#63 奇跡
部屋へ入ってきた者。
それは……。
「アッシュ……。」
アッシュだった。
そして、アルはアッシュを確認すると、
「アッシュも… ありがとう……。 故郷の為に色々してくれて。」
アルはアッシュに対しても礼を言った。
「………ふん。別にてめぇの為じゃねえ。 オレはアイツのどうしようもねえ計画を阻止したかっただけだ!」
アッシュは顔を背ける。
「はは………そっか………。」
そんなアッシュを見て微笑んでしまう。
素直な性格じゃないみたいだ。
「けっ……。てっきりしょぼくれてんのかと思えば……、どっかのルーク(レプリカ)と比べてしまってた、オレが馬鹿だったか。」
アッシュがそう言った………。
1つ…気になる言葉が………。
「レプリカ………?確かそれって……」」
気になったのはジェイドが言ってた模造品…レプリカと言う事。
一体何のことだ?っと聞くと………。
「アル、それは………」
ティアが言葉を濁しながら……説明してくれた。
ルークの正体について………。
ファブレ家のご子息なんかじゃない………。
ましてや、普通に生まれた人じゃない………。
アッシュのレプリカ………だって事。
「そんな………ルークが………?」
アルは愕然とする………。
7年前の誘拐の時に………。
ルークは生まれたんだと言う。
レプリカは、記憶など持たない。
生まれて直ぐは赤子のようだと言う。
何も知らない………それは、当然のことだったんだ。
言葉も当然扱えない。
自分の記憶が無ければ両親だってわからない。
「………オレ。ルークにひどい事言ってしまったんだ………。」
あの時だって………。
それに、あの時だって………
思い出しながら呟く。
「てめえはどこまで………。はぁ………」
アッシュは甘い野郎だ!って言いたかったが………。
途中で辞めた。
コイツの性格は変わらないだろうからだ。
そして、背を向ける。
「アッシュ………?」
背を向けたアッシュは………。
「隣の部屋へ来い。」
そう告げでていく。
「………?」
アルは、アッシュの意図が良く分からなかったのか………。
首をかしげる。
「アル。立てる?」
ティアが支えながらそう言う。
「え?あ………うん。大丈夫………だと思う。」
手に力を入れる。
そして…ゆっくりと立ち上がり…足に体重をかける。
まだまだ、痛みは残るものの………歩けないほどではない。
「…うん。大丈夫。」
そう言うと、ティアは微笑んだ。
「そう…良かった。」
「アッシュ…隣の部屋って言ってたけど、ここじゃ駄目なのかな?」
アルは首を再びかしげる。
「………アル。出来る事がある…ってさっき言ったよね…」
ティアは、そう言う。
「え…?うん。ティアにそういわれたよ?間違いなくさ。」
不思議そうにそう言った。
そして、次のティアの言葉に……心が震える事になる。
「あのアクゼリュスの崩落で…奇跡的に助かった人… 女のコがいるの。…今隣の部屋で。」
ティアは……アルの目を見つめながら、微笑みながらそう言う。
「えっ………!!!」
その…言葉。
ティアの言葉を聞き………。
心臓が跳ね上がる!
「た…助かった…?ほ…ほんとに…?」
アルは、半狂乱になりかねないほどに動揺していた。
アルは普段なら出来ないだろう程至近距離でティアの目を見た。
そんなアルの頭を撫で…………。
「…………こんな時に、悪質な冗談なんて、言うわけないでしょう?落ち着いて。」
そう言って…落ち着かせる。
「う…うん!!はやく…!会いに…!」
ティアは、アルに肩を貸しながら…隣の部屋へ…………。
隣の部屋で…
ベッドで眠っていたのは…。
「サ…………ッ」
目の前が…ぼやける…
ピントが…合わない…
目を拭っても…擦っても…
なぜなら…
涙が…枯れることが無く流れ続けているからだ…
そこで、眠っている少女は…
「サラ…………?」
………アルの家族だった。
「サラ!!!」
“ガタンッ………”
アルは、倒れこみながらも這って進む…………。
「アル……。」
ティアに、手伝ってもらいながら…………
ベッドの側まで、必死に………。
そして、サラの手を握る。
「サラ!無事…………だったんだな!?」
そう叫ぶが…
「………………………。」
反応は無かった…
唯、規則正しく…寝息が聞えてくるだけだった。
本当に…唯、眠っているだけのような………
「…………サラ?」
手を握り、呼びかけるが…
変わる事は無かった。
眠りの姫のままだった。
「…………駄目か。」
アッシュは少し、残念そうな顔をし…そして、背を向けた。
「アッシュ…?」
ティアは、そんなアッシュを見て不思議そうにしていた。
「そのコはずっと昏睡状態が続いている。ここの医者も原因はわからないそうだ。もしかしたら、てめえがきっかけで、起こしてやれるかと思ったんだが………な、どうやら、あてが外れたようだ。」
そう言って、部屋を出て行った。
「………………。」
アルは、じっと…サラの手を握り締めたままだ…
「アル…元気出して………。」
気休めにもならないことはわかる…
だが…そう言うしか…言葉が見つからなかったのだ。
「………大丈夫………だよ。」
アルは、ティアの方を見る…
まだ…目は赤くなっていた。
「サラ……生きてるんだ…。間違いなく… そうだよ… いつか…また…会えるんだから…その時…また、遊んであげれれば………一緒にね。」
そう言って…必死に笑顔を作る。
「………そうね。」
ティアは笑顔を見せる。
「暫く、側にいてあげて。きっと、寂しがってると思うから。」
ティアがそう言うと、
「うん………。勿論だよ………。」
アルは、頷く。
そしてティアは自分の部屋に戻った。
…アル用にイスや毛布を持ってくる為に。