小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#25 作戦名 骸狩り





























【タルタロス・船室】






アルの表情は……。

「・・・・・」

虚ろ……だ。

………牢屋で暫く表情をくらめていた。


それを見ていたジェイドは。

「仕方ありませんよ。アルどうしようもないことはあります。」

……そう言う。

少し見ていられなかったようだ。

「そうだとしても・・・なかなか割り切れないものですね・・・ 人の死は・・・」

割り切れない……。

頭ではわかっていてもやはり……。

「・・・しかし 私の部下を看取ってくれたことには礼を言います。彼は最後まで任務を全うしたんですね。ありがとうございます。アル」

ジェイドはそう言って頭を下げた。

「・・・いや、大した事は・・・」


そう言ってもらえただけでも・・・少し心が軽くなっていた。

「そうだ・・・塞ぎ込んでられないよ。ティアさんとルークを手当てしないと・・・」

そう言うと、牢屋で寝かされている2人の方へ行き、治癒術を使う。

「・・・もうあなたが何をしても驚かないと決めていたのですが、少しまた驚きましたね、第七音素(セブンスフォニム)まで使いこなしますか・・・」

関心を通り越してあきれているような・・・

「まあ・・・得体の知れない力だけど・・・ 便利だからね、皆を治したりできるし。」

ティアの治癒をとりあえず終わらせる。

次はルークだ。

「それに・・・傷つける譜術だけじゃなく、誰かを救える力も持ってるってこと・・・それが何か嬉しくてね。 得体の知れないのが玉に瑕だけど・・・」

苦笑する。

「やれやれ・・・貴方のようなタイプの人には初めて会いましたよ。 お人よしで・・・その上戦える力があり・・・」

しみじみ答える・・・

「・・・気のせいかな?何かかるーく馬鹿にされているような気がするんだけど?」

「はっはっはー!気のせいですよ。」

うん。笑って誤魔化したな・・・

「はぁ・・・俺もまあ貴方みたいなタイプの人に初めて会いましたよ・・・ まあ数週間分の記憶しかないけど・・・」

互いに苦笑しあっていた。

そのうちに・・・

ティアが目を覚ました。

「ん・・・ ここは・・・」

「おはよう。タルタロスの船室らしいよ。」

そう言うと慌てて起きる。

「私どれだけ気絶したのかしら?」

「ほんの数十分かな?ねぇジェイド?」

「はい。 それくらいですね。」

ティアは不甲斐無さを謝罪してたけど・・・

あれ不意打ちだし・・・

「あの六神将って連中は明らかに周りの兵士達とは核が違う雰囲気というかオーラというか・・・ 大変な相手だってことは一目で分かったから仕方が無いと思うよ?」

「そうですね。少なくとも六神将3人確認できましたし、あの程度で済んで良かったと考えてもいいと思いますよ。」

ジェイドもそう言う。

「・・・でも これからは気をつけるわ。」

律儀な性格だね・・・ 苦笑

「そういえば・・・雰囲気で勝手に言っちゃったけど、六神将って何なのかな?」

ティアはちょっとガクッとしていた。

ジェイドはそんなティアを見て笑っている。

「そういえば・・・貴方は記憶喪失だったわね・・・ 全然そんな気配させないから忘れかけていたわ。」

そして苦笑する。

「たははは・・・」

ルークに手を当てながら苦笑する。

その間、一通りの説明を聞きました!

結構・・・っと言うよりかなりまずい相手みたいだね・・・

あの程度で本当に良かったよ。

はい・・・ ティアが目を覚めてからずっとルークの治癒に当たってるけど・・・

目を中々覚まさないんだよね・・・

傷は癒えているはずなんだけど.

「貴方も第七音素(セブンスフォニム)を使用できるのね・・・ あの戦闘といい やっぱり凄いわ。」

ルークを治療しているのに気付いたティアは改めてそう感じていたようだ。

「あ・・・あのー さっきもジェイドに言われたんだけど・・・ あんまり面向かってそう言うこと言わないで欲しいかな・・・?照れるから・・・・」

そう言って笑っていた。

「ふふふ・・・」

ティアは笑っていた。



ルークの夢 side

(・・・・ーク・・・ ルーク・・・)

声が聞える・・・

(・・・あぁ・・・いつもの夢 俺・・・どうしたんだっけ・・・? 何か凄く怖い思いをしたんだ・・・ 目覚めたくない・・・)

再び声が響いてくる・・・

(我が声に答えよ!ルーク!)

(嫌だ・・・このまま・・・)


side out

「ルーク!!」

ティアが心配そうにルークの顔を覗き込む。

ルークが目を・・・覚ました。

「良かったよ、うなされてたし、治癒かけても効果なさそうだったから。」

そこへアルの顔も割り込む。

「ココ・・・は?」

「タルタロスの船室ですよ。・・・と言うより牢屋・・・ですね。我々は神託の盾(オラクル)騎士団の大詠師派に捕まったんですよ。」

ルークは・・・暫く考え込んでいた・・・

一通りジェイドが説明したところで本題へと入った。

「さて、ルークも目覚めたとこですし、そろそろこんなところは脱出してイオン様を助けに行きますか」

さおうジェイドは告げた。

脱出方法があるのなら最初から言って欲しかったけどね・・・

派手に暴れてもいいと思うけど、この戦艦頑丈そうだし、何より一発で包囲されそうだから・・・

「この牢屋どうやって開けるんですか?それにイオン様の居場所も・・・」

ティアもアルと同じ感じだった。

「このタルタロスは私の戦艦(ふね)ですよ?ご心配なく。」

「というか・・・もうちょっと早くに言って欲しかったけどね・・・」

やれやれ・・・と 苦笑する。

「はっはっはー!まだ全員目覚めていなかったですからねぇ。」

そう言って笑っていた。まぁ いつもの通りに・・・ 苦笑

「先ほど彼らの会話を漏れ聞きましたがイオン様はタルタロスへ連れ戻されるようです。」

「そっか・・・いちいち歩いていくよりはこっちの方が遥かに効率がいいから・・・」

「ええ、そう言うことでしょう。ですからその時にイオン様を救出しましょう。」

ジェイドがそう言った途端!

考え込んでいたルークが急に叫んだ。

「ま・・・まてよ!!」

「どうしたの?ルーク?」

「そんなことしたらまた戦いになるぞ!?」

ルークが考えていた事はそれだ・・・

「・・・・・?それが?」

ティアは普通に返す。

「また人を殺しちまうかもしれないっつってんだよ!!」

そう・・・先ほどの戦いで奪ってしまった命の事・・・それが彼の心に深く傷ついたようだ。

「・・・それも仕方ないわ。殺らなきゃ殺られるんだもの。」

ティアは再び普通に返した。

「な・・・!?何言ってんだよ!?人の命をなんだと思って・・・・」

最後まで言う前に・・・

ティアとアルが近付いていた。ティアが言おう

「ルークの気持ちは俺は痛いほどわかる・・・つもりだ。ジェイドが刺した相手だって元は俺の譜術からなんだから・・・間接的にだけど。」

そう言う・・・ ルークも少し黙った。

「前に言った事・・・覚えているかな?前って言ってもちょっと前だけど。俺は・・・戦争が起こるなんて嫌なんだ。 街を・・・救えなくなる。でも それは人殺しを助長しているわけじゃない・・・ 話し合いで決着がつくのならそれが一番だ・・・ だけど、それぞれの信念を持って戦っている以上、それも無理なんだよな・・・ だから今を精一杯戦う、って決めたんだよ、俺は。戦える力を持ってるのに使わないなんて意味ないから。」

そう言いが・・・やっぱりルークは納得してないようだ。

「お・・・お前は・・・直接殺してないから・・・そんな事が言えるんだ!俺・・・俺は・・・」

やはり・・・殺してしまったことのショックは大きいようだ。

無理も無い事だろう・・・

アルも・・・どうなるか分からないと思っているから、

見かねたティアが一歩前へ出た。

「ルーク!今私たちが何もしなければ戦争が始まる そうしたら数え切れないくらいの人が死ぬ。それぐらいは分かるでしょう? そしてアルはそれが嫌だから・・・持てる力を使おうと前を向いている、そしてココは戦場 戦場に正義も悪も無い 生か死かそれだけよ。」

もう一歩近付く。

「普通に暮らしていても魔物や盗賊に襲われることもある。だから力の無い人々は傭兵を雇ったり身を寄せ合って辻馬車で移動する。戦う力を持っているなら子どもだって戦う事がある・・・そうしないと生きられないから。」

ルークは・・・まだ納得できない。

「し 仕方ねえだろ!?俺はずっと屋敷の中にいてガキの頃の記憶もねえんだ!だからそんなこと知らない!俺は好きでここに来たわけじゃない!!」

ティアは一瞬悲しそうな顔をする。

「ティアさん・・・ 仕方ないよ、俺・・・多分だけど、ルークみたいに こういう感覚になるのが普通じゃないんじゃないかなって思うんだ。」

ルークに何か更に言おうとしたティアを止めるように言う。

「え?」

「人を・・・手にかける・・・ 戦争・・・ 戦い・・・ 軍人ならともかく、普通の人なら・・・ そんなの恐れるし、したくない。頭では理解できるのに・・・割り切れている俺がおかしいんだよ。だからあまりルークをせめないでやってくれ。俺がその分戦うから。」

「「・・・・」」

ルークもティアも黙り込んだ・・・

「ふむ・・・それがいいですね、ティアと私、そしてアル3人で行けるでしょう。」

ジェイドはそう言った。

「そう・・・ね。でもアルだけに負担をかけるわけにはいかないわ。こんなことになった責任は私にあるし、必ず家まで送り届ける・・・って決めているから。 そのかわり足だけは引っ張らないで 戦う気が無いのなら貴方は足手まといになるから」

「・・・な た・・・戦わないとはいってない!人を 傷つけたくないだけだ・・・」

そう言うと・・・

「今は同じことよ 大人しく後ろに隠れていて」

「無理しちゃダメだ。」

とりあえず足手まといと言う発言は逆撫でするだけだと思うけど、間違いなくその方が安全だから。

「な・・・なるべく戦わないようにしようって言ってるだけだ!俺だって死にたくねぇし・・・・」

そう言うと・・・ティアは顔を背け。

「・・・私だって 好きで戦ってるわけじゃない・・・」

歯軋りをしながら答える。

「・・・」

その姿にルークは何も言えずにいた。

「・・・・・・で?結局戦うんですね?ルーク 戦力に数えますよ?」

「ルーク・・・・」

「おう!お・・・俺も!戦う!」

ルークはもう覚悟を決めたようだ。

「結構。現在このタルタロスには140名ほどの兵が乗船していますが 助けは期待できないと考えてください 今の我々に出来る事は1つ イオン様を奪還しタルタロス(ここ)から逃げる!」

そう言うと牢屋の入り口付近まで歩いていった。

「でもどうやって・・・・・?」

ルークはジェイドに聞く。

「非常事態は想定済みですよ」

そう言うと床の一部を蹴り上げ中から伝声管を取り出す。

「こう言う時の為の伝声管です。」

そう言うと・・・ジェイドは伝声管に向かって!

「|死霊使い(ネクロマンサー)の名によって命じる!作戦名「骸狩り」始動せよ!!」

そう言うと・・・戦艦が震えるかのような感覚に見舞われた。

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