小説『Tales Of The Abyss 〜Another story〜 』
作者:じーく()

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#62 目が覚めたら



























??? side






--アル…………。--



そこは……何もない空間。

自分が立っているのかどうかもわからない…。

感覚がまるでないのだ…。

しかし…

声は…聞えた。

大切な…大切な人の…。

暫く……この空間を彷徨っていると……。

やがて、2つの影が……見えてきた。

それは……会いたくて……会いたくて……。

そして、救いたかった……愛しい人……。

大切な人たち…!



「ガーランドさん!レイさん!!無事だったんですか!!!」



そう、出会ったのは【アルの両親】だった。

それを見たアルは……すぐさま駆け出す!

追いかける!

……必死にアルは駆け出した。

2人を抱きしめようとして……。



だけど…




何故…?




進めど進めど…

追いつかない…

逆に2人から離れていくのだ……。

「ま…まって…待ってください… どこ…どこに…行くんですか!?」

叫びながら必死に追う。



―アル………オレ達の街………守ろうとしてくれてありがとな………。―

―あなたと一緒にいた期間は、とても短かったけど………とても楽しかったわ。―



ガーランドとレイは微笑みながらそう言う。

微笑を絶やさず……優しい笑顔で……。


「な………なんで?そんな事……を? やっと……やっとっ! 見つけれたのにっ! やっと会えたのにッ!」

涙が零れ落ちる………。

涙を拭いながら追いかける。

そして……。

――泣くな。―泣かないで………。―

2人がアルにそう言う。


「!」


その笑顔を見て……アルは立ち止まっていた。



―アル……… 罪を憎んで………人を憎むな………。―



ガーランドは、そう言っていた。



「え………?」


―アル………。 お前が俺たちのために、涙を流し、怒り、本当に嬉しかった…… だけどな。―

ガーランドはレイを見る。

そして、うなずくと……。

―………私たちはね……。貴方のあんな姿、もう見たくないの……。唯……思うのは残された人の…… 大切な人の無事、幸せ1つ。―

レイは、そう言った。

―怒りをぶつける……それは簡単だ……だが、人を許す勇気と言うのは……。 とても難しい。オレが逆の立場だったら絶対にできやしない。だけどな……。 お前なら出来る。俺たちの家族だからな………。優しいお前だったら……必ず……。―

そう言うと……ガーランドとレイの体が輝きだした。

それをアルが見たとき別れの時がきたと……、

本能で理解できた。




「が………がー………ランド………さ………レ……イ……さ……っ。」


声が旨く出ない………

そして、徐々に2人の体が光に包まれ消えていく………。



「ま………まっ………て。」



泣くな……。

そういわれて、我慢しているが……どうしてもっ………。

頬を伝う涙を……とめる事ができなかった。

そして、2人に手を伸ばすが……。

どうしても、届かない………。





―あ………そうだ、大切な事………つたえなきゃ………― そうだ………な―




ガーランドたちは、再びアルの方を見る。

だが、姿は………もう殆ど消えかけていた………。

笑ってる……それはなぜか、わかった。




――アル………を頼む………………。――






side out












ここはどこだろう………。

目を開ければ……それは………。

見知らぬ………天井?

そういえば前もあったかな………

気がついたら、別の場所に……って。

確か2回ほど………?


そして………さっきの夢は………

よく思い出せ………。


!!



「ッ………!」

アルは起き上がる!

が………。



“ガシッ…………。”


腕を押さえながら、うずくまってしまった。

「グッ………あ………ッ!」

何故なら、両の腕から激痛が走るからだ。

いや、激痛と言う言葉でさえ、かわいらしいものだ。

言葉で言い表す事が出来ない。



それは、まるで灼熱のマグマが、腕に取り付き………。



ゆっくりと腕を、時間をかけながら……溶かしていくような………。

そう言う感覚だ。

途方もない痛み……。




だけど、必死にアルは耐えていた。

腕を押さえながら………。

両方の腕が痛いが……… 比較的、マシなのは左の腕、そちらで、右を抑える。

右が左以上に怪我をしていた理由・・・恐らくは利き腕だからだろう。

遠慮なく振るった為か………。



「あ!アル!」



傍から声が聞こえた。

顔だけ……振り向くと、そこにはティアが……。

ティアが側にいてくれていたみたいだ………。

「あ………ティ………ア。おはよう………。」

とりあえず………朝のご挨拶を………。


「おはようじゃないわよ!馬鹿ッ!……心配を……かけて………。」


ティアは………“ギュッ………”っと 抱きついてきた。

ティアは顔を見せないようにしてたけど………。

きっと、泣いているんだろう………。

そんな感じがした。

「あ………その、ゴメン………なさい………。」

だからこそ、謝る。

心配をかけてごめんなさい………。と。

正直腕はまだ痛い………。

だけど、仲間に………ティアに心底心配かけた………

その事の方がよっぽど痛いから………。
























「そう……なんだ。オレ………5日も寝てたんだ………。」

起きてから驚く、驚愕の事実。

ティアの話によれば、ユリアシティの入り口付近で気を失って………

それから もうそんなに立っていたんだ………。

「意識が、戻らないから……… 皆心配してたのよ………。」

ティアの声が、まだ悲しそうな感じがした。

「ゴメンね………?心配かけてさ………?」

そう言ってティアに笑いかける。

もう大丈夫………っと言わんばかりに、

それは、無理をしている……とかではなく、本当だ。

腕の痛みはまだあるが……。

だが、先ほどほどではない。

何でだろう………?













そして………。


「………他の皆は?」


とりあえず今の状況を聞く。

ずっと眠っていたし、状況が……状況だからだ。

思い出すのは……正直つらい。

だけど……。

「約束……だから……」

アルはそう呟いた。

「アル……?」

ティアは、不思議そうにこっちをみていた。

「あ……うん。なんでもないよ?」

笑顔でそういった、ティアは、安心……してくれたようだ。

「皆、おじいさまの所よ………… あ………ルークは………。」

ルークの話題になったとき、ティアが顔を背けた。

「え………?ルークがどうかしたの?」

口調から凄く気になる………。

ひょっとして何かあったんじゃ?

ティアは、純粋に……【いつも通り】ルークを心配するアルを見て、

「………あなた………いえ、アル……本当に優しいのね………。 いえ………そんな一言だけじゃ表せれない………わね。」

ティアは アルの顔を見ながら………そう呟いた。

「え………?何で………?」

アルは不思議そうな顔をしてティアを見た。

「あんなことが……あったのに、………アルはルークが憎いって思わないの………?大切な故郷が………壊された原因は………。 なのに、どうして貴方は……アルは、どうしていつも通りなの………?いつも通りでいられるの………?」

ティアは真剣に聞いていた。

目を見ればよくわかる。

それに、オレの故郷を滅ぼした真の元凶はルークではなく………。

自分(ティア)の兄なのだ…

兄が、憎まれても仕方ない。

それだけのことをしたのだから。

でも………ティアの目を見ると…それだけではない。

討とうとしてけれど……きっと大好きだった兄……。

憎しみを向けられるのは………自分のことのように苦しい………。

でも………今のアルは………アルからはそんな気配が無い………。

目に映る憎しみの感情が………負の感情がない。

ヴァンに対しても………ルークに対しても………。

怒りを憎しみを殆ど見せてない、アルに真意を聞きたかった。

何で………そんな顔で、ルークの事を聞けるのかと………。






「………罪を憎んで、人を憎むな………………。」





アルはそんなティアを見て口を開く。


「え…?」


ティアは、背けていた顔をアルの方に向ける。




「最後に………ガーランドさんたちが、オレに言ってた。夢の中だったけどね………。憎むのは、罪を憎んで人は憎まないでって………。あ………はは、オレが怒ってる姿………もう見たくないって………ね。」




アルは………そう言う。



「そして………憎むより人を許す事の方がとても難しいってことも………。」



それに………



「オレなら出来るって 信じてくれているんだ………オレの両親………がね?」



その時の顔……少し悲しみがでていた。

夢の中のあの2人を思い出したのだろう。



「アル………………」



ティアが、驚きの顔から徐々に優しい顔へと変わってゆく………。


「………だけどさ まだやっぱり………気持ち………整理つけるのが難しいんだ………。」


そう言って、顔をゆがめていた。


「あなたなら アルなら………出来る………きっとそう言っていたのね………?」


ティアが優しく微笑む………。


「うん………そうだよ。 ………ふふ、難しいけど……期待にはこたえなくちゃ………。それが………ガーランドさん達に俺が出来る事だから………。」


そう言ってアルも笑う。

【あんな顔……見たくない。】

そう言っていた。

これ以上……心配を……かけるわけにはいかないんだ……。

アルは、そう決心し……心を強く保とうとした。

その時。



「………ふふ まだ、貴方にできる事はあるわよ………。」



ティアはそう言って腕を取る。

「え………?」



「あ………ごめんなさい………。突然触ったりして……… ひょっとして、痛かった………?」


ティアは 突然触った事を後悔し、離した。


だけど………アルは…………。


「不思議と………痛みはないよ。さっきまでのが嘘みたいにさ……? ティアが………治してくれたのかな………?ありがとうティア。」

アルは礼を言った。

ティアが支えてくれてる……そう思っただけで……。

不思議と心が落ち着くんだ。

あの時、普通に……ルークを心配していたのも……。

ひょっとしたら、ティアが傍にいてくれて……心が落ち着いていたからかもしれない。

だから……そのことも含めて……アルは礼を……。



「え………いや………そんな………//」



アルの言葉……それは凄く優しくて………。

ティアは顔を赤くさせていた。



「あ………そうだ、さっき言ってたけど……オレに出来る事って………?」



アルはティアにそう聞いたその時………。



“ガチャ………。”


扉が開く。


そして………。




「目が覚めたか………」




誰かが部屋に入ってきた。







-64-
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