小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#118 ローレライ



























「ありがとう。ティア。」

アルは、アルビオールへ向かう途中でそう言う。

ティアが肩を貸してくれているから、凄く楽になっていたのだ。

「そんな事、良いの。……それより……私は、あなたのこと……わかってあげれてなかったみたいだし。」

ティアは……暗かった。

「私は……傍にずっといたのになぁ……。貴方のことわかってあげられないなんて……。」

更に暗く……。

「えっっ!テッ!ティア!!そ……そんな事ないよっ!」

支えてくれて凄く感謝してるのに!

そんな顔してほしくない!

「ティアだから!オレはオレでいられるって!いったよっ!?間違いないんだっ!それにオレは!」

アルは必死の表情でティアの肩を掴む!

そのティアの顔を覗き込んだとき!



「……なんてね?」



ティアは、笑っていた。

声のトーンから考えられないような表情だった。




「………へ?」




あえて言うなら……悪戯っぽい顔をしてる……。


「 ずっとずっと アル……暗い顔してたから。笑顔になってくれて私は嬉しいし…… こんな時だからこそ、笑顔でいていてほしいから。」


「ッ〜〜〜〜///!!もうっ!」


アルはどうやら、漸く図られたことに気がついたようだ!

「あはは……ゴメンなさい。でもね?」

ティアはすっと微笑むと……。

「わからない事が何も無い……なんてありえないって思うの。どれだけ心を通わせていたってね?だって……好きな人を傷つけない為に……嘘をつくことだってある。それは優しさからきてるんだもん。」

「あ……ははは///そうだ……ね。気にし過ぎだって よく言われるけど……少しは自重するよ。本当に……。」

「………アルはその方が良い。ずっと無理してたんだから!」

笑顔!

「あははは……だよね。」

アルも笑顔になってティアを見つめた。



だが……




その時にある事に気が付く。

「……?ティア……?大丈夫?」

その笑顔の奥底に……。

何かを見た。

本当に一瞬だったが……

とても苦しそうな……無理をしているような表情を。

「え……?」

ティアは少し驚いていた。

「そのっ………表情が……辛そうにしてたのが見えたから。」

アルはそう言う。

「あっ……大丈夫!ちょっと疲れちゃったみたいだから……。アルのせいだからね…?」

ティアはそう言って笑っていた。

……そう言われたら 何もいえない。

「そ……そっか。ゴメンね……。これからはほんとに自重します。信頼してない!って思われるの……もっと嫌だから。」

「バカね……。そんな事思うわけないじゃない。あなたの事……。皆よくわかってるわよ。」



そして……アルビオールの方へと歩いていった。










アルビオールに乗り込もうとしたその時!






“キィィィィィィ!!”






「う……うわっ!!!な……なんだっ!!」

ルークが頭を抱え、蹲る!

「!!!」

その声に驚いて後ろを振り返った。

「また……っ あたま……がっ……!!」



≪我が声に耳を傾けよ…ルーク……我が同位体の1人よ………漸く真にお前と話をする事ができる……。≫



「……アッシュ?いや……違う……この感じは……」


「ルーク!大丈夫!?いま……癒せないか試してみるわ!」

ティアが駆けつけ、譜術を!

「オレも!!ルーク!しっかりしろ!」

アルも同様にだ。




≪これは……ユリアの血縁…ぬ…?な…なんだ…ッ!!!!≫



「な……なんだっ!!!!」



“バチッィィツ!!!”



「うわあっ!!!」


アルは……弾き飛ばされた!



「アル!!」



ジェイドが、弾きとんだアルを手を伸ばし、掴んだ。



「な……何ッ!?アルっ!?」



ティアは、何が起きたのか………理解できなかった。

でも……アルが弾かれたように飛ばされたのはわかった。

直ぐにアルの方に意識を向けようとしようとしたが……出来なかった。

なぜなら……。






「な……なんだ?痛みが……引いた……。」

ルークから痛みが引き……そして、代わりに……。



『ルーク……我が同位体の1人……。』


ティアが……ルークの前に立っていた。


「ティア…!!いや……違う!」


ルークはティアのその違和感に気が付いていた。

そう……ティアの意識は既に……。




『私は……私はお前達によってローレライと呼ばれている。』




「!!」

「ろー……ローレライ?」



アルは、ジェイドに支えられながら立ち上がる。

「本当に……存在していたのか!」

ジェイドも驚いていた……。

確認されている……とは言っても……

実際に見ないと信じられない。

だが……実際に見れば驚くのは無理ないだろう。



『お前達に聞きたいことがある……が、今はこちらを優先させる。』



ティアの……いや、ローレライがそう言う。


『ルーク、お前は音素振動数は第七音素と同じ……私と全く同じ。私はお前……だから、お前に頼みたい。』

「お……オレに何を?」

ルークは……一体何を頼まれるのか検討が付かないから、足元さえおぼつかない状態だった。

『何か……とてつもないものが私の力を吸い上げている。破滅……このようなこと……2000年……無かった事だ。』


(……2000年?)


ジェイドは、この言葉に引っかかっていた。

ローレライの存在……それに気づけたのはユリア・ジュレのみだ。

だが、その記述に今回の様な事はなかった。

書かれていないだけなのかもしれないが……。






『それが地核を揺らしセフェロトを暴走させているのだ。……お前たちは地核の振動を止めたが……この私が閉じ込められている限りは……この惑星は。』


「な…!どう言う事?止めても……意味ないって事なのか!」

アルはその説明に驚き、そう聞いていた。

その言い方では……今止めても……

今人が出来うる手段を用いても……いずれは……

そんなアルの問に……返ってきた言葉。

それは想定外のことだった。










『……お前は、一体何者なのだ……?』










ティアが……こっちを見て。

いや……ローレライか。

「何……者……って。」

それは想定外の問で……返答に困る質問だった。



『……はるか遠い昔の事。………その不穏な気配。身に覚えが……あるのだ。歪で禍々しい。そして不穏な……【あの】……いや、違う。音素振動数……それが、』



ローレライの声が……変わった。

まるで……何かを恐れているように。


「……ローレライ!お前は……オレのことを知っているのか?」


アルは近づいた。

ローレライは一歩近づいたアルを見て……再び表情をかえる。

『……以前にも感じた。似ている……と。だが、よくよく観察して見ると違っていた。それだけの事だ。』

安心したような感じになっていた。

だが、アルにとってはそれは説明になっていないのだ。


「そんな風に言われてもわからない!何か知ってるなら!」

『……世には知らなくても良い事がある。語り伝えてはならない事がある。悪いが……その詳細は話せない。』

「そんなっ……!」


アルは、もどかしさを覚えた。

直ぐ傍に……自分について……わかる可能性があるんだから………。


「アルッ。」


ガイが、抑えてくれた。


「ガイ…?」

「あせんなって、似てるだけだって言ってるだろう?お前じゃないんだ。お前が歪で禍々しく不穏?なんだそりゃ、んな事思えないって。そんなのお前に全く似つかない言葉だろう?それに、あまり ティアに無理をさせるな。」

……その言葉を聞いて、落ち着きを取り戻した。



『………拒絶をしてしまいすまないと思っている。そう……ありえるはずも無いか……』




≪この者が……ユリアの血縁のものが……これほどまでに愛をしているのだから……。≫




そして……。

ティアを覆っていたローレライが……。

消え去った………。














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