小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#54 坑道の奥にて































「ここは・・・表より瘴気が濃くなってますね・・・」

坑道の奥に進むにつれ・・・

瘴気が濃くなっていくのがよくわかる・・・

前も見えずらいほどだ・・・

「なぁ・・・?俺たちは大丈夫なのか?瘴気ってやつが充満してるんだろ?」

ルークがそう聞く。

「長時間大量に吸い込まなければ大丈夫なはずです… もっとも・・・坑道の奥のほうは・・・酷いようですが・・・」

ジェイドが指を刺した所は・・・

坑道のちょっとした広間だった。


「!!」

アルは目を見開いた。

「そんな・・・」

イオンも唖然とする・・・

周りには…殆ど動けず倒れている人ばかりだった。

「やはり・・・ここも酷く充満しているようですね…アル・・・」

「わかってる・・・もう取り乱したりしないよ・・・ 今しなくちゃいけないことを優先する・・・」

アルは・・・ぐっと堪えて、そして、皆の方へ向かった・・・

「よっし… 皆をはやく助けようよ!」

「それが良いでしょう…ここの瘴気は特に濃い・・・ このままでは危険でしょう。」

そう言うと・・・

皆散開して行った。

唯・・・ジェイドには気になる所があった・・・

(おかしい・・・ここにも先遣隊がいない・・・)

そう・・・ヴァンと共に・・・先に来ているはずの先遣隊が1人もいないのだ・・・

なにかあったのか・・・?もしくはこの奥に・・・?

一瞬考えたが・・・今はそれどころではない・・・

ジェイドも・・・ 救援へ向かった。


「師匠(せんせい)は 何処にいるんだよ・・・」

ルークは・・・・やはり師匠を探しているようだ・・・

「ルーク!手を貸してくれ!」

そんなルークにガイは手を貸すように頼む。

が・・・

「あ! 何で俺が?病人の世話なんて親善大使自らがすることじゃないね!」

この言葉を、アルが聴いていたら……。

また、一悶着あったかもしれない……。

「お前・・・本気でそう思っているのか?」

ガイは、アル程まで怒ったりしなかったが……。

その言葉は低く……。

そしてルークの目を逸らさずに聞いていた。

「うっ・・・・・・」

ルークは・・・一瞬言葉を詰まらせるが・・・

そのまま立ち去った・・・

「ルーク・・・・・」

流石の・・・ガイも言葉が出ないようだ・・・





(一人一人助けたって・・・埒が明かねーてんの! 俺の超振動を使えば・・・瘴気を一発で消せるんだ!)



ルークが考えていたのはそのことだった。

以前にヴァンに言われていた事だ。

私がフォローをするからお前は超振動を使い・・・瘴気を消し、英雄となれ・・・と・・・

その言葉だけを信じていた。

だから・・・師匠(せんせい)に合えば・・・

皆を助け、尚且つ、皆自分のことを見直すはずだと、

言ってしまっては効果は半減してしまうだろう・・・

何も言わず… 結果だけを見せ付ければ…


そう考えていたのだ…


それが・・・吉と出るか・・・凶と出るかは・・・


わからないが・・・・


今のルークにはこの言葉しか信じていなかった・・・














ティア side




ティアは…

案内された譜石のある場所で…

譜石を調べていたのだが・・・

「これは・・・」

ティアはその譜石を軽く睨むと・・・

神託の盾(オラクル)騎士たちのほうへ戻る・・・


「いかがでしたか?」

その1人が聞く。

「違います。これは第七譜石なんかではありません。譜石ですらない・・・ まったくの偽物・・・」

そう言うと・・



“ビシィ!!!”



周りの騎士達が一斉に剣を構える!

「!!! どういうこと!?」

ティアも素早く、武器を構える!

「大人しく・・・ついてきていただけますか?」

「・・・・・」

ティアは相手の出方を伺っていると・・・



“ギュイイイイイイ・・・・・・・・・”



巨大な戦艦が・・・

近付いてきた。

「あれは・・・!タルタロス!!」

巨大な戦艦・・・・ タルタロスが近付いてきたのだ。






side out










アクゼリュスの坑道では・・・・

皆が、あわただしく行動をしていた・・・

1名を除いて・・・

「ご主人様!」

ミュウが呼ぶ!

「ああ?」

「ご主人様はお手伝いしないですの?」

「うるっせぇな!!どっかいきやがれ!!」

一括すると・・・

しゅん・・・・・としながら、ミュウは飛び去って行った・・・









鉱山で働いていた大多数の人数の人たちがこの場所に倒れている。

その1人1人・・・ 症状を見て回る・・・。

物資は・・・数が限られているし、

ナタリア、アルという治癒術士(ヒーラー)はいるが・・・

如何せん・・・人数が多すぎる・・・






「このままじゃ……皆……。」

アルは…不安でいっぱいになる。

「なにか……何かないのか?皆を…守る…助ける為に……。」

頭を・・・必死に駆け巡らせる・・・



初めて力を目覚めさせたのはここアクゼリュスだ。

サラを守ろうとした時。

そう、強く願った時・・・

力に目覚めた。

自分の力ではなく・・・別のものの力だが・・・




その時。声が聞こえてきて……。

その後、頭の中で、自分が出来ることが・・・湧き水のように沸いて出てきたのだ・・・

あの時は・・・ 助ける為に必死だったからかもしれない。

でも・・・

「皆を・・・助ける事が出来る・・・力・・・なにか・・・」



集中・・・集中・・・・・・・集中・・・・・・・・・・・・



すると・・・



1つの譜術が・・・浮んでくる・・・


治癒の・・・譜術・・・

例の声は・・・幻聴は・・・聞えてこないが。

その力は解析かる(わかる)。


「!!」


これなら・・・・・・皆を……!



「皆!」



救助している皆に向かって声をあげる・・・

「どうしたんですの?」

一番側にいたのはナタリアだった為、

治療しながら・・・

こちらを向いた。

他の者達も同様だ。

「瘴気を吸って・・・倒れてる人たちを俺の側まで連れてきてくれないか!? 頼む!」

アルはそう叫ぶ。

「!! なにか、あるのですね?わかりました。」

ジェイドはアルの表情を見て… そう返事をした。

その顔は… 希望が見えたかのような・・・・ そんな顔だったからだ。


「おう!俺もOKだ!」

ガイはそう言い、肩を貸しながら移動する。

「私は!この方を治療いたしましたら、すぐに向かいますわ!」

ナタリアも、同様だった。

今は目の前の苦しんでいる人に全力を注ぐだけだ。


「私のトクナガを使えばあっという間だよ!任せて!!」

アニスはトクナガを使い。

ひょいひょいと運び出してくれた。







「ありがとう! よっし・・・・・・」

ある程度・・・ 集まったら…

再び集中させる・・・・・・・


「範囲が・・・どれほどかわからないから・・・みんな・・・よく見てて・・・」

そう言うと・・・目を瞑った・・・



“パアアアアア……………………”



アルの体が…光っていく……。



「これは・・・ この光は第七音素(セブンスフォニム)です・・・ アルに……収束していきます…!」

イオンが驚いていた・・・

生身の体で・・・あれほどの・・・・



“ゴォォォォォ………………”



「ぐっ・・・・・」

アルの表情が・・・歪む。


「無茶です!そのような大量の第七音素(セブンスフォニム)を生身でなんて!!」

イオンが止めようとするが・・・

「大丈夫・・・・・・ 大丈夫だから・・・・・・・ させて・・・ イオン・・・・」

アルの目を見たら……。

助けたい。何に変えても…そう訴えてるみたいな……。

そんな彼の目を見たら

イオンはもう何もいえなかった・・・

それは、見ていた皆も同様だった。





「・・・・ ふぅ・・・・・・ 」

更に・・・輝く・・・・・

「再生・・・それを願うは我が真なる祈りなり・・・・ 光たちよ・・・ 形に宿し・・・ そして、この場へ具現せよ・・・・・」


アルの周辺が・・・光り輝く・・・



「レイズ・ソウル」



“パアアアアアアアア……………”



集まった第七音素が……倒れている人たちに優しく包み込んでいく……。




(どうか・・・・・皆を・・・助けてくれ・・・・・・)




後はそう願うだけ……だった。













癒しの…オーラ・・・音素が辺りを優しく包む・・・・・



「ん・・・・・」

「すぅ・・・すぅ・・・・」

「はぁ・・・・・・」

「あ・・・れ・・・?体が・・・・?」


すると……みるみるうちに周囲にいた人たち・・・の症状が落ち着いていく・・・。

見て分かるほどだ。

顔色もよく……。苦しんでいたはずなのに…健やかに眠りだす。

確実に快復していっているようだ。

広範囲治癒術………。

その効果範囲の半径は・・・ 約8〜10m程度か・・・・

今はこの距離が限界のようだったようだ。



「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・」



アルは・・・

肩で息をしていた。

そして…

「くっ……うっ……。」

膝をつく……。

「アル!!」

ジェイドとイオンが駆けつける・・・

「まだ・・・倒れちゃいけないよ・・・・ あ・・・ははは・・・・ 攻撃面ばかり 練習しないで・・・ こっちをしてたら良かったよ。肝心な時にオレはだめだ……。もっと…今こそ頑張らないといけないのに……。」

アルはにやけ顔を作りそう答えた・・・


彼の戦闘は基本は近接戦闘。

人数が少ないときは、治癒も使っていたが、ここまでパーティがしっかりすれば攻撃に専念できるからだ。

近頃戦ってばかりだけど、その事もある

そしてここまでの大規模なものは使わないし、これまで使えなかった。

なれない力を使って……思った以上に消耗していたようだ。

だから……アルは、体をムリヤリおこそうとしていた・・・


その時!





「アル!無茶はやめてください!」




【イオンが怒鳴った】



「ッ!!」

「イオン・・・・」

「イオン様・・・・」



ジェイドも・・・アルも・・・

その場にいた皆・・・驚いたようだ・・・

あのイオンが・・・怒鳴ったのだ・・・




「貴方が・・・ 街の人たちを助けたいという気持ちは痛いほどわかります・・・!伝わります!だって……これまでの貴方をずっと傍で見ていたんですから……。ですがっ! その貴方が倒れてしまったら・・・ どうするのですか!……そして、何より!それを……それを見てしまった街の人たちは・・・どう思うと思ってるんですか! 」



イオンが・・・怒鳴ったのは・・・最初だけ・・・

後は・・・言い聞かせるように・・・

手を握りながらそう言った。



「イオン・・・・・」


イオンは…そのままアルの目を見て……。

「貴方1人が無茶しなくても良いじゃありませんか・・・ 僕にも・・・手伝わせてください・・・皆で救いましょう。皆で…この街を…。いえ、貴方の故郷を助けましょう。」

イオンが・・・手を握る強さをあげる。

「そうだぜ?確かに、今のを見るとかなり俺らは楽できそうなんだけど……そのせいで、お前がぶっ倒れちまうんなら、話しは別だぜ?1人で無茶なんかさせねえよ。」

ガイも笑う・・・

これ以上負担をかけたくない・・・その気持ちは同じようだった。


「そうですね。ガイの活躍の場をちゃんと作って差し上げないと!」

「大佐もちゃんとしてくださいよ〜〜?」

ジェイドとアニスも・・・いつもどおり・・・

だが…ジェイドの目は。いつもより澄んでいるようだ。

イオンに賛同…そう言っているようだ。

勿論、アニスも……。


「そうですわ!私も、ヒーラーですもの!頼ってください!貴方1人だけ 辛い目にあわせてしまっては、お父上に合わせる顔がありませんもの!」

ナタリアもだった。


本当に…温かい。

仲間って……とても温かい。


「み……みんな………。」


凄く温かいから……涙が出そうになってしまう。

でも……。


「あ・・・ははは・・・ そうだった・・・ オレ1人じゃないんだったな・・・ ごめん・・・」


涙はお預けだ。

本当に……救えてから……。

皆と…抱き合ってから……。



「ゴメン?なんか言葉が違うくないか?」

「そーだよ!」



ガイとアニスが笑いながら言う。

「そう……だね。」

アルは、涙が出そうな目を必死にこらえて……。

「みんな……ありがとうっ……。」

アルは笑顔を作ってそう言った。



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