小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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第二章 新たなる旅立ち

#12 マルクト軍艦タルタロス




























3週間後………




ここはマルクト軍の軍艦タルタロス。

「ん……… あ…… あれ?……ここは?」

見上げると……そこは知らない所の天井だった。

「は……はは…… オレこんなの多いな…… 目が覚めたらどこか……わかんないって言うの……」

苦笑しながら 上半身を起こした。

「とりあえず……生きてる……な。 妙な声が又聞えてきたけど…… でも、何だろうここ…… あれ…… 窓の外が動いてるし…… 乗り物の中……かな?」


あたりを見渡すと誰一人おらず…

そこは清潔感がある医療器具らしき器具が沢山ある部屋だった。


おそらく…… というか 100%医療室か何かだろう……



「状況が……あまり掴めないけど…… とりあえずは人を探そう…… 何とか体は動けるみたいだし。」

そう言い、立ち上がろうとすると、




“ガチャッ………”



ドアが開いた。


「「あ!!」」


そこには髪が緑色でちょっと中性的な顔立ちの男の子(?)と人形を背負った女の子がいた・・・

(あれ・・・ 見たことある・・・な・・)

って考えていると。



「おーーーきたーーーーー!!」



女の子の方が突然大声を上げた。



“キーーーーーン!!”



「うわぁ!!耳がぁぁぁ!!!」


横にいた男の子の方は笑顔で、耳を塞いでいた。

「ははは…… どうもすみません。 目が覚めてくれてよかったです。体は……大丈夫ですか?」

男の子が笑いながら話しかけてきた。

「あ……ははは…… 耳以外は……何とか……。」

苦笑しながら答える。

「ははは、そうですね。アニス!!突然そんな大声を上げちゃダメじゃないですか。」

「だーーってーーー やっと目が覚めてくれたんですもん!イオン様も気持ちわかるでしょ〜?」

どうやら2人は 女の子のほうがアニスで 男の子の方がイオンと言うらしい。

楽しそうに言い合いをしていた。

「あはは……お楽しみのところ申し訳ありませんが・・・ ここはいったい・・・ それにオレ・・・どうなったんですか?」

聞くとやっと返事が返ってきた。

「ああ・・・すみません・・・ 貴方はアクゼリュスで魔物を討伐した後、倒れてしまったんです。 とりあえず町では十分な医療を受けられないのでセントビナーまで貴方を運びました。といっても運んだのは僕じゃありませんが・・・」

苦笑しながらさらに続けた。

「とりあえず、命には別状はなかったのですが、意識が戻らない原因がつかめないらしく・・・ これ以上何も出来ないといわれましてね。 で、それならばタルタロスの医療器具で十分と言うわけで、ここで治療の方を続けていました。」

説明が終わり・・・・

えーーっと。

「・・・なんで船の上の医療室で?? そのまま病院の方が良かったのでは??」

患者を移動させながら治療するよりは大きな病院で安静の方がいいのは当たり前・・・常識だと思う・・・

この部屋は比較的静かで振動はないのだが・・・

乗り物の上なのはかなり不安・・・

まあもう起きたからいけど・・・



いいのか??



「あははは・・・ 僕もそういったんですけど・・・」


また苦笑していた。

「大佐があなたにどーしても話を聴きたいって言って聞かなくってさ! 町ではあらかた聞いたみたいだけどね。 タルタロスの設備は並じゃないから安心してよ。ってか無事だったしぃ!」

アニスがケロリンっっとしながら話す。

「あ・・・いやっ・・・もう・・・いいや・・・ それで。」

この子に何言っても多分ケロッっと回避されそうだったからとりあえず何も突っ込まないようにした。

間違いないのは命の恩人には変わりないし。

「ああ!!そうだ!アクゼリュスのみんな・・・」

「大丈夫です。」

最後まで言う前にイオンが話した。

「町ならば大丈夫です。魔物はあの後も現れましたが、マルクト軍の方たちが、撃退し以前の静かさに戻っているという報告もあったそうです。」

そう聞いて・・・とりあえずほっとした。

「じゃあ・・・ 皆大丈夫・・・なんだな・・・?」

「はい・・・ ただ・・・」

そこでイオンの顔が曇る。

「障気が・・・ 坑道より出てくる量が増えたらしく・・・ 完全に安全とは言い切れません。」

「え・・・そんな!じゃあ町の皆は??」

あわてて起き上がりイオンの肩を掴む。

「あー!ちょっと!!」

アニスが割って入ろうとするが、

「アニス!良いんです。 アクゼリュスはマルクト・キムラスカの両国の国境にありますが・・・現在・・・ マルクト帝国の領土となっています、しかし 町への街道が障気の影響で進むことが出来ないのです。それによりマルクト側から手は出せません。」

イオンが続ける。

「なので・・・これからキムラスカに行き、ピオニー陛下の和平新書を届けるのです。 これが出来れば、キムラスカ側へ救援を求める事も出来ます。」

一通りを説明してもらった。

両国が険悪な状況に有るのはサラとの勉強会の時、調べたばかりだった為、割と早く理解できた。

だが・・・

「なるほど・・・ しかし・・・ 両国の睨みあいがそう簡単に・・・終結するでしょうか・・・?」

不安の顔を隠せず・・・呟いた。

「大丈夫!だってイオン様がいるから!」

アニスが高らかに宣言!

「???」

そう言われても・・・と言う表情をすると。

「あっ・・・ アンタ!イオン様の事・・・知らないの!!」

こいつ・・・頭大丈夫か!!?って感じの表情で言われた。

「うう・・・ うん・・・ そう言えば君達の名前しか知らないし。」

そう言うとアニスがあきれたように話す、

「導師イオンの名前くらい知ってるでしょー!!」

アニスが突っかかるように言ってくるが・・・

「アニス!」

それはイオンにより阻止された。

「すみません・・・ アニスの非礼をお詫びします。町の人たちに聞きました。貴方は記憶が無いのでしょう? わたしの事を知らないのは当然なんですよアニス。」

イオンはアルとアニスを見ながら話した。

「あ・・・そーだったんだ。 ごめん・・・」

アニスは素直に謝った。

が・・・ アルから返ってきた言葉は意外な言葉だった。

「いえ・・・・ イ・・・オン・・・? ローレライ教団の・・・トップ 導師イオン!・・・ 貴方がそうだったのですか?」

「「え!」」

2人は驚いた。

記憶が無いと言っていたのに・・・

「もしかして・・・ 記憶が戻ってたのですか?」

イオンが尋ねた。

「いえ・・・ アクゼリュスに滞在してた時。勉強しましたから いろいろと、だから・・・完璧・・・とまではいきませんが、ある程度はわかります。さすがに容姿まで知らなかったので・・・」

苦笑しながら頭を掻く。

「へぇ・・・ 貴方は凄い人ですね・・・」

イオンが尊敬するような眼差しで見る。

「凄い・・・ですか?オレが」

「ええ・・・ 自分が誰かもわからないという、苦悩・・・孤独感は尋常じゃなかったと思います。 それでも 貴方は前を向き行動しているように感じます。それは並大抵の事じゃ出来ない事ですよ。」

イオンはそう続けた。

さすがにここまでストレートに言われたら照れる。

「いえ・・・ オレが目を覚ましたところが良かったからだと思いますがね。 あの町の人たちと一緒だったからこそ 頑張れたんだと思います。辛くなかったといえばうそになりますが、あの町で生活を共にして、オレは一人じゃないって思えたんです。」

少し照れながら・・・ 笑顔で話した。

アニスもイオンも感心しっぱなしといった感じだ。

記憶が無いという事はそれほど大変なのだろう。

当事者なのに実感が湧かないのは、孤独など感じない・・・ 満たされていた環境だったからと思いたい。



・・・・・・いや、そのはず・・・だな。


-13-
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