルの言葉でシンクの表情が一変した。



「………お前は、やはり……イオンのレプリカなのか?」



「ッッ!!」


アルの言葉は正に予想外なのだ。

その動揺……それを見ただけでよくわかった。


「へぇ……。アイツがしゃべってたのか?」

シンクは直ぐに表情を戻し、そう聞く。

「いや、イオンは勿論 他のみんなだってそんな事言ってないよ。」

アルは、ゆっくりとした動作でシンクのほうを見た。

「なら、何故わかったのかな?」

仮面で口元しか表情は見えないが……。

激情が表れているのはよくわかった。

「初めの【ピース】はお前がカースロットをガイにかけたところだ。」

アルは、思い出しながらそう言う。








ガイにかけ……。

そして、ルークを襲わせた。

記憶の奥底の感情をゆり起こして……。

そこまでならば、大した情報じゃない。

だが、問題はイオンが言っていた言葉。




【導師にしか伝えられていないダアト式譜術の1つ。】




……だ。


導師にしか伝えられていない譜術なら なぜシンクが知っている?

いくつかの可能性はあった。

その技術を盗むと言う可能性もある。

……そうであってほしかった。

でなければ、どちらかが……レプリカだと言う可能性が濃厚となる。

いや……。

あるいは……。




「なるほど、やっぱり頭が切れる……。」

シンクは素直に認めた。

「そうだ。僕は……」


“ガチャ……”


シンクは仮面を外したのだ。


「出来損ないのイオンさ。あの7番目と違ってな。」

「……!」


その顔は……イオンと瓜二つだった。




「……それで?結局お前は何が言いたいんだ?」


シンクはそう聞く。


「お前も、そして……今オレ達といるイオンも……【導師イオン】のレプリカなんだろ?何でこんな事をするんだ?ルークも……アッシュのレプリカだ。だけど、ルークはお前みたいに投げ出したりはしなかった!……レプリカだってことを受け入れてそれでも前に進めていたっ!……お前からはそんな感じが全くしないんだ!」


感情をむき出しでシンクに叫んだ。

だが……


「……必要とされているレプリカたちしか見てこなかったお前に何がわかる!!」



シンクも同様だ。



「アイツは……7番目のイオンはもっともオリジナルに近かった!だからあいつが選ばれた!僕たち屑と違ってなぁ!!そう、僕も他のイオンも捨てられた!生きながらにしてザレッホ火山の火口に!……気まぐれのヴァンがその1つゴミを拾い上げた。それが僕だ!」



「ッ……。」


アルはシンクの叫びに絶句する。

【捨てられた】

その言葉……。

あまり聞かない言葉だからだ。

……いや、一通りは知っている。

この世の中……信じたくは無い、認めたくは無い……が。

親が子を……。

家族を……

捨てる。そう言った事は間違いなくある。

戦争のこの時代……仕方の無い事なのだ。

生きる為にも……。

だが、どうしても納得したくなかったんだ……。



「はっ!ひょっとして、そんな僕に同情してたから力が出せなかった……か?そうか!そうだよなァ!お前もアイツ同様甘ちゃんだからなぁ!」






“キィィィィィィィィ!!!!!”





シンクは地面に手をつけた!


「同情なんかいらないんだよ!どうせ、僕は抜け殻。ヴァンに従ってるだけのな!!予言みたいなものが無ければ僕はこんな愚かな生を受けずにすんだんだ!あいつのやり方なら、予言をこの世から消す事ができる!ヴァンは予言を……そして!!」


“カッ!!!”


辺り一体が光りだした!!




「お前らは僕が消してやるよ!!喰らえ!『アカシック・トーメント!!』」






“ヴァァァァァァァァァ!!!!”





シンクを中心にサークルが出き… 光り輝いた。

いつか……イオンがライガの森で使っていた譜術。

……懐かしいな。

確かに、思い切り 力……出せなかったな。

だって、推測が正しければ、お前だってイオンと同じなんだから。

ルークやアッシュの様に……何処かに絶対心を持っていると思ったから。

だが……今はそう言ってられない。

この力はタルタロスごと消滅を狙っている!







「キッ!!」





アルも同じように手を地面につける!


「ッ!はっ!??」


その姿にシンクは驚きを隠せない。



(この男……まさか……まさかっ!)



導師の技まで……?







「守護極方陣!!!」






“キィィィィィィィィィィィィ!!!!”





シンクが危惧した導師の力ではない。

彼自身の聖なる力の譜術陣だ。



……アルもシンクと同じようなサークルを展開!



「あああああああああ!!!!」

「あああああああああ!!!!」



二つの力は互いにぶつかり合い……!






“ズギャアアアアアアッ!!!!!!!”





その衝撃は、天井を突き破り、

星の中心から、魔界の大地へと消え去った。




















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