小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#24 六神将・鮮血のアッシュ


























タルタロス内で美しい旋律が響き渡る………。





「―――――――――――――――――――――― …♪♪♪」





その旋律の正体はティアの譜歌だった。

ティアの譜歌で艦橋付近にいた兵士は全て眠りにつき、無力化していった為比較的簡単に目的地へと到着していた。



「ティアさんすごいですの!!キレイですの!」

「そうだね。……綺麗な歌声だよね。」



アルは目を瞑り歌を聞き入っていた。

思ったことをそのまま伝えただけなのにティアは焦っていた。というか照れて?

「もう!2人とも何を言ってるの……っ!」

歌をちょっと中断しそう慌てて言った。

「いや・・・戦闘中も聞いていたけどやっぱり綺麗な声だって思ったから。」

「みゅうみゅう♪」

ミュウも同様だった。

ルークにうるせえ!って言われてたけど………。苦笑


……とりあえずティアは必死に照れ隠ししてました♪

















そして目的地へ……。

「さて、艦橋(ブリッジ)を取り戻します。ティアは私を手伝ってください。アルは後衛を・・・出入り口の確保をお願いします。」

そう言うと、ティアと共に中へ入ろうとする。

って………。

「俺は?」

ルーク忘れてるよ?

「ルークはアルと一緒にそこで見張りをお願いします!」

そう言い今度こそ中へ。

「んだよ…… 俺の剣術は見張りくらいにしか役にたたねーってことか? 頼るよ―な事言っといて」

ルークは不満だった用だ。

「まーまー 出入り口を確保するのも重要なことだしさ!」

いつもどおりアルがフォローを!

こんな感じですね〜 変わってないな・・・

「そーいや……お前… 俺と同じで記憶喪失なのに・・・あーいうこと見て・・・なんとも思わないの・・・か?」

最後の方の声が小さくなっていく・・・

(そうか・・・そうだよな、ルークは公爵の息子って言ってたし・・・俺はアクゼリュスの件があったから・・・)

「さっきの事・・・だね。」

ルークは返事をせずただ顔を背けた。

「俺は・・・俺の恩人の住んでいる町がモンスターに襲われた時にちょっとあってな・・・ 幸い死者は出てなかったけど・・・ 重傷者は何人も出てたから、それであまり動じなくなったのかもしれないかな? ・・・でも俺も人が人を刺すところなんて見たのは初めてだよ。ルーク。」

「ならなんで 平気な顔してんだよ!アルといいティアといい!!」

ルークは続けた。

「人を・・・刺したんだぞ・・・ 魔物じゃない・・・ 人なんだ・・・」

「・・・・ 彼らだって・・・好きで人を殺しているわけじゃないと思う・・・ そうしないと これからもっと人の命が失われるんだから・・・ 俺は目の前で見た。ただ・・・鉱山で仕事をしているだけの人たちを・・・蹂躙するかのように襲う魔物たちを・・・アレだって、人と魔物の戦争みたいなものだ。・・・戦争が起これば 人が人を殺す、もっと悪化すれば・・・ 戦士じゃない平和に暮らしていた街が戦場になるかもしれない・・・んだ。」

そう・・・それは国境付近の町 アクゼリュスでも起こりえる・・・寧ろ国境だからこそ その可能性は大だろう。

「俺は・・・そんなのは嫌なんだ・・・」

アルは俯いていた。

「・・・・・」

ルークもただ黙ってあるの話しを聞いていた。

そんな時・・・







『う………うぅ…………。』






声が聞えてきた。

消え入りそうな・・・呻き声が聞えてきた・・・





「!!向こうだ!」




アルがいち早く気付き、駆け出す。

「おい待てよ!!」

ルークも同様に走りだした。

少しはなれたところに・・・・1人の兵士が倒れていた、

兵装から見ると・・・この軍の兵士だろう。

全身に満遍なく裂傷、貫通・・・ 見ているだけで自分自身に激痛が走りそうな状態だった。

「ッッ!! だっ 大丈夫か!?」

僅かだが・・・息はある。

「しっかりしろ! ファースト・エイド。」

治癒の譜術を使用した。

この人の傷ははっきり言って重症を通り越して致命傷に近い・・・

なぜ生きていられるのかが不思議なほどに。

だから……より高度な治癒術を掛ける為の詠唱時間ですら惜しいのだ。










ルークはそんなアルを見ていて、

「お前・・・そんなことも出来るのか。」

と驚いていた。


「ああ、 攻撃の譜術よりは苦手なんだけど、無いよりはマシだしね。そうだ!ルークは入り口のところへ戻っててくれ。」 
 
「んあ?」

「この人・・・ 傷が酷い。ティアさんが戻ってきたら呼んでほしいんだ彼女の力もいるから!」

そう言うと再び怪我人の治療に当たった。

「お・・・おお!分かった。」

そう言うとルークは元の持ち場へと戻っていった。

駄々をこねなくて本当によかった……。

予断を許されない状態って事はルークもよく分かっていたようだ。


「しっかりしろ・・・死ぬんじゃないぞ!」

僅かだが・・・息をしている・・・



そして……。



「ぐっ……がぁ……ッ……」

意識が……戻ってきた。

「!! 大丈夫ですか!?」

意識を取り戻したことに安堵する……。

「うぐ・・・す すまない・・・」

痛々しい姿だったが、アルは意識が戻ったことに喜びをあらわにしていた。



「もうちょっとだからっ!がんばっt「うおおおお!!」っ!!!」



突然の怒号に驚いて振り返ると………。


ルークが……戦っていたのだった。



「そんな……。ティアの譜歌で眠っていたはずなのに!!」




拳に力が入る。

そして兵士を再び見る。

(………まだ予断を許されない状態だ、このままこの人を見殺しに何てできるわけが……。)

歯軋りをしていた……。

その時。



「おぬしは・・・ アル・・・だな? 俺に構うな・・・少年のところへ・・・行け!」



そんな時兵士から置いていけといわれた。

「馬鹿をいうな! こんな状態なんだぞ?たったあれだけの時間の譜術で快復なんてしない! 死んでしまうぞ!」

そう言うとその兵士はアルの腕を掴んだ。

どこに……こんな力があったのだろうか……?

「あの・・・少年は・・・ 任務を遂行する上での・・・最も重要な人物だ!! 失うわけには・・・いかない!! 俺は兵士だ・・・ 任務の遂行が第一・・・ そして覚悟なら既に出来ている! 行ってくれ!頼む!」

掴まれている腕から痛いほど感じてくる。

不甲斐無い自分に構わず行ってくれと。

そしてそれを無視すればそれこそこの兵士の覚悟に対する侮辱なのだろうと・・・




ならば・・・もはや、アルが取れる行動は1つしかなかった・・・




「・・・・・ッ! 直ぐに戻る!!頼むからそれまで持ちこたえてくれ!!」

祈るようにそう言う。

「・・・ああ、行ってくれ。」

仮面をかぶっていて分からなかったが、表情は笑っているように見えた。

そしてアルはルークの元へと急いだ。





















「死ねェェェェエエ!!!!」

神託の盾(オラクル)兵がルークを切り裂こうとした!

「あ・・・ 死・・・ あ!! く・・・くるなァ!!!」

ルークは無我夢中で剣を突き出す!

そして・・・





“ドスン…………”




闇雲に放った剣は……正確に……。

「が・・・はぁ・・・・・・」

兵士の腹部に突き刺さり・・・壊れた人形のように倒れ・・・動かなくなった。

「ひっ・・・・う・・・うわああああああああ!」

倒れ逝く兵士を見てルークは狂いそうになる・・・

「さ 刺した・・・・人を・・・ 俺が・・・俺が 殺し・・・」

その時!




“ヒュッ!!”




衝撃波のよなものがルークを襲う・・・





“ドガアアア!!”




その衝撃波はルークを吹き飛ばした!

「ぐあっ!!」

「ご主人様!!」

そして、その先を見ると・・・男が立っていた。剣を突き出して・・・

「人を殺すことが怖いなら剣なんて棄てちまいな!!この出来損ないが!!!」

そう吐き捨てた!

「ルーク!!!」

そこにアルも駆けつける!

「ああ!!誰だ!?テメェは!!」

その男は明らかに不快感をあらわにした。

「それはこっちのセリフだ!」

ルークの前まで行き、庇うように身構える。

その時!

「ルーク!アル!!」「どうしました!!」

2人が戻ってきた。

しかし、その声に一瞬だが気を緩めてしまい・・・

「隙ありだ!」





“ドガア!!!”





「くっ!!」

「うわあ!!」

ルークとティアが攻撃を受けてしまった。

アルは何とか攻撃をかわしていた。

「……来いッ!連激の焔! フレア・ボム!!」

拳大の大きさの炎を出し連続で放つ!




“ドガガガガガガッ!!”




男は弾道を確実に捕らえると…。

「ちっ!やるな・・・ お前!」

その炎を剣で切り落としアルを見なおした。

「早い・・・」

アルの詠唱は攻撃力の高いものほど詠唱時間がかかる、その為 現時点で使える術で最速の攻撃を使ったのだが、威力不足のせいか、相手の服を少し焦がした程度で終わってしまっていた。

その上・・

「う・・・これは・・・」「アッシュ様・・・」

眠りについていた兵士達が次々と目を覚ましていった。

そしてルーク、ティアも戦闘不能の上、敵の方で倒れている・・・

「最悪な状況だ・・・」

「アッシュ――― 六神将 鮮血のアッシュ!!」

ジェイドがそう叫ぶ。

(ジェイドが無事でよかったのだが・・・ この状況を打破できるか・・・?あの男・・・かなりの使い手だ・・・ ??だけどあの顔・・・ルークと・・・)

「さすがは死霊使い(ネクロマンサー)殿・・・しぶとくていらっしゃる・・・」

笑いながらジェイドの方を見ていた。

そこへ攻撃を入れようと集中していたその時、

「アッシュ!そのへんにしておけ! 閣下のご命令を忘れたか?」

もう1人・・・後ろから、いや頭上・・・上から現れた!

「リグレットか・・・?」

「く!!」

両腕に集中したその時!





“ドォン!! ガキイン!!”





「……妙な真似はやめておけ小僧。」

銃弾が頬を掠めるようにして地面に激突した。

わざとそう狙ったのだろう、・・・かなりの腕のようだ・・・

「ちっ 捕らえてそいつらを閉じ込めておけ!」

ジャマされたのに腹が立ったのか アッシュはそのまま命令し、後ろを向いた。

「報告します!導師イオンをタルタロス広報の森林地帯にて拘束しました!」

「アッシュ 私が行こう」

リグレットと呼ばれている女がそう言うと、

「あぁ・・・任せる。」

アッシュはそれだけ言い、離れていった。

そしてルーク・ティア・ジェイド・アルの4名は・・・拘束された。

そう・・・4名だけだった・・・

あの兵士は・・・息を引き取っていたらしい・・・・・・

連行される前に、あっちにいる兵士も頼むと頼み込んだのだが・・・

隠れられていても厄介だと判断した兵士が確認に行ったところ・・・

もう冷たくなっていたそうだ・・・


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